もふもふ子狐のせいで、廃棄(ゴミ)の烙印を押されたハズレ男。あまりにも酷い扱いをされたので、異世界召喚をした国を爽快バトルにて滅ぼします

竹本蘭乃

文字の大きさ
61 / 105
ダンジョン~〝戦極〟覚醒編

060:かたこんべ

しおりを挟む
「しっしょ~、ここって初心者用のダンジョンじゃないん?」
「誰がそんな事をいいましたか? さっきの箱といい、ここは中級以上は確定でしょうね。本来あのトラップなら中層以降に出てくるはず。ですがこんな浅場に出現したのですからね。まったく先遣隊せんけんたいは何を見ていたのやら」

 ため息まじりに右手の平をうえにあげ、やれやれとつぶやく。
 そのまま道が右に曲がる手前で、エカテリーナは立ち止まり、左手で背後の勇者たちへ止まるように指示。

「一階の無駄に広い湖とは違い、この階層は程々の広さ。そしてシンプルですわ」

 シンプルねぇ……が、たしかにそのようだ。
 この角の向こう側から敵の気配を感じる。しかも濃密にだ。
 しかもこの気配は……死者か? つぅ事は。

「桜、剛流。ちょっとグロイし、臭いがキツイが気をしっかりと持てよ」
「せ、戦極さんそれってまさか……」
「ジョルジュ先生が言っていたやつじゃ!?」

 ズルズルと何かを引きずる音がする。
 やっぱり予想は当たりか。これだから異世界は嫌だねぇ、遠慮ってものがない。
 これはつまり――。
 
「――アンデッドだ」

 角から〝のそり〟と内蔵を引きずり現れた死体。
 その瞳はうつろであり、白くにごる。
 が、生者を見つけた次の瞬間、死んだ目におぼろげな光がやどり、生前の欲求である食欲を満たすために襲ってきた。

 よく見れば最近の死体のようであり、ここで散った者だと推測。
 ここで最近散った存在に、エカテリーナは心当たりがある。
 だから汚物を見る目はさらに冷たくなり、言葉を吐き捨てた。

「役に立たないばかりか、飼い主に襲いかかるとは、とんだ駄犬ですわ」

 右中指にはめた指輪を光らせると、襲いかかってきた冒険者の男の首を横一線に跳ね飛ばす。
 アンデッドだからか、たいして血も吹き出さず、そのまま背後へと倒れ動かなくなった。

 勇者たちは、あまりの出来事に誰も動けない。
 昇司ですら顔を硬直させ、軽口も出ないようだった。

 そんな誰しもが油断していたとき、天上の一部が崩れ落ち、上から上半身のみのアンデッドが降ってきた。
 その真下にいた真乃依は、天上の落石でよろめいた事で倒れてしまい、アンデッドを避けることができない。

 エカテリーナは十メートルは離れており、とても間に合わない。
 その汚い口が真乃依の左腕を噛みちぎる瞬間、鈍い黒銀の影がアンデッドの口元へと吸い込まれた。
 
「グボオオオオアア」
「キャアアア!? ってなに?」
「大丈夫か? ほら下がっていろ」
「ちょ、下等種!? なんであんたが……」

 口の中へと戦極の剣を突っ込むが、それでもまだ活動をやめないアンデッド。
 やはり首をハネ飛ばさないとだめなのかと思ったが、遠くからエカテリーナが叫ぶ。

「その程度の雑魚ならば、噛みつかれても勇者のステータスなら問題ありませんわ! 余計なお世話でしたね、下等種!」
「ああそうかよっと! セイッ!!」

 やはり通常の攻撃ではダメージがうすいな。
 うぉッ、ノドを貫通したか!? 霊体と違い、実体があるとグロイな。
 だが気力を込めてやっとダメージが通る、か。
 一応は死んだ? みたいだが油断はできねぇ。

「ふ、ふんッ。しっしょ~が言ってるとおり、アタシ平気だしぃ~余計なお世話だっつ~の」
「余計な世話でも、あんな汚いのに噛みつかれたらいやだろう? お肌が汚れちまうぜ?」
「それはそうだけどぉ……」

 ふぅ、納得はしてくれたか? 今はそれでいい。
 油断をして取り返しのつかない事になったら、それこそ大変だからな。

「ギャハハハ。ダセェぜ真乃依ちゃん? 規格外ゴミムシに救われるとかネーワ」
「うっせえぞ昇司! 大体アンタなんか下等種以下っしょ。青い顔して固まっていてさぁ~。ダッサ」
「お、俺が規格外ゴミムシ以下だっつーのかよ!?」
「ハァ? ソレが以外どう聞こえたつーの。鏡でも見ればぁ?」
「真乃依テメッ!!」 
じゃれるのはそこまでですわ。行きますわよ」
「くッ……コレも戦極、テメェが余計なことをしたせいだ……」

 おいおい、俺にブーメランが飛んできたぞ?
 投げた本人へ戻ってくれよホント。
 こまったキッズだが、こんなんでも守らないとな。

 しかし陰気な場所だ。
 壁から水がにじみ出ているし、妙にかびと死臭がただよう。
 地下っぽいのに湿度も高いからか、蒸し暑いのも最悪だ。
 
 生者の気配もしないし、ネズミのような小動物すらいない。
 さながら地下墓地カタコンベといったところか……。


 ☆*:゚♪+。.☆.+**:゚+。☆彡
  【あなた様に大感謝♪】
 ☆*:゚+。.☆.+*♪*:゚+。★彡

 ここまでお読みいただき、ありがとうございます!
 本当に、心底、更新の励みになりますので、よろしければ
 ファンタジー小説大賞の応援をお願いします。

(*ᴗˬᴗ)⁾⁾ペコリ
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

【コミカライズ決定】勇者学園の西園寺オスカー~実力を隠して勇者学園を満喫する俺、美人生徒会長に目をつけられたので最強ムーブをかましたい~

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】 【第5回一二三書房Web小説大賞コミカライズ賞】 ~ポルカコミックスでの漫画化(コミカライズ)決定!~  ゼルトル勇者学園に通う少年、西園寺オスカーはかなり変わっている。  学園で、教師をも上回るほどの実力を持っておきながらも、その実力を隠し、他の生徒と同様の、平均的な目立たない存在として振る舞うのだ。  何か実力を隠す特別な理由があるのか。  いや、彼はただ、「かっこよさそう」だから実力を隠す。  そんな中、隣の席の美少女セレナや、生徒会長のアリア、剣術教師であるレイヴンなどは、「西園寺オスカーは何かを隠している」というような疑念を抱き始めるのだった。  貴族出身の傲慢なクラスメイトに、彼と対峙することを選ぶ生徒会〈ガーディアンズ・オブ・ゼルトル〉、さらには魔王まで、西園寺オスカーの前に立ちはだかる。  オスカーはどうやって最強の力を手にしたのか。授業や試験ではどんなムーブをかますのか。彼の実力を知る者は現れるのか。    世界を揺るがす、最強中二病主人公の爆誕を見逃すな! ※小説家になろう、カクヨム、pixivにも投稿中。

【書籍化】パーティー追放から始まる収納無双!~姪っ子パーティといく最強ハーレム成り上がり~

くーねるでぶる(戒め)
ファンタジー
【24年11月5日発売】 その攻撃、収納する――――ッ!  【収納】のギフトを賜り、冒険者として活躍していたアベルは、ある日、一方的にパーティから追放されてしまう。  理由は、マジックバッグを手に入れたから。  マジックバッグの性能は、全てにおいてアベルの【収納】のギフトを上回っていたのだ。  これは、3度にも及ぶパーティ追放で、すっかり自信を見失った男の再生譚である。

転生したら領主の息子だったので快適な暮らしのために知識チートを実践しました

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
不摂生が祟ったのか浴槽で溺死したブラック企業務めの社畜は、ステップド騎士家の長男エルに転生する。 不便な異世界で生活環境を改善するためにエルは知恵を絞る。 14万文字執筆済み。2025年8月25日~9月30日まで毎日7:10、12:10の一日二回更新。

【状態異常無効】の俺、呪われた秘境に捨てられたけど、毒沼はただの温泉だし、呪いの果実は極上の美味でした

夏見ナイ
ファンタジー
支援術師ルインは【状態異常無効】という地味なスキルしか持たないことから、パーティを追放され、生きては帰れない『魔瘴の森』に捨てられてしまう。 しかし、彼にとってそこは楽園だった!致死性の毒沼は極上の温泉に、呪いの果実は栄養満点の美味に。唯一無二のスキルで死の土地を快適な拠点に変え、自由気ままなスローライフを満喫する。 やがて呪いで石化したエルフの少女を救い、もふもふの神獣を仲間に加え、彼の楽園はさらに賑やかになっていく。 一方、ルインを捨てた元パーティは崩壊寸前で……。 これは、追放された青年が、意図せず世界を救う拠点を作り上げてしまう、勘違い無自覚スローライフ・ファンタジー!

処理中です...