もふもふ子狐のせいで、廃棄(ゴミ)の烙印を押されたハズレ男。あまりにも酷い扱いをされたので、異世界召喚をした国を爽快バトルにて滅ぼします

竹本蘭乃

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転移の妨害編

006:国宝の崩壊

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『おお~この雰囲気……古廻の者か? そうか……あれから三百年がたちおったか』
「俺を知っている? 誰だあんたは」
『ふぉふぉふぉ。この世界に散らばれし、能力測定石の管理者の一つよ。何やらワシが寝ているうちに、勝手に使われていたようじゃがな。まぁよい。どれ、早速測ってしんぜよう。右手を中央へと当てるが良い』
「右手? 両手じゃなくていいのか。わかったぜ爺さん」

 戦極が触れた次の瞬間、虹色の光が収束し文字列に変わっていく。
 ただこれまでとは明らかに違うと、誰の目にも明らかだった。
 そのステータスの内容は数字や記号などではなく――。

 攻撃力:元・やばすぎ
 防御力:厚紙七十枚
 魔法力:チーン
 魔耐久:なむなむ
 はやさ:風になれ!
 幸運値:今、幸せかい?

『な、何じゃあこれは?? 知らぬぞワシはこんな表記は』
「オイ、爺さん三百年寝ていたからボケたのか? あんたが出したんだぞこれ。つーか、なんだよ〝チーン〟や〝なむなむ〟って」
『知らん、どうなっておるんじゃ……』
「な、何をしている!? お前がやったのか!?」

 水晶体の管理人と話していると、背後から怒声が飛ぶ。
 肩越しに見ると、バーゲンが結界師たちを押しのけこちらへと走ってくる。
 戦極は「やれやれ」とため息一つ。
 そのまま気にすること無く、管理人へと話す。

五月蝿うるさいのが来たな。悪いけど爺さん、なんとか数値に切り替えてくれないかな? 数字じゃないと面倒そうだからさ」
『数字か……よし、やってみようぞ。ただ古廻の者よ、ワシは本来の規定数しか測れない契約となっておる付喪神つくもがみじゃ。だからこの後、契約に基づき開放される』

 契約? あぁしめから教えてもらったな。付喪神の中には規定数しか使えないものがあると。
 この爺さんがそうなのか? っと、バーゲンがくる前に済ませないと面倒そうだ。

「了解だ。あとはこの世界で楽しんでくれよな」
『うむ。さて無理やり潜在能力を数字にしてみようか……これまで勝手に使われた事に業腹だが、その経験は役に立ちそうだわい』

 水晶体はさらに光を増す。
 そのまばゆさに一瞬目がくらむが、徐々に形成されていく文字列。
 やがて水晶体は漆黒に輝き出すと、白銀の色の文字列が浮かび上がる。
 その数字、確実に四桁以上・・・・だと全員が確認した次の瞬間それが消え、水晶体が真っ二つに割れた。

 さらに水晶体の表面に大きく文字が浮かび上がり、こう書かれていた。

 【規格外につき、測定する意味が無し】

『ハッハッハ! これは愉快愉快。まさかワシでは測りきれなんだとはのう』

 おいおい爺さん、笑い事じゃないぜ? 見ろよあのマヌケの大安売りみたいな顔を。

「こ……壊れたのか!? 国宝たるステータス測定器が……そんな、馬鹿な……」
「バーゲン! これは一体どういう事ぶふぅ!?」

 ほれみろ、俺の異世界生活オワコン状態じゃね? 
 そういえばさっき書いてあったな、〝幸運値:今、幸せかい?〟だったか。

「おかげさまで、世界最高の異世界ライフですがなにか?」
『そう悲観するでない古廻の者よ。分かっておるのだろう?』
「ああ、そりゃ裏打ちされた血筋・・・・・・・・ってのがあるからな」
『良き良き。さぁ異世界を楽しめ若人わこうどよ! さらばだ!!』
「あんたもいい旅をな」

 戦極がそう言うと、水晶体が粉々に砕け散る。
 その中から翡翠ひすい色の瞳の老婆が現れると、楽しげな表情を浮かべ消えていく。
 ありえない様子に、またもや唖然とする一同だったが、戦極はこの先を思うと胃痛を錯覚するほどだ。
 
「ごめんなさい。爺さんじゃなく、おばあさんだったか。さてと、当然こうなるよなぁ……」
「あ、あ、あ、あの男をひっ捕らえろ!!」
「「「ハッ!!」」」

 困ったねぇどうも、俺のせいなのこれ?
 まぁ、古廻ウチに関わりある骨董品だったし、そりゃそうだが。
 というよりだ。お前ら、それうちの骨董品だったんだぞ? ドロボウめ。

「わかった! わかったから暴力反対! 痛っう~。待てってばよ! ぼく、悪い異世界人じゃないよ? あっがあッ」

 痛てて……おい、お前の顔覚えたからな?
 蹴り倒すんじゃねぇぜ! たく、〆から貰った改造和装が台無しだっての。
 
「このガキ、なんて事をしてくれたんだ。あの水晶体は遺物の一つで、この国の国宝だったのだぞ!」
「それは心痛お察しいたしますよ、ミスターダーゲン」
「バーゲンだ!! この舐めたガキを今すぐ始末しろ!!」

 この際これを利用して脱出するしかないか。
 バーゲンが怒り狂い、そのすきをつき逃げ出すのが上策。
 ジジイ流〝撹乱かくらんの書〟のどっかに書いてあったな。
 まずは怒りで正常な判断を失わせるってやつか。

 丁度あそこに月明かりが見えるな。換気口か? よし、あそこから脱出するか。
 高校生たちは美琴を見つけてから救出すりゃいい。この様子なら殺される事はないだろうしな。

 って、お前何を――!?

「や、やめてください!!」
「「「桜!?」」」

 高校生たち三人の声がそろう。見れば大魔法師のクラスが判明した娘、田中桜が戦極におおいかぶさり衛兵の暴行をやめさせた。
 それに驚くクラスメイトだったが、その行動に意外な人物が声をあげる。

「うむ見事。仲間を思う心に余は感じ入ったぶふぅ。のうバーゲンよ、たしかに水晶体は国宝だったが、勇者たちのクラスと能力がわかった今、価値も低かろう?」
「し、しかし陛下。このれ者を生かしておくには……」
「よい! それにそちも見たろう、一瞬四桁に見えた数値を? もしやこの男、大きく化けるかもしれないでぶふぅ」
「確かにそうですが……ですが最後にこう書いてありましたぞ。〝規格外〟と。これは使い物にならない不良という事ではないでしょうか? それにあの意味不明の表記も役立たずの証拠かと」

 バーゲンの言葉にセルド王もうなり、戦極を見つめるのだった。
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