もふもふ子狐のせいで、廃棄(ゴミ)の烙印を押されたハズレ男。あまりにも酷い扱いをされたので、異世界召喚をした国を爽快バトルにて滅ぼします

竹本蘭乃

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ダンジョン~〝戦極〟覚醒編

069:かぶりもの

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 やはり槍や斤ではなく、剣だと分かる。
 しかも錆びた異臭がすることで、質の悪いモノだと安心をする。

「ふぅ、こんな剣で相手するには丁度いい。セイッ!!」

 戦極は弾かれた剣を上段から斜めに斬りつける事で、スケルトンの動きを探る。
 袈裟斬りにするつもりで斬りつけた剣を、スケルトンも同時に斬り上げる事で、たがいの剣から火花が飛び散り、その姿が浮かぶ。

「やっぱり骨っこか。せっかくの機会だ、骨密度を測ってやろうじゃない」

 乱暴に振り下ろされた錆びた剣を、風切り音から起動を予測。
 半歩右後ろへ体をそらしつつ、錆びた剣へと当てた事で一瞬火花が飛ぶ。

 その明るさで正確にスケルトンの関節を見極めた戦極は、気をまとった細身の剣で一気に首の関節を狙う。

 魔法生物たるスケルトンと、戦極の〝気〟はどちらが優勢なのか。
 その答えも今判明する。
 戦極の刃を首の関節へと、うかつにも滑り込ませたスケルトンの骨がビクリと震えた直後、頭がゴロリともげ落ちた。
 そのまま体が骨がバラバラになって、その活動は停止。

「ふぅ~、どうやら骨っこの弱点も首落ちらしい。今度生まれ変わってスケルトンになるときは、骨密度あげるサプリでも飲んでおけよ……お? ラッキー♪」

 転がる骨の残骸から、戦極は二つのアイテムをゲットする。
 一つは錆びた剣であり、斬るより殴るといった使い方が出来そうだ。
 そしてメインは骨である。

 正確に言うと頭蓋骨ずがいこつであり、いまだ赤き光は灯っていた。
 それを持ち上げ周囲を照らす。

「お! 意外と明るいぞこれ。骨っ子あらため、スカルビームと名付けよう」

 ネームセンスが壊滅的な戦極さんは、意外と明るい頭蓋骨をもって歩く。
 結構大きいので肩に担いだり、終いにはかぶり始めた。

「うぉぉぉ!? 視界が真っ赤でくさぁ。なんだろうか……少し楽しい」

 戦極は無意味にあたりを見回し、ニタリと口元を緩ませる。
 が、骨をかぶっているので、外からは見えない。
 まぁ誰も見ていないのだが……。

 途中で普通に歩くのがあきたのか、アンデットごっこをしながら進むこと十分程で、状況に変化がおこる。
 広めの部屋に到着した戦極は、目前に嫌なものを発見。

「ッ!? モンスターハウスかよ、流石にまずいぞ」

 部屋の中にはスケルトンとゾンビが三十以上はいるほど、ぎっしりと詰まった異常な空間がそこにあった。


 ◇◇◇


 ――その頃、わん太郎と美琴は一階の階段を発見する。
 だがその異様な空間に、わん太郎も首をかしげて見つめていた。

「う~ん。これは転移門みたいだワンねぇ」
『そうなんだよ。しかも一定の場所に転移はしなさそうなんだよ。ほら、今も変な感じで力の動きが変わったよ』
「あぁ、女幽霊はそういうのに詳しかったんだワン。それでどうするワン? あるじぃはこの先にいるのは間違いないんだワン」
『それは当然行くけれど、もう少し法則を見極めたいんだよ。戦極様がどこへ行ったか、分かるかもしれないんだよ』

 わん太郎は頷くと、その場へとお座りする。
 そのままジッと漆黒の闇を見つめると、「あるじぃ……お腹へって無いかなぁ」とつぶやくのだった。


 ◇◇◇


「チッ、なんですのココは!?」

 エカテリーナが転移した場所、そこはモンスターハウスであった。
 いきなり掴みかかられたエカテリーナは、それを振りほどきつつ同時に攻撃。
 さらに右手の血糸けっしの指輪を光らせると、周囲に糸の結界を構築。

 そんな事はお構いなしと、アンデットたちはエカテリーナへと向かうが、次々と裁断さいだんされ細切れとなる。
 切り口の悪臭が狭い部屋に充満するが、眉一つ動かさず淡々とこなすこと十二分。
 やっとアンデットがいなくなったことで、エカテリーナは顔をしかめた。

「なんだって言うんですの。なぜわたくしがこんな汚部屋に……ショウジには後でお仕置きが必要ですわね」

 やっとアンデットから開放されたエカテリーナは、死体を踏みながら部屋をあとにする。
 どこもかしこも暗黒に呑まれているが、エカテリーナは迷うこと無くすすむ。

 そう、エカテリーナの特殊能力である、〝暗闇補正〟と言うものであり、光のない空間でも昼のように見ることが可能であった。
 上階へと戻る階段を探すエカテリーナであったが、ふと立ち止まり目的・・を思い出す。

「階段を見つけるよりも、今は最重要案件がありましたわね……下等種を殺すという、ね」

 勇者に見つからずに目的が達成できる事を考えれば、この状況も悪いものではない。
 そんな風に考えながら、口元を歪ませて戦極を見つけるために歩きだすのだった。
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