もふもふ子狐のせいで、廃棄(ゴミ)の烙印を押されたハズレ男。あまりにも酷い扱いをされたので、異世界召喚をした国を爽快バトルにて滅ぼします

竹本蘭乃

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完全開放!! 爽快バトル編

080:悲恋の力

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『その様子なら体も妖気で回復したんだよ?』
「ダメージは残っているが、妖気を補強としてギブスのように使えば問題ないな。それよりおまえは全力を出せそうか?」
『う~ん、まだ三割ってところなんだよ』
「俺はもっと悪いな。さっきまで気力を使っていたから、その変換に時間がかかる。が、妖気は俺によくなじむ・・・
『なら安心なんだよ』

 二人は白煙をあげ、迫る元・王を気負いなく見つめながら話す。
 そこには緊張も焦りもなく、普段の会話であり自然だった。

「美琴、この世界は魔法ってものがある。そしてそれを使うには魔力がいる。それが異常な力を持っているし、それが無いとこの世界では弱者だ」
『えぇ!? じゃあ戦極様はもしかして……』
「そう、最弱最低の廃棄物あつかいされたのさ」
『それは許せないんだよ! 絶対に!!』
「まぁそれは仕方ない、魔力がないんだからな。で、この妖気をふんだんに使える悲恋は、どこまで通用するか……興味、あるだろう?」

 戦極も元・王へ向けて歩き出す。
 互いの距離、残り五メートル。
 本能のまま動く元・王は、ボロボロの翼を羽ばたき骨を飛ばす。

 その数双方あわせ、合計二十本。
 さらに次々と生え変わり、その勢いは増すばかりだ。
 が、戦極は動かない。いや、正確には左手の親指を、悲恋の桜模様が美しい丸いつばへとかけ押す。

「連撃勝負がお望みか? なら受けてやろう」

 骨が迫ること残り二メートル。
 戦極はやっと抜刀したと思った次の瞬間、いつの間にかまたさやに悲恋を納刀していた。

『おみごとだよ! 相変わらずすごい抜刀術なんだよ』
「抜刀術ってほどでもないぞ? ただの燕返つばめがえしだ」

 一瞬空中で止まったままだった翼の骨は、バラバラに斬られ地面へと散骨。
 そのことが理解できない元・王は、首を傾げながらまた翼の骨を飛ばす。

「まだまだだな。キレも速度も使えたものじゃない」
『普通の使い手なら一生かけても、そこまで行けないと思うんだよ』
「だって、俺ってば普通じゃないし?」
『ハイハイ、変態さんでしたね』
「それ、フェリスにもいわれてるんだが……解せん」

 美琴が『誰、です? その娘?』とお怒りだが、そんな事より悲恋の試し斬りに忙しい戦極。
 翼の攻撃では間に合わないと、元・王は翼で攻撃をしながら距離をつめてくる。

「秒間三十骨が限界か? アイツ・・・と比べると、ぬるいねぇ~どうも」
『そりゃぁ氷狐王は、ブローニングM2重機関銃よりも凶悪に打ち込んでくるけど……比べちゃ可愛そうなんだよ』
「あいも変わらず、アナログのくせに色々知っているねぇ」
『うるさいですぅ~』

 のどかな会話……なのかは怪しいが、戦場とは思えないほどに緊張感がない。
 だが口と体は別物の動きをしている。

 戦極は話しながら、一秒三十個飛んでくる骨を全て細切れにしてしまう。
 さらに余裕が出たのか、たまに向かってくる骨を殴りつけてみたり、蹴ってみたりもする。

 意外と問題なさそうで、少しジンワリとする程度だった。
 
「意外と行けそうだな。よし、殴ってみるか!」
『え!? 戦極様、ちょっと待つんだよ!』

 美琴の言うことを聞かず、戦極はさらに歩を進める。
 元・王の目前まで来ると、戦極をつかもうと迫る両手を、妖気を込めて殴りつけた。

 意外と大きいその手の、中指付近を思い切り殴りつけた瞬間、飛び散る腐肉。
 それが当然戦極へも付着し……。

「『臭っさあああああい!?』」
『だから待ってって言ったんだよ! スッゴク臭いんだよ!』
「そ、そいう美琴もなんか生臭いぞ?」
『はぅ!? それは、わん太郎がお刺身を作るからぁ』

 そんな話をしながら、二人はとっさに背後へと飛びのく。
 ついでに悲恋を抜いて、追撃する左の中指の骨を斬り落とす。
 指がなくなったことでイラついた元・王は、「グルルルル」と唸る。
 直後に大口を開くと、特大のアシッドランスを放つ準備にはいるのであった。
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