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ダンジョン~〝戦極〟覚醒編
068:赤きともしび
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突然自慢の剣が動かなくなったことで、昇司は焦る。
見ればアバラ骨の隙間に剣が入り込み、それが剣の動きを止めたようだ。
剣の達人は無論、練度がある程度ある使い手ならば、こんな事になっても対処は可能だ。
しかしこの使い手はド素人に毛が生えた程度。
さらに訓練などマトモにしているはずもなく、ステータスだけに頼ったどうしようもない存在、それが昇司だった。
だからステータスが高かろうが、おかしな入り方で骨に挟まれば、剣を引き抜く事も難しかった。
無論時間をかければ引き抜くことは可能だが、今はその時間がない。
気がつけば昇司のすぐ側までゾンビが迫り、右腕に噛みつこうとしていた。
それに怖気づいた昇司は、剣を捨てて走って逃げ帰る。
「ヒィィィ!? な、なんだあの死体! 俺の剣を巻き取っていかれたッ」
「違うよ昇司くん。ただあなたの剣の腕が酷いだけだよ。ちゃんとヴェネーノさんに、教えてもらわなかったの?」
「ま、まだそこまでヤってねぇよ! クソ、桜お前はできるのかよ、魔法使いのクセニよう!!」
桜は「出来るよ」と言うと、一歩足を踏み出す。
そして先程、戦極から教えてもらった方法で、ゾンビを倒しつつ昇司の剣を引き抜く。
落ち着いて引き抜けば簡単にとれるのに、こんな事も出来なかったのかと昇司へと剣を返しつつ思う。
「はい、もうなくさないでね。さ、これで分かったでしょう? 私と剛流くんで倒すから、二人はバリケードをお願い」
昇司と真乃依はその言葉に苦々しく頷くと、桜の指示に従うのだった。
◇◇◇
――時を同じく、戦極は暗黒に呑み込まれて一人ポツンと何処かに立っていた。
かろうじて自分が立っていると認識でき、気を抜けばそこが上なのか、それもと下なのかと、平衡感覚すらおかしくなる暗黒の中に静かにたたずむ。
どうやら近くにるはずの女、エカテリーナの気配もなく、ただ前方を見つめるだけしか出来ない。
「聞いた話以上に暗いな……」
落ちてきた階段は無いのか?
確かに階段を転がり落ちた感覚はあったんだが……。
落ち着いて状況を確認しよう。
今ある装備は、この細身の剣のみ。
食料は、料理長謹製の携行食と、水筒がある。
あとは――俺の叩き込まれた業と剣術のみ。
「つまり、生き残るには十分な装備だが、脱出法が分からない、か」
それにあのドS女もいるはずだが、それもいない。
あの階段は正しい方法で下りないと、ダンジョンの中にランダム転移されるのかもな。
だが戻る階段はあるはずだ。まずはソレを探そうか。
「壁は……あるな」
戦極は壁に左手をあてながら進む。
この壁も地下墓地と同じような壁であり、ジットリと湿り気があるものだ。
やがて進むこと十分程がたったころ、壁に変化が現れる。
コレまでとは違い、〝つるり〟とした感覚の壁に変わる。
どうやら無事に進んでいるのだと安心しつつも、別のステージに進んだことで緊張も上書き。
さらに三十分ほど進むと、前方から音がする。
その音は硬質なモノ同士がぶつかり合う感じであるが、片方は軽いものなのか〝カシャカシャ〟と近づく。
道の先は路地になっているようであり、音の反響具合からそれを感じた戦極は、落ち着いてソレにそなえる。
まず壁へそえている左手を離し、右手で剣の柄へとそっと手を乗せた。
軽めの音は路地のすぐ側まで迫り、次の瞬間それが姿をあらわす。
床より二メートルほど上に浮き上がる、赤く浮かび上がる二つの光。
それがコチラへと向きを変えると、勢いよく突っ込んできた。
「やれやれ。この世界にもいるんだな、骨おばけが。この音なら剣装備のノーマルタイプかな?」
暗闇の中、流れは赤い二つの目を頼りに戦闘と始める。
まずは間合いを測るために剣を前方へと突き出すと、それを弾かれる事でその距離を認識に成功するのだった。
見ればアバラ骨の隙間に剣が入り込み、それが剣の動きを止めたようだ。
剣の達人は無論、練度がある程度ある使い手ならば、こんな事になっても対処は可能だ。
しかしこの使い手はド素人に毛が生えた程度。
さらに訓練などマトモにしているはずもなく、ステータスだけに頼ったどうしようもない存在、それが昇司だった。
だからステータスが高かろうが、おかしな入り方で骨に挟まれば、剣を引き抜く事も難しかった。
無論時間をかければ引き抜くことは可能だが、今はその時間がない。
気がつけば昇司のすぐ側までゾンビが迫り、右腕に噛みつこうとしていた。
それに怖気づいた昇司は、剣を捨てて走って逃げ帰る。
「ヒィィィ!? な、なんだあの死体! 俺の剣を巻き取っていかれたッ」
「違うよ昇司くん。ただあなたの剣の腕が酷いだけだよ。ちゃんとヴェネーノさんに、教えてもらわなかったの?」
「ま、まだそこまでヤってねぇよ! クソ、桜お前はできるのかよ、魔法使いのクセニよう!!」
桜は「出来るよ」と言うと、一歩足を踏み出す。
そして先程、戦極から教えてもらった方法で、ゾンビを倒しつつ昇司の剣を引き抜く。
落ち着いて引き抜けば簡単にとれるのに、こんな事も出来なかったのかと昇司へと剣を返しつつ思う。
「はい、もうなくさないでね。さ、これで分かったでしょう? 私と剛流くんで倒すから、二人はバリケードをお願い」
昇司と真乃依はその言葉に苦々しく頷くと、桜の指示に従うのだった。
◇◇◇
――時を同じく、戦極は暗黒に呑み込まれて一人ポツンと何処かに立っていた。
かろうじて自分が立っていると認識でき、気を抜けばそこが上なのか、それもと下なのかと、平衡感覚すらおかしくなる暗黒の中に静かにたたずむ。
どうやら近くにるはずの女、エカテリーナの気配もなく、ただ前方を見つめるだけしか出来ない。
「聞いた話以上に暗いな……」
落ちてきた階段は無いのか?
確かに階段を転がり落ちた感覚はあったんだが……。
落ち着いて状況を確認しよう。
今ある装備は、この細身の剣のみ。
食料は、料理長謹製の携行食と、水筒がある。
あとは――俺の叩き込まれた業と剣術のみ。
「つまり、生き残るには十分な装備だが、脱出法が分からない、か」
それにあのドS女もいるはずだが、それもいない。
あの階段は正しい方法で下りないと、ダンジョンの中にランダム転移されるのかもな。
だが戻る階段はあるはずだ。まずはソレを探そうか。
「壁は……あるな」
戦極は壁に左手をあてながら進む。
この壁も地下墓地と同じような壁であり、ジットリと湿り気があるものだ。
やがて進むこと十分程がたったころ、壁に変化が現れる。
コレまでとは違い、〝つるり〟とした感覚の壁に変わる。
どうやら無事に進んでいるのだと安心しつつも、別のステージに進んだことで緊張も上書き。
さらに三十分ほど進むと、前方から音がする。
その音は硬質なモノ同士がぶつかり合う感じであるが、片方は軽いものなのか〝カシャカシャ〟と近づく。
道の先は路地になっているようであり、音の反響具合からそれを感じた戦極は、落ち着いてソレにそなえる。
まず壁へそえている左手を離し、右手で剣の柄へとそっと手を乗せた。
軽めの音は路地のすぐ側まで迫り、次の瞬間それが姿をあらわす。
床より二メートルほど上に浮き上がる、赤く浮かび上がる二つの光。
それがコチラへと向きを変えると、勢いよく突っ込んできた。
「やれやれ。この世界にもいるんだな、骨おばけが。この音なら剣装備のノーマルタイプかな?」
暗闇の中、流れは赤い二つの目を頼りに戦闘と始める。
まずは間合いを測るために剣を前方へと突き出すと、それを弾かれる事でその距離を認識に成功するのだった。
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