日本最狂の妖刀で、誰も見た事がない異世界・骨董無双~狂気の娘を返品したいがもう遅い!!だから神が宿る骨董品達で、俺が世界を改変してやるッ!!

竹本蘭乃

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第八章:塔の管理者達と、新たな敵

331:向日葵は18歳独身の元気な娘です♪

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 ガクリと膝をつく流。そこへ悲恋から抜け出た美琴が、後ろから包むように抱きしめる。

「流様……。あの子は流様を嫌ってなんかいないよ。だから信じてあげて……ね?」
「何を……何を信じればいいんだ!! 俺を恐れて行っちまったんだぞ!! 見ろ! もうそこにいない!! もういないんだ!!」
「もぅ仕方ないなぁ……。大丈夫だよ、大丈夫だからあの子を信じてあげよう?」
「美琴!? おまえ何を……」

 そう言うと美琴は後ろから、流の左頬へと自分の頬を重ねる。そして……。

「人の闇が私達の存在のちから……だからこそ分かるんだよ。あの子はあなたを愛している。私があなたを愛するのと同じ様に深く、強く刻まれた、それは魂への恋の呪縛……」
「だけど、そうは言っても……俺の事をみんな恐れてしまうのかと思うと……な」
「はぁ~普段は心がお強いのに、こんな時は仕方ない殿方ですねぇ。たとえ異世界全部が敵になっても、私はあなた様の味方ですよ。だからそんな顔しないでくださいな」

 美琴の冷水より冷たい頬から伝わる、心の暖かさ。その言葉に思わず涙が溢れそうになる。

 分かっていたつもりだったが、親しい人物にまであのような態度をされたと思うと心底辛い。
 まるで心臓を突起のついた鈍器で、一撃で貫かれたと思えるような辛さがこみ上げる。
 妖人あやかしびとの力が、この世界で築き上げた全てを台無しにするのかと思うと、底の見えない崖の先端に立っている気分になった。

 そんな流の心を感じた美琴は、自分の過去を思い出す。幽霊という存在ながら、ほぼ人間と同様の行動が出来る故に、心が悲鳴をあげるように痛かった事を。
 それは人の道を捨てた者の苦悩……それが分かるからこそ、ゆっくりと思いを伝える。

「……私はあなたより、ず~っとおねえさんなんだゾ? だからあなたの心はよく分かるんだ……。もし心が潰れそうな時は、いつでも私を頼って、ね?」

 とても自愛に満ちた顔で、ぎゅっと頬を押し付ける美琴。その行動に流は嬉しく思い、つい――。

「そっか、おねえさんか……。数百歳のおねえさんって貴重だなぁ……」
「ちょ!? 年は言わないでよ流様ぁ!?」
「はは……ありがとうよ美琴……」

 顔を上げ視線をその先に向ける。何も言わずとも流のことを信頼し、こんな事で折れないと確信している顔ぶれがずらりと勢揃いしていた。

「まだまだ頼りのない大殿でござるが……なに、この三左衛門めがしっかりと漢にしてみせましょうぞ! ハッハッハ!!」
「ったく、そう笑い飛ばすなよ……。お前達のおかげで元気出たわ、よし行くぞ!!」

 その時大きな振動と共に天井が崩れだす。

「大殿、姫といちゃつく時間はここまでのようでございます。最早脱出は不可能にてございます。ちなみに私は忍者です」
「佐様ですな。才蔵めの言う通り、階段もふさがってしまいましたし、困り申したなぁ」

 美琴が「誰がいちゃついているんですか!?」と、顔を真っ赤にして叫んでいるが誰も聞いていなかった。
 
「マズイな……お前たちの力でどうにかならないのか?」
「残念ながら。我らの今の力では、軽い戦闘が関の山でございますな」
「あれで軽いのかよ? これが万事休すってやつかね……」

 激流の水路に飛び込もうにも、向こうも落下物が多く危険であったし、激流に飲み込まれたら助かるのも無理のような気がする。
 だがもうそれしか手が無いと思った時だった。足元まで水が迫りこれまでかと思った刹那、間の抜けた声が流達の耳に入る。

「お~? 水の気配が濃厚なこの場所へと来てみれば、なんぞ先のわっぱではないか? 異世界は力に満ち溢れて良い場所じゃの~」
「あ、あんたは……」
「流様、この亀さんは〝堅亀の守り〟の中にいた亀さんだよ?」
「おおお!! さっきは助けてくれてありがとうな! でも今またピンチでな……何かいい案はないかい?」

 直径三十センチほどの円形で深い緑色の甲羅を持つ亀は、白いひげを撫でながら「ふむ……」と二足で立ち上がり思案する。
 やがて「まぁそれも一興かのぅ」と言うと、流へ提案する。

「のぅ、わっぱよ。この水源の異常さが収まれば、この塔の崩壊も防げるし、この地下の崩壊も止められようて」
「それは分かってるんだが、今の俺達の力ではどうしもよう無いんだよ」
「そこよ、まさにな! で、どうじゃ。わしをこの塔……いや、この水源に住まわせなんだか? さすればこの崩壊、止めてみせようぞ」

 亀の爺様はそう言うと〝ふんすっ〟と鼻息を吐き出す。

「なっ!? それは本当か??」
「こんな時に嘘を言ってどうする? なに簡単なことじゃよ、この強大な霊力に守られいる土地の力を借り、わしの付喪神としての神力を使いここへ宿れば造作もない事じゃて」

 そう言うと亀の爺様は、貫禄タップリに笑う。それを見た陰陽師の娘が流へと進言する。

「あのぅ~、大殿様ぁ、面倒で言うのも面倒なんですけどね……はぁ~。面倒……」
「ちょ、ちょと向日葵ひまわりちゃん!? お願いだから寝ないで話して!!」
「んぁ……? あぁ、そうでした。ごめんなさい姫。つい面倒なものでつい……」
「だから寝ないでってば!!」
「やっぱりお前の家臣信者はおかしなのしかいないんだな……」
「ぅぅ……そ、それで何か言いたいことあるんでしょ? 時間がないよ、死んじゃうよ!?」
「姫様、もともと私達死んでるからいいんですよ。面倒だけど……」
「「「ソウデスネ」」」

 美琴と家臣団がそう納得すると、面倒そうに話し出す。

「姫のおかげで時間を取られましたが、この亀が言ってることは本当です。そして――」

 まるで自分のせいのように言われた美琴が怒るのを無視し、向日葵と呼ばれた年齢十八歳ほどの娘は、名前に相反する不健康そうな顔の美人だった。
 その向日葵は気だるそうに手印を数度切る。すると足元の地面が光だし、そこを中心に床や壁、天井にいたるまで輝き出す。

「……見ての通り、異常な力を持っています。はっきり申しますと、その亀が土地神になれるほどの霊力を秘めています」
「ハッハッハ、その娘の言うとおりよ。気ままな旅も良いと思ったのだが、ここの澄んだ霊力は格別に美味そうじゃからな。どうじゃな、わっぱよ。わしをここの守りに置かぬか?」

 流は考える。〆がいれば的確なアドバイスがもらえるだろうが、今はいない。それにここが崩壊すれば自分の命も危ういし、なにより北の給水が止まればトエトリーに大打撃になるのは間違いなかったのだから。
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