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その4 気持ちの切替
しおりを挟む2年生に進級し、成績の優秀なセシリアは生徒会に入った。学業に打ち込み、週3回の生徒会活動を精力的にこなし、予定のない日は友人たちとカフェに行ったり買い物に出かける。
夏休みに入るころにはセシリアは笑顔を取り戻し、友人たちにも明るく婚約者の話をするようになった。
「クリスお兄様とは割り切った関係を築くことにしたの。あんな男、信用できないわ。大丈夫、私だって貴族なんだからそれくらい出来るわ」
「セシリア…。あなたがそうと決めたなら応援するわ。でも、何か手助けがいるときは遠慮なく言うのよ」
「うん、有難う。皆には感謝してる」
セシリアはとてもキレイな笑顔で話した。婚約者への思いが完全に吹っ切れ、以前のセシリアにあった少女のような反応は完全に失われていた。
クリスとも、気持ちを割り切ってからは以前のように接することが出来るようになっていた。あ・の・夜会の後からは、クリスに会うたびに鳥肌が立っていたが、今ではそのようなこともなく、貴族らしく笑顔で対応出来るようになった。
父親に婚約解消をお願いしてすぐの頃、クリスはどこか探るような視線をセシリアに向けていた。そして、以前よりも甘い言葉をかけ「本当に大好きだ、大切だよ」と何度も言う。
そんな言葉に何の意味もないし、クリスの言葉ほど薄っぺらいものはない。セシリアは「嬉しいですわ」と微笑みながら完全に聞き流していた。
「セシリアにとっては、もうどうでもいい話かもしれないけど、浮気者婚約者サン、以前よりは落ち着いたそうよ」
「ふふっ、本当にどうでもいい話ね!」
「セシリアが婚約解消したがっていたって、聞いたのかしら?」
「んー、父が『言っておく』とは話していたけれど、どうでもいいわね。女遊びした事実は消えないのだし、もう好きにしたらいいわ」
セシリアは明日の天気を話すように、軽い口調で話していた。
「も~、本当にどうでもいいのね」
「そうね。ミラだってどうでもいい他人が何してたって、いちいち気にしないでしょ?」
「他人ならね。でも、仮にも将来は結婚する相手なんだし…」
「それはもう、仕事みたいなものだと思うことにしたの」
「セシリア…」
セシリアの発言に、ミラはクリスへの怒りが収まらない。あんなに真っ直ぐ純粋に慕っていたセシリアの恋心を粉々に砕いて、セシリアを壊してしまったのだ。しかも、本人にはその自覚がない。到底、許せるものではなかった。
「なーに?もう、私が気にしてないんだからいいの。ミラ、ありがとう」
「結婚して、アイツを見限ったときは絶対連絡して!私があなたを守るわ」
「あはは。そうね。とりあえず男子を2人産めば自由よね!」
「セシリア…」
「あの人も、私一人で満足なんて出来ないんじゃないかしら?ま、義務さえ果たしてくれれば勝手にすればいいと思うの」
セシリアはとてもキレイな顔で笑った。その瞳には何の感情も見えてこない。3人の友人たちは心底セシリアを心配したが、どうすることもできない。
ただ、セシリアが困った時にいつでも手助けできるようにしておこうと心に決めていた。
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