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第8話:新パーティーで再始動
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勇者パーティーを解雇されたオレは、新しい街で心機一転、謙虚に生きていくことを決意。
魔術師の少女サラと剣士ザムスの、凄腕Bランク兄妹パーティーに仮加入。
近隣の村を狙う大鬼と、危険な一眼巨人の討伐に成功。
兄妹パーティー《東方の黄昏団》の仲間に、オレは本格的に加入することになった。
◇
一眼巨人を討伐してから、日が経つ。
オレの加入した《東方の皆月》は、次の任務中。
街の近くの荒野、オレたちは翼竜と戦っていた。
「くっ……剣が届かない相手か……厄介だな」
空高くを飛行している翼竜。
地上にいるザムスさんは、恨めしそうに睨んでいた。
「兄さん、どうしましょう?」
「とりあえずオレは弓で攻撃してみる。サラは魔法でいけるか?」
「あの距離では……ちょっと難しいです」
「やはり、そうか。面倒な相手だな」
攻撃魔法には有効射程がある。
多く魔力を消費することで、ある程度までは射程を伸ばせる。
だが今の翼竜の高度には、遥か届かないのだ。
「でも兄さん、あの翼竜はここで何とかしないと、近隣の家畜がまた浚《さら》われてしまいます」
「ああ、そうだな、せっかく見つけたんだ。必ずここで討伐しないとな」
巨大な翼竜は、牛や馬などの家畜を好物する。
だから近隣の酪農家は、あいつに多大な被害を受けていた。
だが警戒心が強く、弓と魔法の有効射程内まで、なかなか降りてこないのだ。
「また高度を上げやがった。くそったれが!」
「あのー、ザムスさん。良かったらオレの支援魔法で、サラの攻撃魔法の飛距離を伸ばしますか?」
「それは有り難いが、ハリト。あの高度だと、いくらお前の支援魔法でも……」
「とりあえず試してみますね。サラいくよ……【魔法・距離延長《弱》】……【魔法・威力強化《弱》】!」
直後、サラの魔法の杖が眩しく光る。
「兄さん? いいんですか、これ撃っても?」
「ああ、頼む。嫌な予感がするがな」
「ですよね。はぁ……では、いきます!……【風斬《中》】!」
サラが風の攻撃魔法を発動。
遥か上空の翼竜に向かって、杖を振りかざす。
ビューン、グルルッルル!
直後、巨大な風の刃が、高速回転で発射。
シュッ、パァーーン!
上空にいた翼竜を一刀両断する。
ヒューン、ドッスーン!
翼竜の以外は、そのまま地上に落下。
粒子となって消えていく。
「ナイス、コントロールだったね、サラ!」
ワイバーンの討伐を確認して、二人がいる後ろを振り向く。
「えっ…………」
サラは自分の杖を見ながら、目を点している。
「ふう…………やっぱりか…………」
ザムスさんは翼竜の死骸を見ながら、深いため息をついている。
二人とも、いったいどうしたのだろうか?
おそるおそる訪ねてみよう。
「あの……またオレなんか、やっちゃいましたか?」
「ま、『またなんか、やっちゃいましたか?』じゃいないですよ、ハリト君! なんで私の【風斬《中》】が、あんな地獄の風斬撃みたいに、なっちゃうんですか⁉ しかも射程が雲の上まで、貫通していたじゃないですか⁉」
「いや、ごめん、サラ。オレも必死だったから、よく加減が分かんなくて……」
「いえ、そういう意味じゃなくて」
「サラ、止めておけ」
「でも、兄さん!」
「ハリトの凄さに、いちいち突っ込んでいたら、コッチの精神が持たない。静かに見守っておこう」
「そ、それは確かに。ふう……」
「はぁ……」
なんか兄妹で仲良く、ため息をついている。
とにかく何とかなりそうだな。
オレも一安心だ。
「ふむ。翼竜は魔石以外にも、素材があるな」
「これは翼竜の翼皮ですね、兄さん。冒険者ギルドで高く買い取ってくれるはずです」
「ああ、そうだな。だが、この大きさだと、持っていくもの……」
「よかったら、オレがやりますよ! 一眼巨人の骨みたい!」
役に立ちたいオレは名乗り出る。
今回の戦闘で、止めを刺したのはサラの魔法。
翼竜を発見し、仕事の段取りをしたのはザムスさん。
今のところオレだけが、何も仕事していない。
だから荷物運びだけでも、頑張りたいのだ。
「そう言うと思ったが、ハリト、こんなに長い物も、収納できるのか?」
「はい、大丈夫です……【収納】!」
ボワン!
おっ、上手くいった。
翼竜の翼羽を、全部オレの魔法で収納できた。
あとは街まで持って、出せばいいだけだ。
「はぁ……前にも言いましたが……ハリト君のその魔法、凄すぎですよね?」
「えっ? そうかな? 昔から毎日使っているから、凄さが分からなくて。ごめんね、サラ」
「そう言うと思いました。ところで、その【収納】は、どのくらいの分量が入るんですか?」
「えっ、これ? 正確に測ったことはないけど、だいたい大きな穀物倉庫、十個分くらいかな?」
「お、『大きな穀物倉庫、十個分』……ですか」
「あっ、でもウチの師匠の方は、その十倍は収納できたかな? 悔しいことだけど」
「お、大きな倉庫、百個分……ですか……はぁ……」
ん?
またサラが深いため息をついている。
どうしたんだろうか?
「いえ、私も幼い時から『魔術の神童』や『天才魔術師』と言われて、ちょっとだけ自信がありました。でも、ハリト君と師匠の話を聞いていたら、自信が木っ端みじんに吹き飛んじゃいました」
「あー、ごめん、なんかサラの気分を害したみたいで」
「いえ、大丈夫です。私は前向きなので。これから精進して凄い魔法使いになります! 将来的には【収納】を使えるぐらいに!」
「そっか……あっ、良かった、【収納】ぐらいなら、オレでも教えられるよ!」
「えっ……あの伝説の特殊魔法を、私も、ですか⁉」
「うん。サラぐらい凄い魔法使いなら、すぐに会得できるはず。今度、ゆっくり教えるね」
「はい、ぜひ! ありがとうございます、ハリト君!」
何故か落ち込んでいたサラに、笑顔が戻る。
良かった。
「ありがとうございます、ハリト君!」
でもグイグイ抱きついてくるのは、少し困る。
彼女の無自覚なで大きな胸が、オレの身体にくっついてくるから。
いや、厳密に言えば、ともて嬉しい。
だけど……ザムスさんの視線が。
ジロリ!
あー、きた。
さっきの翼竜戦よりも。怖い視線が飛んできた。
「えー、ごほん。サラ、そろそろ戻る時間みたいだから」
「あっ、ごめんなさい、ハリト君。私つい嬉しくて」
「そろそろいくぞ。お前たち。ボヤボヤしていたら荒野に置いていくぞ。特に、ハリトを」
「あっ、ザムスさん! 待ってください!」
こうして翼竜討伐の依頼は、無事に完了。
オレたちはムサスの街に帰還するのであった。
◇
無事に街に戻って来た。
あっ、でも前の一眼巨人の骨と、同じようにした方がいいかな?
街の入り口前で、翼竜の翼羽を【収納】から出しておいた方が?
でもザムスさんに止められた。
「いや、そろそろ冒険者ギルドの連中にも“慣れて”もらった方が、いいだろう」
「えっ……“慣れて”ですか? 何をですか?」
「まぁ……お前はあまり気にするな。早く冒険者ギルドに行くぞ」
「えっ、はい?」
よく分からないけど収納したまま、冒険者ギルドに向かうことになった。
冒険者ギルドに到着する。
「うわー、今日もたくさん人がいるな」
冒険者ギルドの中には、多くの冒険者がいた。
待機をしながら、雑談をしている人が多い。
「オレは報告に行ってくる。ハリトは、後で呼ぶ」
「はい、後ろで待っています」
受付のお姉さんに、ザムスさんが任務の依頼の報告。
翼竜の魔石を見せて、討伐を証明してくれる。
こうした細かい作業は、オレは苦手。
だからザムスさんは頼りになる存在だ。
「ありがとうございました、ザムスさん! 今回は翼竜討伐ですか。それにしても最近の《東方の黄昏団》の活躍は、凄いですよね!」
受付のお姉さんは、かなり興奮した感じだった。
何しろ前回は、危険度B上の一眼巨人と、大鬼三匹。
今回は危険度B下だけど、警戒心が強く厄介な翼竜。
普通のランクBの冒険者でも、数日かかる厄介な討伐。
それを《東方の黄昏団》は両方とも、たった一日で達していたからだ。
「そういえば、そこの新しい支援魔術師の人が入ってから、連続して大きな仕事を達成していますよね? 私の気のせいかもしれませんが」
「いや、気のせいではない。その話のついでに、翼竜の素材の買い取りもお願いしたい。いいか?」
「えっ? はい、もちろん大歓迎です。そこの買い取り台に持ってきていただければ、査定して買い取りします。素材は外に運搬屋さんが?」
「いや、そうじゃない。まぁ、“慣れて”もらうためにも口で説明するよりも、見てもらった方が早いな。ところで姉さん、あんたの心臓は強い方か?」
「えっ? 心臓ですか? そりゃ、こんな冒険者ギルドの受付嬢をしているくらいなので、どんなことが起きても動揺はしません。それが、どうかしましたか?」
「いや、そいつはありがたい。ハリト、素材を“出して”いいぞ」
「はい、分かりました」
ようやくオレの出番がきた。
受付カウンターの横の、買い取りコーナーに移動する。
そんな時、冒険者ギルドの中が、少しザワザワする。
「……おい、《東方の黄昏団》の連中が、何かするみたいだぜ?」
「……あの新しい支援魔術師が、何かするのか?」
「……ちょっと見ておこうぜ!」
何やら他の冒険者たちから、ちょっと注目を浴びている。
恥ずかしいから、早く終わらせよう。
右手を出して、よし準備はOKだ。
「えっ? “出す”? どうやって、どこから出す、つもりなんですか?」
「お姉さん、危ないので、もう少し下がった方がいいですよ。それじゃいきます……【収納・出】!」
ボワン!
収納魔法を発動。
ドッ、スーン!
目の前の買い取り台の上に、翼竜の巨大な翼羽が出現。
よし、上手くいったぞ。
それでは査定お願いします、お姉さん。
「え…………?」
ん?
お姉さんの様子がおかしい。
目を点にして、言葉を失っていた。
翼羽を凝視ている。
「「「なっ…………」」」
あと野次馬な冒険者たちも、全員が言葉を失っている。
誰もが目を丸くて、口をぽかーんと開けている。
そんな中、受付のお姉さんが、静かに口を開く。
「えーと……今のは、アナタが……?」
「はい、これは翼竜の素材です!」
「い、いえ……そういう問題じゃなくて……」
ん?
質問の意図が違ったのかな?
何に驚いているんだろう。
そんな時、ザムスさんは間に入ってくれる。
「そんな訳で、こいつは“普通”じゃない。だから今後は“慣れて”くれ。たぶん、これからもっと凄いことをしていくはずだ」
「あっ……はい……肝に命じておきます。まさか私がこんなにビックするなんて……ふう……」
受付のお姉さんは。深いため息をついている。
何やら自信を失った顔をしていた。
「さて、ハリト、サラ。査定が終わるまで、一度、宿に戻るとするぞ」
「はい、分かりました!」
「そうですね。早く、着替えたいわ」
オレたち三人は、冒険者ギルドを出ていく。
すぐ近くの常宿に向かう。
だが、そんな時、近づいている男の人がいた。
「ちょっと、お待ちください! そこの剣士の方! もしや今話題の《東方の黄昏団》ではないですか⁉」
「ん? ああ、そうだが。あんたは誰だ?」
「私はこの街で商人をしております、カネンと申します」
ザムスさんに声をかけてきたのは、商館の経営者。
高そうな服を着て、ちょっと太ったおじさん。
後ろには護衛の剣士が二人いる。
「なるほど。カネン商店の主か? オレたちに何か用か?」
「はい、実は仕事を依頼したくて、探しておりました。街で噂になっている“一眼巨人殺し”の皆さんを!」
「そうか……話を聞こうか?」
おっ、新たな仕事の依頼か。
つぎはどんな仕事なのかな?
オレはあんまり役に立たないけど、精いっぱい頑張ろう。
「実は当商会の定期便が、凶悪な盗賊団に狙われておりまして、護衛を頼みたいのです!」
えっ?
次の仕事は。凶暴な盗賊団が相手?
ちょっと怖いな……。
オレ大丈夫かな。
魔術師の少女サラと剣士ザムスの、凄腕Bランク兄妹パーティーに仮加入。
近隣の村を狙う大鬼と、危険な一眼巨人の討伐に成功。
兄妹パーティー《東方の黄昏団》の仲間に、オレは本格的に加入することになった。
◇
一眼巨人を討伐してから、日が経つ。
オレの加入した《東方の皆月》は、次の任務中。
街の近くの荒野、オレたちは翼竜と戦っていた。
「くっ……剣が届かない相手か……厄介だな」
空高くを飛行している翼竜。
地上にいるザムスさんは、恨めしそうに睨んでいた。
「兄さん、どうしましょう?」
「とりあえずオレは弓で攻撃してみる。サラは魔法でいけるか?」
「あの距離では……ちょっと難しいです」
「やはり、そうか。面倒な相手だな」
攻撃魔法には有効射程がある。
多く魔力を消費することで、ある程度までは射程を伸ばせる。
だが今の翼竜の高度には、遥か届かないのだ。
「でも兄さん、あの翼竜はここで何とかしないと、近隣の家畜がまた浚《さら》われてしまいます」
「ああ、そうだな、せっかく見つけたんだ。必ずここで討伐しないとな」
巨大な翼竜は、牛や馬などの家畜を好物する。
だから近隣の酪農家は、あいつに多大な被害を受けていた。
だが警戒心が強く、弓と魔法の有効射程内まで、なかなか降りてこないのだ。
「また高度を上げやがった。くそったれが!」
「あのー、ザムスさん。良かったらオレの支援魔法で、サラの攻撃魔法の飛距離を伸ばしますか?」
「それは有り難いが、ハリト。あの高度だと、いくらお前の支援魔法でも……」
「とりあえず試してみますね。サラいくよ……【魔法・距離延長《弱》】……【魔法・威力強化《弱》】!」
直後、サラの魔法の杖が眩しく光る。
「兄さん? いいんですか、これ撃っても?」
「ああ、頼む。嫌な予感がするがな」
「ですよね。はぁ……では、いきます!……【風斬《中》】!」
サラが風の攻撃魔法を発動。
遥か上空の翼竜に向かって、杖を振りかざす。
ビューン、グルルッルル!
直後、巨大な風の刃が、高速回転で発射。
シュッ、パァーーン!
上空にいた翼竜を一刀両断する。
ヒューン、ドッスーン!
翼竜の以外は、そのまま地上に落下。
粒子となって消えていく。
「ナイス、コントロールだったね、サラ!」
ワイバーンの討伐を確認して、二人がいる後ろを振り向く。
「えっ…………」
サラは自分の杖を見ながら、目を点している。
「ふう…………やっぱりか…………」
ザムスさんは翼竜の死骸を見ながら、深いため息をついている。
二人とも、いったいどうしたのだろうか?
おそるおそる訪ねてみよう。
「あの……またオレなんか、やっちゃいましたか?」
「ま、『またなんか、やっちゃいましたか?』じゃいないですよ、ハリト君! なんで私の【風斬《中》】が、あんな地獄の風斬撃みたいに、なっちゃうんですか⁉ しかも射程が雲の上まで、貫通していたじゃないですか⁉」
「いや、ごめん、サラ。オレも必死だったから、よく加減が分かんなくて……」
「いえ、そういう意味じゃなくて」
「サラ、止めておけ」
「でも、兄さん!」
「ハリトの凄さに、いちいち突っ込んでいたら、コッチの精神が持たない。静かに見守っておこう」
「そ、それは確かに。ふう……」
「はぁ……」
なんか兄妹で仲良く、ため息をついている。
とにかく何とかなりそうだな。
オレも一安心だ。
「ふむ。翼竜は魔石以外にも、素材があるな」
「これは翼竜の翼皮ですね、兄さん。冒険者ギルドで高く買い取ってくれるはずです」
「ああ、そうだな。だが、この大きさだと、持っていくもの……」
「よかったら、オレがやりますよ! 一眼巨人の骨みたい!」
役に立ちたいオレは名乗り出る。
今回の戦闘で、止めを刺したのはサラの魔法。
翼竜を発見し、仕事の段取りをしたのはザムスさん。
今のところオレだけが、何も仕事していない。
だから荷物運びだけでも、頑張りたいのだ。
「そう言うと思ったが、ハリト、こんなに長い物も、収納できるのか?」
「はい、大丈夫です……【収納】!」
ボワン!
おっ、上手くいった。
翼竜の翼羽を、全部オレの魔法で収納できた。
あとは街まで持って、出せばいいだけだ。
「はぁ……前にも言いましたが……ハリト君のその魔法、凄すぎですよね?」
「えっ? そうかな? 昔から毎日使っているから、凄さが分からなくて。ごめんね、サラ」
「そう言うと思いました。ところで、その【収納】は、どのくらいの分量が入るんですか?」
「えっ、これ? 正確に測ったことはないけど、だいたい大きな穀物倉庫、十個分くらいかな?」
「お、『大きな穀物倉庫、十個分』……ですか」
「あっ、でもウチの師匠の方は、その十倍は収納できたかな? 悔しいことだけど」
「お、大きな倉庫、百個分……ですか……はぁ……」
ん?
またサラが深いため息をついている。
どうしたんだろうか?
「いえ、私も幼い時から『魔術の神童』や『天才魔術師』と言われて、ちょっとだけ自信がありました。でも、ハリト君と師匠の話を聞いていたら、自信が木っ端みじんに吹き飛んじゃいました」
「あー、ごめん、なんかサラの気分を害したみたいで」
「いえ、大丈夫です。私は前向きなので。これから精進して凄い魔法使いになります! 将来的には【収納】を使えるぐらいに!」
「そっか……あっ、良かった、【収納】ぐらいなら、オレでも教えられるよ!」
「えっ……あの伝説の特殊魔法を、私も、ですか⁉」
「うん。サラぐらい凄い魔法使いなら、すぐに会得できるはず。今度、ゆっくり教えるね」
「はい、ぜひ! ありがとうございます、ハリト君!」
何故か落ち込んでいたサラに、笑顔が戻る。
良かった。
「ありがとうございます、ハリト君!」
でもグイグイ抱きついてくるのは、少し困る。
彼女の無自覚なで大きな胸が、オレの身体にくっついてくるから。
いや、厳密に言えば、ともて嬉しい。
だけど……ザムスさんの視線が。
ジロリ!
あー、きた。
さっきの翼竜戦よりも。怖い視線が飛んできた。
「えー、ごほん。サラ、そろそろ戻る時間みたいだから」
「あっ、ごめんなさい、ハリト君。私つい嬉しくて」
「そろそろいくぞ。お前たち。ボヤボヤしていたら荒野に置いていくぞ。特に、ハリトを」
「あっ、ザムスさん! 待ってください!」
こうして翼竜討伐の依頼は、無事に完了。
オレたちはムサスの街に帰還するのであった。
◇
無事に街に戻って来た。
あっ、でも前の一眼巨人の骨と、同じようにした方がいいかな?
街の入り口前で、翼竜の翼羽を【収納】から出しておいた方が?
でもザムスさんに止められた。
「いや、そろそろ冒険者ギルドの連中にも“慣れて”もらった方が、いいだろう」
「えっ……“慣れて”ですか? 何をですか?」
「まぁ……お前はあまり気にするな。早く冒険者ギルドに行くぞ」
「えっ、はい?」
よく分からないけど収納したまま、冒険者ギルドに向かうことになった。
冒険者ギルドに到着する。
「うわー、今日もたくさん人がいるな」
冒険者ギルドの中には、多くの冒険者がいた。
待機をしながら、雑談をしている人が多い。
「オレは報告に行ってくる。ハリトは、後で呼ぶ」
「はい、後ろで待っています」
受付のお姉さんに、ザムスさんが任務の依頼の報告。
翼竜の魔石を見せて、討伐を証明してくれる。
こうした細かい作業は、オレは苦手。
だからザムスさんは頼りになる存在だ。
「ありがとうございました、ザムスさん! 今回は翼竜討伐ですか。それにしても最近の《東方の黄昏団》の活躍は、凄いですよね!」
受付のお姉さんは、かなり興奮した感じだった。
何しろ前回は、危険度B上の一眼巨人と、大鬼三匹。
今回は危険度B下だけど、警戒心が強く厄介な翼竜。
普通のランクBの冒険者でも、数日かかる厄介な討伐。
それを《東方の黄昏団》は両方とも、たった一日で達していたからだ。
「そういえば、そこの新しい支援魔術師の人が入ってから、連続して大きな仕事を達成していますよね? 私の気のせいかもしれませんが」
「いや、気のせいではない。その話のついでに、翼竜の素材の買い取りもお願いしたい。いいか?」
「えっ? はい、もちろん大歓迎です。そこの買い取り台に持ってきていただければ、査定して買い取りします。素材は外に運搬屋さんが?」
「いや、そうじゃない。まぁ、“慣れて”もらうためにも口で説明するよりも、見てもらった方が早いな。ところで姉さん、あんたの心臓は強い方か?」
「えっ? 心臓ですか? そりゃ、こんな冒険者ギルドの受付嬢をしているくらいなので、どんなことが起きても動揺はしません。それが、どうかしましたか?」
「いや、そいつはありがたい。ハリト、素材を“出して”いいぞ」
「はい、分かりました」
ようやくオレの出番がきた。
受付カウンターの横の、買い取りコーナーに移動する。
そんな時、冒険者ギルドの中が、少しザワザワする。
「……おい、《東方の黄昏団》の連中が、何かするみたいだぜ?」
「……あの新しい支援魔術師が、何かするのか?」
「……ちょっと見ておこうぜ!」
何やら他の冒険者たちから、ちょっと注目を浴びている。
恥ずかしいから、早く終わらせよう。
右手を出して、よし準備はOKだ。
「えっ? “出す”? どうやって、どこから出す、つもりなんですか?」
「お姉さん、危ないので、もう少し下がった方がいいですよ。それじゃいきます……【収納・出】!」
ボワン!
収納魔法を発動。
ドッ、スーン!
目の前の買い取り台の上に、翼竜の巨大な翼羽が出現。
よし、上手くいったぞ。
それでは査定お願いします、お姉さん。
「え…………?」
ん?
お姉さんの様子がおかしい。
目を点にして、言葉を失っていた。
翼羽を凝視ている。
「「「なっ…………」」」
あと野次馬な冒険者たちも、全員が言葉を失っている。
誰もが目を丸くて、口をぽかーんと開けている。
そんな中、受付のお姉さんが、静かに口を開く。
「えーと……今のは、アナタが……?」
「はい、これは翼竜の素材です!」
「い、いえ……そういう問題じゃなくて……」
ん?
質問の意図が違ったのかな?
何に驚いているんだろう。
そんな時、ザムスさんは間に入ってくれる。
「そんな訳で、こいつは“普通”じゃない。だから今後は“慣れて”くれ。たぶん、これからもっと凄いことをしていくはずだ」
「あっ……はい……肝に命じておきます。まさか私がこんなにビックするなんて……ふう……」
受付のお姉さんは。深いため息をついている。
何やら自信を失った顔をしていた。
「さて、ハリト、サラ。査定が終わるまで、一度、宿に戻るとするぞ」
「はい、分かりました!」
「そうですね。早く、着替えたいわ」
オレたち三人は、冒険者ギルドを出ていく。
すぐ近くの常宿に向かう。
だが、そんな時、近づいている男の人がいた。
「ちょっと、お待ちください! そこの剣士の方! もしや今話題の《東方の黄昏団》ではないですか⁉」
「ん? ああ、そうだが。あんたは誰だ?」
「私はこの街で商人をしております、カネンと申します」
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高そうな服を着て、ちょっと太ったおじさん。
後ろには護衛の剣士が二人いる。
「なるほど。カネン商店の主か? オレたちに何か用か?」
「はい、実は仕事を依頼したくて、探しておりました。街で噂になっている“一眼巨人殺し”の皆さんを!」
「そうか……話を聞こうか?」
おっ、新たな仕事の依頼か。
つぎはどんな仕事なのかな?
オレはあんまり役に立たないけど、精いっぱい頑張ろう。
「実は当商会の定期便が、凶悪な盗賊団に狙われておりまして、護衛を頼みたいのです!」
えっ?
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水……水分……液体…………
あら? なんだかなんでもできる気がするわ……?
そしてわたくしは、前世の雑な知識でわたくしを虐げた人たちに仕返しを始める……──
【※女性蔑視な発言が多々出てきますので嫌な方は注意して下さい】
【※知識の無い者がフワッとした知識で書いてますので『これは違う!』が許せない人は読まない方が良いです】
【※ファンタジーに現実を引き合いに出してあれこれ考えてしまう人にも合わないと思います】
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇ご都合展開。矛盾もあるよ!
◇なろうにも上げてます。
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