もふもふ子狐のせいで、廃棄(ゴミ)の烙印を押されたハズレ男。あまりにも酷い扱いをされたので、異世界召喚をした国を爽快バトルにて滅ぼします

竹本蘭乃

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完全開放!! 爽快バトル編

081:魔女

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 ◇◇◇


「ここは……一体なんですの? 見るからにボス部屋という感じですわね」

 エカテリーナはあの後、なぜかゾンビやスケルトンの群れに襲われて、やっとここまで到着。
 目前にある巨大な二枚扉の前で、開けようかどうか迷っていた時だった。
 奥から激しい戦闘音が聞こえたことで、取手から手をはなす。
 状況を考えながら、下あごへ形のよい指でふれる。

「戦闘中? 誰がこんな場所で……まさか下等種が迷い込んだ? ――クッ!」

 そんな事を考えていたが、扉の向こう側から恐ろしい魔力が近づくのを感知。
 そくざに緊急回避をし、大きく右斜め後ろへ飛び上がった次の瞬間。

「なッ!? あれは、アシッドランス! しかも特大の大きさ。何者が……」

 壁をケリながら床へと着地したエカテリーナは、開いた穴から中を探る。
 すると視線の先にいたのは、朽ち果てたドラゴンゾンビが荒ぶっていた。

「そういう事ですの。しかし苦戦をしているようですわね下等種」

 そっと覗き見るエカテリーナが見る先に、戦極が連射型のアシッドランスから逃げまわるのが見えた。
 口角を上げたエカテリーナは、このまま見ていようかと思う。

(このまま放置してもいずれは死ぬでしょう……が、扉にこんな大穴が開いてしまった以上、脱出されても面倒。間違って帰還されては、わたくしの沽券こけんにかかわりますわね。それに、バーゲン卿のオーダーは絶対ですわ)

 いまいましいが、戦極の戦いを見て即座に決着はつかないと判断。
 万が一逃したら面倒な事になりかねないと、エカテリーナは決断する。
 ここで戦極を確実に抹殺する、と。

「これも天運ですわね。あのドラゴンゾンビ、理性を失っているようですわ」

 エカテリーナはニヤリと左の口角をあげると、自分の影の中へと沈み込むのだった。


 ◇◇◇


 ――戦極は小型のアシッドランスから逃げ惑う。
 と、エカテリーナには見えたようだが、実際はそういう感じでもなかった。

『いい感じに動けるんだよ。嘘から出た真かな? これで一安心なんだよ』
「例えが微妙なんですが? まぁだいぶ妖気も馴染んできたし、背中のダメージも半分くらいになった。なにより呼吸が楽になったのがいい」

 たく、美琴が心配するから楽勝モードを装っていたんだが、お見通しかよ。
 俺のうけたダメージは、普通の人間ならば全治一ヶ月はかるいだろう。
 ダメージコントールは嫌というほど叩き込まれたから、あとは妖気で回復を早めりゃいい。

 それより問題はこの腐ドラだ。
 どうも違和感・・・がある。このまま討滅してもいいものか……。
 
「グオオオオオオオ!!」
『ッ!? 戦極様、ドラゴンゾンビに外部からの干渉かんしょうがあるんだよ!』

 美琴の言うとおり、突如動きが一時止まる元・王。
 よく見れば、額に何か瞳のような紋様が浮かび上がり、腐り落ちた目にすら真っ赤な光が灯りだす。

 ブルリと震えた後、元・王の全ての腐肉が流れ落ちた。
 やがて骨だけの体になった元・王……いや、〝王の残骸〟は骨自体がドス黒く変化する。
 よく見れば、骨のあちこちに瞳の紋様がついており、それが白く発光。

 やがて王の残骸は、天上へと向けて激しく咆哮をあげ、再誕した喜びをあらわす。
 その違和感にますます眉をひそめる戦極は、美琴へと語りかける。

「美琴、妖気の充填率は?」
『四割三分なんだよ。戦極様は?』
「ダメージ回復に相当割いているから、いいところ一割だ」
『あら~困っちゃったんだよ』
「困っちゃったねぇ」
『そのわりには余裕そうなんだよ?』
「余裕がなくても、余裕を作るのが漢ってもんだろ?」

 美琴は楽しげに笑うと、『相変わらずで安心したんだよ』と言いつつも、王の残骸の変化が異常な状態だと思えるのだった。
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