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転移の妨害編
007:ゴミムシ
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セルド王はチラリと戦極をかばう娘、桜を見ると手に持つ王笏をバーゲンへと向ける。
「よい。王命じゃ、この男はまだ使い道もあるぶふぅ。ほかの勇者たち同様に扱い、訓練をさせるぶふぅ」
その言葉でバーゲンは苦々しく思うも、静かに頭を垂れる。
「……承知いたしました。それではそのように致します」
「うむ、頼んだぞバーゲンよ。コホン、サクラと言ったか? なにか困ったことがあれば余に相談するがよいぶふぅ」
「ヒッ。あ、ありがとうございます?」
「うむ。では余は戻る。勇者たちよ、この国を頼んだぶふぅ。ハッハッハ」
これは予想外な展開だが、助かったか?
しかしこの子は勇気があるなぁ。桜と言ったか、震えちまってかわいそうに。
「桜ちゃん、助かったよ。ありがとうな」
「い、いえ。とっさだったものでつい……。あ、ごめんなさい重いでしょう、今どきますね」
そう言うと桜は恥ずかしそうに戦極から離れる。
それを苦々しくみるバーゲンは、声を荒らげて戦極へ命令口調で話す。
「おい役立たず。いいか、陛下の温情は無限ではないことを忘れるな? むしろすぐに無くなると思え。分かったら今すぐ勇者たちのところへと行け!」
「……了解ミスター。さ、行こうぜ桜ちゃん」
「あ、はい。その、桜でいいです」
「そう? なら俺の事は戦極って呼んでくれよな」
「ぁ、はい。その……戦極、さん?」
「なにを無駄話をしている! さっさと来い!!」
「っと、安売り野郎がお怒りだ。行こうぜ?」
それに桜は頷くと、この後の事を思うと顔を青くする。
戦極もそれを察したのか、小声で「大丈夫」と桜に伝えるのだった。
「そろったな。これよりキサマらの今後の生き方を伝える」
「ちょっと待てよオッサン! いいのか? 俺の親父は国会議員で、国の要職についている。そんな親父の息子をこんな目に合わせていいと――」
バーゲンは静かに。だが流石はデュロック王国の宰相らしい、胆力のある声で昇司の言葉を遮る。
「――思っとるよ? フンッ、甘えたガキめ。ここはショウジ、お前の世界ではないと言っておこう。キサマらがどこから来たかは知らん。が、元の世界とは別世界であり、キサマらの常識は一切通じない暴力と魔法の世界だ」
「ちょっとオジサン。そういう冗談シロオモ無いし、ヤバタニエンなんですけどぉ」
「んんん? マリエだけ言語理解の魔法が不完全だったか? まぁよい、言葉の意味は分からんが、今言った話は全て本当だ」
桜と剛流はゴクリとつばを飲み込むだけで、その話に反論はしない。
だがこの状況に全く緊張感のない漢、戦極は眠そうに口を開く。
「ふぁ……ッっと、失礼。それで俺たちは勇者として、どうすりゃいいかを教えていただけませんかね?」
「ほぉ? いい質問だ。これより貴様らは、このデュロック王国のために生きてもらおう。むろん拒否権はない」
「そんな横暴な!!」
バーゲンは叫ぶ昇司を見ながら、首の付け根を指差す。
「ショウジよ、お前の首元に何がある?」
その言葉で全員の視線が昇司の首に集まる。
見れば黒色の文字が描かれており、それが首を一周していた。
「な、なんだよお前ら。俺の首に何があるっていうんだよ……」
「やばたーん。昇司あんたさ、首にタトゥーとかやるじゃん」
「ハァ? なにを言ってるんだよ、真乃依の首にもあるぞ?」
昇司の言葉で全員がハッとする。
互いに見れば全員の首元に同じような、黒色の文字で首輪のように紋様が刻まれていた。
「これは……まさか僕にもあるのか?」
「あるわよ!! まさかアタシにもあるんじゃ……」
「あるよ真乃依ちゃん。じゃあ私もなのね……」
「うっそだろ!? なんなんだよこれはオッサン!!」
俺にもあるのか? 首輪ねぇ……だとしたら目的は奴隷化だろう。
だから勇者の驚異的なステータスを見ても、この態度ってワケかよ。
「何かを知りたいかね? なに簡単だ、それはこちらへ召喚するときに刻ませてもらった〝隷属の紋章〟と言う、つまらないものだよ。なに心配はしないでくれ、この国から逃げ出したり、王家に歯向かわない限りは心配はない」
だと思ったよ。これは逃げ出さなくて正解だったか……桜に感謝だな。
「そ、そんな……俺たちは一体どこへ来たんだ……」
「うっそじゃん……今夜メイク動画の配信予定だったのにどーすんのよ!! フザけんなオヤジ!!」
「そんな……帰れないの? そんな……」
「お、落ち着こうみんな。きっと帰れるから!!」
「仕切ってんじゃねーぞ、剛流のくせにようッ!!」
「え、ちょっとま――あぐあッ!?」
おっと、このまま戯れ合うと、話が進まないから止めておくか。
「ハイハイ、殴るのは待てそこまで――ッ!?」
痛ッ!? なんだ昇司のこの力とキレは? 素人の殴りなのに、なんだこれは?
俺がこんなヘナパンごときで、ここまでダメージ? どういう事だ。
「チッ、規格外の称号持ちが邪魔すんな!!」
「まぁそう言うなよ。ゴミムシも環境を改善のために、立派に生きてるんだぜ? ほれ、立てるか剛流?」
「ありがとう。えっと」
「戦極だ。一部ではゴミムシ認定されたようだがな」
「あはは、この状況で余裕なんですね」
それに戦極は肩をすくめて応えると同時に、剛流の手を引き立たせる。
それが気に食わない男が二名、戦極をにらみつけるのだった。
「よい。王命じゃ、この男はまだ使い道もあるぶふぅ。ほかの勇者たち同様に扱い、訓練をさせるぶふぅ」
その言葉でバーゲンは苦々しく思うも、静かに頭を垂れる。
「……承知いたしました。それではそのように致します」
「うむ、頼んだぞバーゲンよ。コホン、サクラと言ったか? なにか困ったことがあれば余に相談するがよいぶふぅ」
「ヒッ。あ、ありがとうございます?」
「うむ。では余は戻る。勇者たちよ、この国を頼んだぶふぅ。ハッハッハ」
これは予想外な展開だが、助かったか?
しかしこの子は勇気があるなぁ。桜と言ったか、震えちまってかわいそうに。
「桜ちゃん、助かったよ。ありがとうな」
「い、いえ。とっさだったものでつい……。あ、ごめんなさい重いでしょう、今どきますね」
そう言うと桜は恥ずかしそうに戦極から離れる。
それを苦々しくみるバーゲンは、声を荒らげて戦極へ命令口調で話す。
「おい役立たず。いいか、陛下の温情は無限ではないことを忘れるな? むしろすぐに無くなると思え。分かったら今すぐ勇者たちのところへと行け!」
「……了解ミスター。さ、行こうぜ桜ちゃん」
「あ、はい。その、桜でいいです」
「そう? なら俺の事は戦極って呼んでくれよな」
「ぁ、はい。その……戦極、さん?」
「なにを無駄話をしている! さっさと来い!!」
「っと、安売り野郎がお怒りだ。行こうぜ?」
それに桜は頷くと、この後の事を思うと顔を青くする。
戦極もそれを察したのか、小声で「大丈夫」と桜に伝えるのだった。
「そろったな。これよりキサマらの今後の生き方を伝える」
「ちょっと待てよオッサン! いいのか? 俺の親父は国会議員で、国の要職についている。そんな親父の息子をこんな目に合わせていいと――」
バーゲンは静かに。だが流石はデュロック王国の宰相らしい、胆力のある声で昇司の言葉を遮る。
「――思っとるよ? フンッ、甘えたガキめ。ここはショウジ、お前の世界ではないと言っておこう。キサマらがどこから来たかは知らん。が、元の世界とは別世界であり、キサマらの常識は一切通じない暴力と魔法の世界だ」
「ちょっとオジサン。そういう冗談シロオモ無いし、ヤバタニエンなんですけどぉ」
「んんん? マリエだけ言語理解の魔法が不完全だったか? まぁよい、言葉の意味は分からんが、今言った話は全て本当だ」
桜と剛流はゴクリとつばを飲み込むだけで、その話に反論はしない。
だがこの状況に全く緊張感のない漢、戦極は眠そうに口を開く。
「ふぁ……ッっと、失礼。それで俺たちは勇者として、どうすりゃいいかを教えていただけませんかね?」
「ほぉ? いい質問だ。これより貴様らは、このデュロック王国のために生きてもらおう。むろん拒否権はない」
「そんな横暴な!!」
バーゲンは叫ぶ昇司を見ながら、首の付け根を指差す。
「ショウジよ、お前の首元に何がある?」
その言葉で全員の視線が昇司の首に集まる。
見れば黒色の文字が描かれており、それが首を一周していた。
「な、なんだよお前ら。俺の首に何があるっていうんだよ……」
「やばたーん。昇司あんたさ、首にタトゥーとかやるじゃん」
「ハァ? なにを言ってるんだよ、真乃依の首にもあるぞ?」
昇司の言葉で全員がハッとする。
互いに見れば全員の首元に同じような、黒色の文字で首輪のように紋様が刻まれていた。
「これは……まさか僕にもあるのか?」
「あるわよ!! まさかアタシにもあるんじゃ……」
「あるよ真乃依ちゃん。じゃあ私もなのね……」
「うっそだろ!? なんなんだよこれはオッサン!!」
俺にもあるのか? 首輪ねぇ……だとしたら目的は奴隷化だろう。
だから勇者の驚異的なステータスを見ても、この態度ってワケかよ。
「何かを知りたいかね? なに簡単だ、それはこちらへ召喚するときに刻ませてもらった〝隷属の紋章〟と言う、つまらないものだよ。なに心配はしないでくれ、この国から逃げ出したり、王家に歯向かわない限りは心配はない」
だと思ったよ。これは逃げ出さなくて正解だったか……桜に感謝だな。
「そ、そんな……俺たちは一体どこへ来たんだ……」
「うっそじゃん……今夜メイク動画の配信予定だったのにどーすんのよ!! フザけんなオヤジ!!」
「そんな……帰れないの? そんな……」
「お、落ち着こうみんな。きっと帰れるから!!」
「仕切ってんじゃねーぞ、剛流のくせにようッ!!」
「え、ちょっとま――あぐあッ!?」
おっと、このまま戯れ合うと、話が進まないから止めておくか。
「ハイハイ、殴るのは待てそこまで――ッ!?」
痛ッ!? なんだ昇司のこの力とキレは? 素人の殴りなのに、なんだこれは?
俺がこんなヘナパンごときで、ここまでダメージ? どういう事だ。
「チッ、規格外の称号持ちが邪魔すんな!!」
「まぁそう言うなよ。ゴミムシも環境を改善のために、立派に生きてるんだぜ? ほれ、立てるか剛流?」
「ありがとう。えっと」
「戦極だ。一部ではゴミムシ認定されたようだがな」
「あはは、この状況で余裕なんですね」
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