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ダンジョン~〝戦極〟覚醒編
060:かたこんべ
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「しっしょ~、ここって初心者用のダンジョンじゃないん?」
「誰がそんな事をいいましたか? さっきの箱といい、ここは中級以上は確定でしょうね。本来あのトラップなら中層以降に出てくるはず。ですがこんな浅場に出現したのですからね。まったく先遣隊は何を見ていたのやら」
ため息まじりに右手の平をうえにあげ、やれやれと呟く。
そのまま道が右に曲がる手前で、エカテリーナは立ち止まり、左手で背後の勇者たちへ止まるように指示。
「一階の無駄に広い湖とは違い、この階層は程々の広さ。そしてシンプルですわ」
シンプルねぇ……が、たしかにそのようだ。
この角の向こう側から敵の気配を感じる。しかも濃密にだ。
しかもこの気配は……死者か? つぅ事は。
「桜、剛流。ちょっとグロイし、臭いがキツイが気をしっかりと持てよ」
「せ、戦極さんそれってまさか……」
「ジョルジュ先生が言っていたやつじゃ!?」
ズルズルと何かを引きずる音がする。
やっぱり予想は当たりか。これだから異世界は嫌だねぇ、遠慮ってものがない。
これはつまり――。
「――アンデッドだ」
角から〝のそり〟と内蔵を引きずり現れた死体。
その瞳はうつろであり、白く濁る。
が、生者を見つけた次の瞬間、死んだ目におぼろげな光がやどり、生前の欲求である食欲を満たすために襲ってきた。
よく見れば最近の死体のようであり、ここで散った者だと推測。
ここで最近散った存在に、エカテリーナは心当たりがある。
だから汚物を見る目はさらに冷たくなり、言葉を吐き捨てた。
「役に立たないばかりか、飼い主に襲いかかるとは、とんだ駄犬ですわ」
右中指にはめた指輪を光らせると、襲いかかってきた冒険者の男の首を横一線に跳ね飛ばす。
アンデッドだからか、たいして血も吹き出さず、そのまま背後へと倒れ動かなくなった。
勇者たちは、あまりの出来事に誰も動けない。
昇司ですら顔を硬直させ、軽口も出ないようだった。
そんな誰しもが油断していたとき、天上の一部が崩れ落ち、上から上半身のみのアンデッドが降ってきた。
その真下にいた真乃依は、天上の落石でよろめいた事で倒れてしまい、アンデッドを避けることができない。
エカテリーナは十メートルは離れており、とても間に合わない。
その汚い口が真乃依の左腕を噛みちぎる瞬間、鈍い黒銀の影がアンデッドの口元へと吸い込まれた。
「グボオオオオアア」
「キャアアア!? ってなに?」
「大丈夫か? ほら下がっていろ」
「ちょ、下等種!? なんであんたが……」
口の中へと戦極の剣を突っ込むが、それでもまだ活動をやめないアンデッド。
やはり首をハネ飛ばさないとだめなのかと思ったが、遠くからエカテリーナが叫ぶ。
「その程度の雑魚ならば、噛みつかれても勇者のステータスなら問題ありませんわ! 余計なお世話でしたね、下等種!」
「ああそうかよっと! セイッ!!」
やはり通常の攻撃ではダメージがうすいな。
うぉッ、ノドを貫通したか!? 霊体と違い、実体があるとグロイな。
だが気力を込めてやっとダメージが通る、か。
一応は死んだ? みたいだが油断はできねぇ。
「ふ、ふんッ。しっしょ~が言ってるとおり、アタシ平気だしぃ~余計なお世話だっつ~の」
「余計な世話でも、あんな汚いのに噛みつかれたらいやだろう? お肌が汚れちまうぜ?」
「それはそうだけどぉ……」
ふぅ、納得はしてくれたか? 今はそれでいい。
油断をして取り返しのつかない事になったら、それこそ大変だからな。
「ギャハハハ。ダセェぜ真乃依ちゃん? 規格外に救われるとかネーワ」
「うっせえぞ昇司! 大体アンタなんか下等種以下っしょ。青い顔して固まっていてさぁ~。ダッサ」
「お、俺が規格外以下だっつーのかよ!?」
「ハァ? ソレが以外どう聞こえたつーの。鏡でも見ればぁ?」
「真乃依テメッ!!」
「戯れるのはそこまでですわ。行きますわよ」
「くッ……コレも戦極、テメェが余計なことをしたせいだ……」
おいおい、俺にブーメランが飛んできたぞ?
投げた本人へ戻ってくれよホント。
こまったキッズだが、こんなんでも守らないとな。
しかし陰気な場所だ。
壁から水がにじみ出ているし、妙にかびと死臭がただよう。
地下っぽいのに湿度も高いからか、蒸し暑いのも最悪だ。
生者の気配もしないし、ネズミのような小動物すらいない。
さながら地下墓地といったところか……。
☆*:゚♪+。.☆.+**:゚+。☆彡
【あなた様に大感謝♪】
☆*:゚+。.☆.+*♪*:゚+。★彡
ここまでお読みいただき、ありがとうございます!
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「誰がそんな事をいいましたか? さっきの箱といい、ここは中級以上は確定でしょうね。本来あのトラップなら中層以降に出てくるはず。ですがこんな浅場に出現したのですからね。まったく先遣隊は何を見ていたのやら」
ため息まじりに右手の平をうえにあげ、やれやれと呟く。
そのまま道が右に曲がる手前で、エカテリーナは立ち止まり、左手で背後の勇者たちへ止まるように指示。
「一階の無駄に広い湖とは違い、この階層は程々の広さ。そしてシンプルですわ」
シンプルねぇ……が、たしかにそのようだ。
この角の向こう側から敵の気配を感じる。しかも濃密にだ。
しかもこの気配は……死者か? つぅ事は。
「桜、剛流。ちょっとグロイし、臭いがキツイが気をしっかりと持てよ」
「せ、戦極さんそれってまさか……」
「ジョルジュ先生が言っていたやつじゃ!?」
ズルズルと何かを引きずる音がする。
やっぱり予想は当たりか。これだから異世界は嫌だねぇ、遠慮ってものがない。
これはつまり――。
「――アンデッドだ」
角から〝のそり〟と内蔵を引きずり現れた死体。
その瞳はうつろであり、白く濁る。
が、生者を見つけた次の瞬間、死んだ目におぼろげな光がやどり、生前の欲求である食欲を満たすために襲ってきた。
よく見れば最近の死体のようであり、ここで散った者だと推測。
ここで最近散った存在に、エカテリーナは心当たりがある。
だから汚物を見る目はさらに冷たくなり、言葉を吐き捨てた。
「役に立たないばかりか、飼い主に襲いかかるとは、とんだ駄犬ですわ」
右中指にはめた指輪を光らせると、襲いかかってきた冒険者の男の首を横一線に跳ね飛ばす。
アンデッドだからか、たいして血も吹き出さず、そのまま背後へと倒れ動かなくなった。
勇者たちは、あまりの出来事に誰も動けない。
昇司ですら顔を硬直させ、軽口も出ないようだった。
そんな誰しもが油断していたとき、天上の一部が崩れ落ち、上から上半身のみのアンデッドが降ってきた。
その真下にいた真乃依は、天上の落石でよろめいた事で倒れてしまい、アンデッドを避けることができない。
エカテリーナは十メートルは離れており、とても間に合わない。
その汚い口が真乃依の左腕を噛みちぎる瞬間、鈍い黒銀の影がアンデッドの口元へと吸い込まれた。
「グボオオオオアア」
「キャアアア!? ってなに?」
「大丈夫か? ほら下がっていろ」
「ちょ、下等種!? なんであんたが……」
口の中へと戦極の剣を突っ込むが、それでもまだ活動をやめないアンデッド。
やはり首をハネ飛ばさないとだめなのかと思ったが、遠くからエカテリーナが叫ぶ。
「その程度の雑魚ならば、噛みつかれても勇者のステータスなら問題ありませんわ! 余計なお世話でしたね、下等種!」
「ああそうかよっと! セイッ!!」
やはり通常の攻撃ではダメージがうすいな。
うぉッ、ノドを貫通したか!? 霊体と違い、実体があるとグロイな。
だが気力を込めてやっとダメージが通る、か。
一応は死んだ? みたいだが油断はできねぇ。
「ふ、ふんッ。しっしょ~が言ってるとおり、アタシ平気だしぃ~余計なお世話だっつ~の」
「余計な世話でも、あんな汚いのに噛みつかれたらいやだろう? お肌が汚れちまうぜ?」
「それはそうだけどぉ……」
ふぅ、納得はしてくれたか? 今はそれでいい。
油断をして取り返しのつかない事になったら、それこそ大変だからな。
「ギャハハハ。ダセェぜ真乃依ちゃん? 規格外に救われるとかネーワ」
「うっせえぞ昇司! 大体アンタなんか下等種以下っしょ。青い顔して固まっていてさぁ~。ダッサ」
「お、俺が規格外以下だっつーのかよ!?」
「ハァ? ソレが以外どう聞こえたつーの。鏡でも見ればぁ?」
「真乃依テメッ!!」
「戯れるのはそこまでですわ。行きますわよ」
「くッ……コレも戦極、テメェが余計なことをしたせいだ……」
おいおい、俺にブーメランが飛んできたぞ?
投げた本人へ戻ってくれよホント。
こまったキッズだが、こんなんでも守らないとな。
しかし陰気な場所だ。
壁から水がにじみ出ているし、妙にかびと死臭がただよう。
地下っぽいのに湿度も高いからか、蒸し暑いのも最悪だ。
生者の気配もしないし、ネズミのような小動物すらいない。
さながら地下墓地といったところか……。
☆*:゚♪+。.☆.+**:゚+。☆彡
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