もふもふ子狐のせいで、廃棄(ゴミ)の烙印を押されたハズレ男。あまりにも酷い扱いをされたので、異世界召喚をした国を爽快バトルにて滅ぼします

竹本蘭乃

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ダンジョン~〝戦極〟覚醒編

061:戦極の片鱗

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「……聞いていたのとは多少ちがいますわね」

 エカテリーナがつぶやきながら見る先。
 そこには墓地が広がっていた。しかもなぜか夜空まで見え、現在いる地下通路とはまるで違う場所だ。
 
 人の高さほどもある墓石の影から、ちらほらとうごめく影がみえる。
 どうやらここもアンデッドが徘徊しているようだ。

「予定が狂いましたわ。これより二つに分かれて行動しますわ。わたくし、マリエ、ショウジと。あとは残りで組みなさい」
「そ、そんな僕たちだけですか!?」
「そうですわ。この程度なら、これまで学んだことを実行すれば勝てますわ」
「……わかりました。私たちは別に行動します」
「よき覚悟ですわサクラ。聞き分けのいい子は好きですわ」
「了解。で、俺たちはどうすりゃいいんだ、しっしょ~?」

 戦極の物言いが気に食わないのか、「チッ」と吐き捨て説明をするエカテリーナ。

「階段を見つけて報告なさい。時間は今から二時間後、ここに戻って来なさい」
「はいよ~。んじゃ行こうぜ?」
「は、はい」
「わかりました戦極さん。私に出来ることがあれば言ってくださいね」
「俺は二人のサポートだからな、おまえたちが困らないようにはするさ」

 去っていく三人……いや、一人を苦々しく見つめた後、エカテリーナは三人とは逆の方向へと歩き出す。
 そこへ真乃依が小走りによってくると、告げ口をするように話す。

「しっしょ~。いいのぉ? あんな事言わせてさぁ? あいつ、アタシのこと馬鹿にしすぎだしぃ」
「いいんじゃなくて? どうせ無事に地上には出れませんし」

 エカテリーナの言葉に、思わず足をとめる真乃依。
 その言葉の意味が分からずも、なんとなく不穏な空気を感じてニヤリと口角をあげる。
 
流石さすしっしょ~! 楽しくなりすぎぃ」
「ち、下品な女だぜ。まぁ同意だがな」

 三人は怪しく揺らめく魔具の明かり中、暗い墓地の中を進む。
 エカテリーナが切り刻む、アンデッドの断末魔を聞きながら……。


 ◇◇◇


「せ、戦極さん。僕の後ろへ」
「大丈夫だよ、今のところは――なっとッ!!」

 戦極と桜。そして剛流の三人は墓地を進む。
 ゾンビ型のアンデッドが、時たま現れて先頭の戦極を襲うが、苦もなくそれを駆逐する。
 それを見た桜が、どうして以前と違って、ここまで戦えるのかを不思議そうに戦極へとたずねた。

「あぁそれは気の力ってやつだよ。胡散臭うさんくさいだろうが、マジであるんだって気ってのはな」
「気ですか……それは魔力と同じものなんですか?」
「それとは違うな。魔力ってのは、体の中から湧いてくるんだろう?」
「ええそうです。たしかに消費しますが、時間をかければまた元に戻る感じですね」
「だろう? それに引き換え、気力ってやつは体の中で練らないと使えないのさ。だから燃費が凄く悪い」

 剛流は戦極が大木の下で、九日間静かに過ごしていたことを思い出す。

「だ、だから九日もの間、大木の下で気を練っていたんですね?」
「剛流もわかるようになったじゃん。結構大変なんだぜ、アレ?」
「結構ですんじゃうのが凄いですよ。私なんか一日すらムリかも」
「そこはなぁ……昔からやらされていたからな……」
「「戦極さん!?」」

 また遠い目で、右目より涙をポロリと落とす戦極に二人は驚く。
 が、そんな状況でゾンビが襲いかかってきても、適切に駆逐する戦極に二人は目を見開く。
 その剣さばき、足の運び、上半身の体捌きと、どれを見ても一般人のソレではなかったのだから。

「す、すごい……。僕の動きとはまるで違う」
「うん。私は魔法しか教えてもらっていないけど、戦士の戦い方は教えてもらったよ。だからこそわかるんだ。戦極さんは違うって」

 今も前方より三体のゾンビが襲ってきているが、ほぼ動かず柳のように体をしならせ、攻撃をかわしてゾンビの腕を斬り飛ばす。

 さらに左から襲ってくるゾンビへ蹴りを放ち、倒れたと同時に右のゾンビの首をハネる。
 首をハネ飛ばされたゾンビの体は、混乱したのか中央のゾンビへと掴みかかり、動きが鈍ったところで脳天へと剣を突き刺す。

 それで二体が背後へと倒れたゾンビへと、同時に覆いかぶさることで身動きがとれなくなったのを確認し、戦極は剣を高速で倒れたゾンビへと突き刺すのだった。

「ま、こんなところか。ん? どうした二人とも、そんな顔をして」

 あまりの動きと技の的確さに、二人はますます驚くのだった。
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