もふもふ子狐のせいで、廃棄(ゴミ)の烙印を押されたハズレ男。あまりにも酷い扱いをされたので、異世界召喚をした国を爽快バトルにて滅ぼします

竹本蘭乃

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異世界の残酷な洗礼編

０３９：わん太郎の冒険～キンタの章

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「み、見た目だけで売ったらダメに決まっているんだワン！　お陰で異世界の塩をこれでもかと堪能したんだワン……」
「だよなぁ～。ハァ、このまま売れねぇと店たたむっきゃねぇか」

　しょんぼりとしたモフおじちゃんは、モフアメを一つ取るとわん太郎へと渡す。

「サービスだ。食べてくれよ」
「いらないんだワン！　まったくもぅ」
『でもわん太郎、このままじゃモフおじちゃんのお店ピンチじゃないかな？』
「ん～～そうだワンねぇ……。ぁ！　いいこと思ったワン！」
「な、なんでぇ藪やぶから棒に」

　わん太郎はモフおじちゃんから、色々と製造工程を聞く。
　どうやら見た目だけは美しい理由は、魔法で作っているからだという。
　さらに聞くと、色々と面白い事もわかり「この世界って凄いんだねぇ」と、美琴と関心する。　

「じゃあね、モフおじちゃん。ワレに一つ秘策があるんだワン！」
「お、おぅ。まさか狐坊に教わる日が来るとはなぁ……つか、なんだよ。モフおじちゃんって」
『あぁ、私わかっちゃったんだよ！　綿菓子を作るんでしょ？』
「あ～ぅ～。もぉぉぉぅ！　女幽霊はネタバレ禁止なんだワンよ」
『あはは……ごめんごめん。一回分のコツンは免除するから許してほしいんだよ？』
「ワレの未来はコツン確定なのが恐ろしいけどね、一回なくなったから嬉しいんだワン。わーいわーい」

　二人の話に付いてけない、モフおじちゃんは困惑気味に話をする。

「あのよぅ……女幽霊って……本当に幽霊なのか？」
『そうですよ。私は美琴、幽霊経験が豊富ですがなにか？』
「あとね、すっごい凶暴なんだワン」
『一回分、今消費したけど良かったのかな？　かな？』
「「ヒィィィ!?」」
『二人合わせて驚かれると、乙女心が傷つくんだよ』
「す、すまねぇ!?　頼むから夜枕元に立たないでくれよ！」
「す、すまねぇワン!?　頼むから夜あたまをコツンしないでくれだワン！」
『あぁもう！　話が進まないから早く本題に入るんだよ！』

　美琴さんがお怒りなので、わん太郎は綿菓子の作り方を説明する。
　塩ですら作れる魔法の力。それが砂糖で作るとなればさらに簡単なことであった。
　モフおじちゃんは「それは盲点だった!!」と驚き、おもむろにモフアメを手に取る。

「ほら、お礼に一つ包むぜ」
「お礼どころか嫌がらせだワンよ!!　ほれほれぇ、さっそくやってみるんだワン」

　わん太郎の怒りがモフおじちゃん直撃したことで、後頭部をかきながら砂糖を購入しに行く。
　どうやら近場で売っていたらしく、すぐに戻ってきた。

「これでいいか？」
「どれどれ……うわ～おいしぃんだワン！　すっごく濃密な甘さの中に、繊細な旨味が閉じ込められていて、お口に含んだ瞬間に鼻から甘い香りが抜けていくワン！」
「最近の狐坊は食通みてぇな事を言うんだな」
「フフン、ワレはエライんだワン！」

　驚くモフおじちゃんの肩に乗ったわん太郎は、作り方を指示する。
　基本は塩モフアメと同じ作り方だが、そこにわん太郎はひと工夫。
　やがて出来たのは、黄金色に輝く二つの魅惑の綿菓子であった。

「こ、こいつぁ……なんて色で輝きやがるッ!?　しかも妙にいい香りまでしやがるぜ。これって最後に混ぜた花の蜜のおかげか？」
『わぁ～すっごく綺麗なんだよ！　まるで夕焼けの黄金に輝く、綿雲みたいなんだよ』
「ふふん。そうだワン！　ワレのお鼻がヒクリとその蜜を捉えたワン。だから絶対に合うと確信していたワンよ～」

　そんな話をしながらモフおじちゃんは、待ちきれないとばかりに黄金の綿菓子をかじる。
　これまでとは違い、スッキリとした甘さの中に深い風味を感じて感動してしまう。

「これはすげぇ！　こんな菓子はどこにも売ってないぞ！　なぁ狐坊!?　……え？」

　モフおじちゃんは、わん太郎のいた方を見る。
　だがわん太郎の姿はどこにもなく、妙な声のする黒い棒も無くなっていた。

「俺は夢でも見ていたのか……」

　自分の頬をつねりながら、モフおじちゃんは辺りを見る。
　するともう一つあるはずの、黄金のモフアメが消えていたのを発見した。

「ふっ……そうか。やっぱり本当にいたんだな、ありがとうよ狐坊！　また来てくれよな!!」

　モフおじちゃんは大声で空へと叫ぶ。
　その様子を見た周囲の屋台の人は一瞬驚くが、街の喧騒ですぐに忘れ去られる。
　モフおじちゃんは、手に持った綿菓子を見つめて、あの可愛らしい子狐を思い出す。

「ワンタロウって言ったか？　そうか……よし、金色の菓子と、あいつの名前をとって……そうだ！　〝キンタロウアメ〟にしよう!!」

　モフおじちゃんは名案とばかりに膝を打つと、さっそく作り始める。
　後にロンデウムの街で有名になる菓子、キンタロウアメの誕生の瞬間であった。
　
　――なお、キタロウアメを切断しても、ワン太郎の顔は出てこないらしい。

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