もふもふ子狐のせいで、廃棄(ゴミ)の烙印を押されたハズレ男。あまりにも酷い扱いをされたので、異世界召喚をした国を爽快バトルにて滅ぼします

竹本蘭乃

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異世界の残酷な洗礼編

021:闖入者

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「くっせええええ!! オイ規格外クソヤロウ、お前にはお似合いの場所じゃねぇか? くくく、糞だらけで笑えるつーか、マジ・最高!」
「ちょっと昇司! なんでアタシがこんな所に来なきゃいけないのよ! うっげぇ~マジありえないんですけどぉ。つか、う〇ちまみれじゃん……汚ったねぇから死ねばいいのにぃ。明日からは絶対に来ないしぃ」
「せ、戦極さんおはようございます。あの、これは一体……」
「おはようございます戦極さん、そして――」

 桜が戦極がいる方と逆を向いて頭を下げる。
 明るい場所から来たから目が慣れていなかったのか、その存在に三人が気が付いた時には遅かった。
 
 おそろしい姿に、それに似つかわしくない美しい顔。
 その二つが薄暗い馬屋の影からジット見ていたのだから。

「「「うわああああああああ!?」」」
「ば、化け物!? て、てめぇえええこっち来たらぶっ殺すぞ!!」
「ちょ、ちょっとマジやばたにえん! 洒落になってないって」
「ひ、ひぅ!? さ、桜ちゃん僕の後ろに隠れて」
「あはは、大丈夫だよ。おはようございますフェリスさん」

 恐ろしい顔だったフェリスは、桜の一声でにこやかに微笑む。

「おはようサクラちゃん。そして……二人は召喚に失敗したようね。ハァ~、せめてこの国に迷惑だけはかけないでちょうだい、いいわね?」

 フェリスは昇司と真乃依に向けて鋭い眼光を放つ。
 それが恐ろしかったのか、二人は「ヒィッ」と息を呑むと一目散に逃げ出した。
 その様子をフェリスは、「やれやれだね」と疲れたように一言もらすと、桜へと話し始める。

「それで変態さんに何かようなの?」
「あぁそうでした。実は今日から修行をするんですが、そのお誘いに来ました」
「ぼ、僕たち戦極さんの役にたてればいいなと。あの二人は別の意味で来たようですが……」

 馬の糞を片付け終わった戦極は、額の汗をぬぐいつつ二人に向き合う。
 
「ふぅ~。マイホームの掃除も楽じゃないね。なるほど、そういう事ね。ありがとう二人とも。そういう意味では俺も願ったりだな」
「そうねぇ、でも魔力が使えないんでしょ? どうするのよ」

 魔力、か。正直どうしたらいいか俺にも分からん。
 だけど、日本にいたころに聞いたことがある。
 魔法の存在やその力の根幹……たしかマナとか言ってたな。
 そのマナを圧縮したのが魔力だと聞いたが。

「わからん。が、このままってのもダメだろう? とりあえず行ってみるさ」
「そっか……。聞いた話じゃ、この二人の師匠なら問題ないだろうけど、さっきの二人の師匠には気をつけてね?」
「了解。じゃあ行くか~。あぁ桜。何か食べるもの持っていない?」
「ふふ、そう言うと思って用意してきました。はいどうぞ」
「お、たすかる。んじゃ、行きながら食べようぜ。流石に手も洗いたいしな。うへぇ、なんか臭ぇ……」
「こ、この状況で食欲がある戦極さんが凄いです」

 そんな話をしながら三人は馬屋を後にする、フェリスは心配そうに戦極を見送るのであった。


 ◇◇◇


 ――修行場へと向かう道を三人は歩く。
 どうやら場所はそれぞれ違うらしく、昇司と真乃依まりえは戦極がいかにひどい場所で寝ているかを、わらうために来たようだった。

「嗤うためねぇ、暇な奴らだこと。あ、もう一つちょうだい、これ美味いねぇ」
「はいどうぞ、うふふ。戦極さんは全く応えていないようで安心しました」
「そう見えるだけで、内心は涙の海に沈んでいるんだぜ? お、こいつも美味い」
「そ、それで戦極さんはどの師匠から学びます? バーゲンさんからの通達では、全師匠を回らせるようにと書いてあったそうです」

 バーゲンの野郎、またロクでもないことを考えているんだろうが……とりあえずライオンマンライオスからにしておくか。
 聞きたいこともあるし、何より俺を選んだ理由も知りたい。

「んじゃ~ライオンマンの所へ行こうかな。頼むぜ剛流」
「は、はい。では行きましょう。じゃあ桜ちゃん、僕たちは昨日の闘技場へ行くね」
「うんわかった。私はジョルジュ先生のお部屋で学ぶことになっているから、また後でね。戦極さんも無理はだめですよ?」
「はいよ。ありがとう桜、感謝してるよ」
「い、いえそんな……」

 桜は名前のようにほほを桜色に染めると、嬉しそうにはにかむ。
 それを見た剛流は静かに口を開く。

「…………じゃあ行きましょう戦極さん」
「ん? あぁ、そうしようか」

 去る二人を見送る桜。その時何か違和感を感じたが、それが何かを分かることはなかった。
 やがて二人の影が小さくなると、よく手入れされた中庭を抜けて禁魔のジョルジュの元へと向かうのであった。

「あ、ライオス先生がいますね。待たせちゃったかな」
「張り切りすぎだろライオンマン。見ろよ、足元に転がる兵士たちを」

 兵士たちの訓練でもしていたのか? あんなのが上司だと部下も悲惨だなぁ。
 まぁ、うちのクソジジイより千倍マシだとは思うが。
 あ、こっちに気がついた……そんな嬉しそうな顔で微笑むなよ、暑苦しい。

「おおお! センゴクにタケル! 待っていたぞ! よーし、これにて朝の鍛錬たんれんは終了だ! 各自努力を怠るなよ!!」
「「「……ハッ!!」」」

 倒れていた兵士たちは勢いよく立ち上がると、そのまま闘技場の外へと駆け足で下りていく。
 それを見たライオスは満足げに頷くと、戦極たちを手招きするのだった。

「よく来たな勇者タケル! それにセンゴクよ! 今日から俺がお前たちの師となるからよろしく!!」
「よ、よろしくお願いします」
「頼むぜライオンマン。で、始める前に一つ聞きたい事があるんだが、いいだろうか?」
「まぁそうだろうな……オレ様がなぜお前を昨日の模擬戦で選んだのか、だろう?」

 やはり分かっていたか。となると、俺に魔力が無いのも知っていた感じか?
 話によると、コイツが俺を馬小屋送りにしたらしいし、命の恩人でもある、か。
 ライオンマンの思惑、見せてもらおうじゃないの。
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