勇者パーティーをパワハラ追放された【自己評価の低い】支援魔術師、実は魔神に育てられた最強の男でした

ハーーナ殿下

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第18話:女領主レイチェル

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勇者パーティーを解雇されたオレは、新しい街で謙虚に生きていくことを決意。
《東方の黄昏たそがれ団》に幼馴染マリナと共に加入して、冒険者として活動開始。

新しい任務先、北の街道で、ムサスの領主の女貴族レイチェルに遭遇してしまう。



「私はムサスの街を収める領主レイチェル=バーンズだ」

「えっ……領主……様⁉」

領主ということは、貴族だ。
しかも年齢はオレより少し歳上。
更にキツメな美人な人。

どうやって、対応すればいいのだろうか?
まさか状況に頭が混乱してしまう。

とりあえず頼りになるリーダに、助けを求める。

「えーと、ザムスさん……助けてください」

救援サインに気が付き、ザムスさんがやってくる。

「どうした、ハリト。ん? レイチェルか……」

「あら、久しぶりね。ザムス どうして、ここに?」

ん?
助けに来てくれたザムスさんと、女領主レイチェルさん。
何やら、知り合いみたいだぞ。

「ギルドからの依頼だ。手こずっているみたいだから、助けに来たぞ」

「あら、私は頼んだ覚えはないけど? まぁ、いいわ。邪魔にならないように、得意の魔物退治でもしていてちょうだい」

そう言い残して、女領主は立ち去っていく。
向かっていく方向には、落石の撤去の現場だ。

ふう……これで、緊張感から解放された。

それにしても先ほどの、二人のやり取り。
どういう関係なんだろう?

貴族であるレイチェルさんに、ザムスさんはタメ口で話をしていたし。
相手も特に咎《とが》める様子もなかった。

そうだ、隣に来たサラに、小声で聞いてみよう。

「ねぇ、サラ。あの二人……って、どんな関係なの?」

「えっ、関係ですか? 兄さんとレイチェル様は、幼馴染なんですよ」

「えっ……幼馴染⁉ あのザムスさんに⁉」

堅物のザムスさんに、あんな美人な幼馴染さん、なんかイメージが合わない。
いや、オレの勝手なイメージなんだけど。

「まぁ、ハリト君の気持ちも分かります。あんな美人なレイチェル様と、不愛想な兄の組み合わせですからね。でも、昔は仲良しだったんですよ。レイチェル様の屋敷の庭で、一緒に遊んだりして」

「サラ、余計なことは説明しなくていい。仕事にいくぞ」

「あっ、はい!」

厳しい視線が、ザムスさんから飛んできた。
オレの質問タイムはこれにて終了。

本当はもっと二人の関係を、聞きたかった。
けど冒険者は過去を詮索するのは、マナー違反。

オレとマリナも勇者パーティーを解雇されたことは、まだザムスさんたちには言っていない。
時がきたら自然と話すことにしていた。

だから、これ以上は詮索しないことにした。

――――それにザムスさん視線が、さっきから怖いし!

「さて、仕事の準備に移るぞ」

「「「はい!」」」

ザムスさんの指示に従い、オレたち《東方の黄昏たそがれ団》は仕事にはいる。



仕事は最初は情報収集から。
撤去工事の人たちに挨拶をして、情報をしいれていく。

次は周囲の地形の確認。
魔物が襲ってきそうな場所を、マークしていく。

事前確認も終わったので、周囲の警備を開始。
オレは持ち場を歩きながら、周囲を警戒していく。

「うーん、陽の出ている内は、魔物は襲ってこなそうな感じかな?」

今のところ周囲に、怪しい“気配”はない。

何故なら基本的に魔物や魔獣や、陽の無い時間帯を好む。
また薄暗い森の中や洞窟、異様の魔素が濃い地帯だ。

だから午後の陽が照らす、山岳地帯には魔物は近寄って来ない。
本番の時間はもう少し後だ。

「日暮れは、ちょっと注意しないとな」

あと二時間ちょっとで日没。
周囲は月夜しかない、暗闇になるであろう。

それまでは少しリラックスしておく。

「撤去の工事の人も、日没前には、このベースキャンプに戻ってくるのかな?」

基本的に夜間、野外で仕事をしない。
そのため工事の人たちの仕事も、日没前まで。

街道沿いに設置されたテントに、作業員は寝泊まりをしているらしい。

「一応、柵はあるけど、心もとない感じだな」

テントの周りには、丸太で作れられた柵があった。
夜間の魔物対策であろう。

「本当はもう少し防衛力を強化してあげたいけど、勝手にやったら怒られそうだからな……」

今回の大元の依頼人は、貴族な女領主レイチェルさん。
勝手に支援魔法を発動したら、怒られる気がする。

さっきのザムスさんとのやり取りで、オレは感じた。
あの女の人はかなり気が強く、プライドも高そう。

あまり近づかないのが吉である。

――――そんな時であった。

後ろから声をかけられる。

「あら、誰のことかしら? 『かなり気が強く、プライドも高そう』って?」

えっ……?

恐る恐る振り返ると、そこに立っていたのは女騎士。
領主レイチェルさんだった。

まさかオレは心の声を、無意識的に声に出していたのだ。

まずい。
誤魔化さないと。

「えーと、ほらウチのパーティーの魔術師の子の話ですよ、今のは」

「あら、サラちゃんのこと? あの子は、気もそんなに強くなく、プライドも高くはない子よ?」

あっ、しまった。
ザムスさんの幼馴染ということは、サラとも知り合いだったのか。

「えーと、間違えていました。ウチの女弓士のことですよ」

「あら、あの赤毛の子? 彼女、気は強そうだけど、プライドはそれほど高くはなさそうね。私、こう見えて人を見る目だけは、あるのよ?」

「あっはっはは……そうですか」

完全にバレているようだ。
ここは打ち首覚悟で、笑って誤魔化すしかない。

「そこまで怯えなくても、いいわ。こう見えて私は、悪口や身分関係は気にしないタチだから」

「えっ……そうなんです? ありがとうございます」

なんか急に親近感が湧いてきた。
そう言われて改めて見てみると、レイチェルさんは悪い人ではなさそうな雰囲気だ。

王都の貴族たちのように上から目線で、物を言ってこない。
あと『冒険者風情め!』と蔑んでくる雰囲気もない。

基本的にはオレのことを、一人の冒険者とて見ているのだ。
ちょっと気が強そうだけど。

「ところで、“あの男”はどこ?」

「“あの男”……ですか?」

「アナタのパーティーリーダーよ!」

「ああ、ザムスさんですね。今は周囲の地形の、最終確認に行きました」

「ふーん。そうなんだ……」

ん?
レイチェルの表情が、一瞬だけ緩む。

領主というより、“一人の女性”の顔なような気がする。

「もしかしてザムスさんのことを、心配しています?」

「えっ⁉ な、何を、いきなり?」

「あっ、オレの勘違いだったらごめんなさい。でもザムスさんのことを、そんな儚《はかな》い顔で口にする女の人は、初めて見たので……」

「ん? それは、どういう意味で?」

「ほら、ザムスさんって、いつも不愛想でしょ? だからギルドの受付の女の人や、酒場の女の子にも、怖がられているんですよ」

「あっはっはっは……確かに、そうね。目に浮かぶわ」

「えっ……笑った⁉」

いきなりレイチェルさんが笑ったから驚く。
最初のイメージとは違う。

「なによ、女の領主が笑ったら、おかしいの?」

「い、いえ、良いことだと思います。あと、なんか勿体なーと思って。いつも笑顔だと、もっと素敵な女性に見えるのに……と思いまして」

「ちょ、ちょっと何を言っているのよ。まさか口説くつもり?」

「いえ、そんなことをしたら、ザムスさんに叱られてしまいます」

依頼人をナンパしたら、パーティーリーダーに大目玉を喰らってしまう。

「えっ……ザムスが何か言っていたの⁉ 私のことに関して⁉」

レイチェルさんの態度が急変する。
オレの両肩を掴んで、問い詰めてきた。

うっ……この人、かなり力が強い。

それに、この急変ぶり……あれ?
もしかして。

「ま、間違っていたら、ごめんなさい。もしかしてザムスさんのことを好きなんですか、レイチェルさんは?」

「~~~~~~~~~~~~~~~~~~ん⁉」

びっくりした。
レイチェルさんは顔を真っ赤にして、声にならない声をだす。
耳まで真っ赤になってしまう。

これはマズイ。
もしかしたらオレは、とんでもない失言をしたのかもしれない。

「えーと、変なことを言って、ごめんなさいです。それでは失礼します」

かなり気まずいので、この場から立ち去ることにした。
マリナかサラのいる場所に、早く避難しよう。

――――だが、避難できなかった。

ガシッ!

レイチェルさんに強烈な握力で、腕を掴まれてしまう。

えっ……?

「ちょ、ちょっと、今のことで、ザムスのことで、アタナに話があります……」

掴んできた、レイチェルさんの顔が怖い。

ど、どうしよう……誰か助けて。
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