勇者パーティーをパワハラ追放された【自己評価の低い】支援魔術師、実は魔神に育てられた最強の男でした

ハーーナ殿下

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第19話:事件発生

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勇者パーティーを解雇されたオレは、新しい街で謙虚に生きていくことを決意。
《東方の黄昏たそがれ団》に幼馴染マリナと共に加入して、冒険者として活動開始。

北の街道の工事現場で、ムサスの領主の女貴族レイチェルに遭遇。
何やらザムスさんのことで話をしてしまう。



レイチェルさんに強烈な握力で、腕を掴まれてしまう。

「ちょ、ちょっと、今のことで、ザムスのことで、話があります……」

掴んできた、レイチェルさんの顔が怖い。

ど、どうしよう……誰か助けて。
とにかく話を聞いて、落ち着いてもらおう。

「えーと、どのような話ですか?」

「今ザムスは付き合っている女子はいるのか?」

「へっ⁉ い、いえ、分からないです。でもパーティーに入団してから、プライベートで女生と会って時間はないと思います」

基本的に《東方の黄昏たそがれ団》は毎日、活動している。
週に一度も何かと一緒だ。
そんな中でもザムスさんに、女性の陰はない。

「そうか。それならザムスが好いている女子は、どこかにいるのか?」

「えっ……それは分からないですが、妹のサラを凄く大事にしています」

というか極度のシスコンだ。
オレが少しでも近づくと、かなり厳しい視線と言葉で攻めてくる。

マリナが入団したから、オレとサラだけの時間が減っていた。
それでも少しでもサラとオレの距離が近いと、今でも厳しいのだ。

「そうか、それを聞いて安心した。昔を変わらないな、ザムスは……」

「あのー、腕を離してもらっていいですか? 折れちゃいそうなので」

「あっ、すまない。失礼した」

ふうー、ようやく腕を離してもらえた。

レイチェルさんは騎士としての力も、強いのであろう。
半端ではない握力だった。

「あのー、もしかして、やっぱりレイチェルさんはザムスさんのことを……」

「ええ、好いている。幼い時から、今でもだ」

やっぱりそうだったんだ。

オレは恋愛話が苦手。
でも、あそこまで態度に出ていたら、流石に気が付いたのだ。

「ちなみに告白とはしたことは、あるんですか?」

「若い時に一度だけな。だがあの朴念仁ぼくねんじんは、ちゃんと話すら聞いていなかった。私は真剣に告白したのに……」

「あー、なるほどです」

光景が目に浮かぶ。
真剣なレイチェルさんが告白をして、鈍感なザムスさんが首を傾げる光景だ。

とにかく二人とも不器用すぎて、上手く歯車が合わないのだろう。

「ふう……どうすれば良いのだろうか。ザムスはどのような女子が、好みなのだろうか……」

「えーと、よく分からないですが、ザムスさんはムサスの街のことが好きです。だからムサスの街のために、頑張っている女性が好きなのかも……?」

言いかけて、言葉を途中で止める。
いや、普通に考えたら、そんな男はいないだろう。

急いで訂正しないと。

「おお、そうか! ザムスは『ムサスの街のために頑張っている女性が好き』なのか!」

だが遅かった。
目をキラキラさせながら、レイチェルさんは全身に覇気を漲らせている。

オレの間違った情報を、真に受けてしまったのだ。
急いで訂正しないと。

「あのーレイチェルさん……ん⁉」

――――その時だった。

周囲に“何か”の気配を感じる。
強い魔物の反応が、こちらに近づいているのだ。

急いで対応しないと。
まずはパーティーの皆に連絡だ。

「えーと……【念話】!」

遠距離系の通信の支援魔法を発動。
対象は《東方の黄昏たそがれ団》の三人と、あと一応レイチェルさんも。

「あー、あー、もしもし、聞こえていますか? ザムスさん、サラ、マリナ。魔物が近づいてきます。方角は東で、数は一体ですが、強めの魔力。この感じだと600秒後に、工事現場に到達します」

時間がないので、重要なことだけ簡潔に伝えておく。
みんなにちゃんと伝わったかな。

あれ?
でも返事がないな。

もしかして聞こえてないのかな?

でも、すぐにサラから返事がきた。

……『ちょ、ちょっと⁉ ハリト君の声が、急に聞こえてきたんでが、これはもしかして特殊魔法の【念話】ですか⁉』

おっ、よかった。聞こえていたみたいだ。

「うん、そうだよ。時間がなかったから、強制的に発動してごめんね。とにかく魔物が迫ってきている。あと、ザムスさんも、聞こえていますか?」

……『ああ、分かった。それなら作戦通り、東のポイントで全員合流だ』

おお、良かった。
ちゃんと聞こえている。
しかも冷静に指示を出してくれた。

流石に頼りになるリーダー様だ。

……『このハリトの【念話】の魔法も、久しぶりにね。私も了解。東のポイントに向かうわ!』

おお、マリナは慣れているから、対応が早い。
あとはサラだけかな?

……『えーと、私も了解です。でもハリト君、これ不気味すぎるので、【念話】は一度解除してもらってもいいですか? 私の心の声をハリト君に盗聴されているみたいで、心臓が止まりそうです、私は』

「あっ、そうか。ごめんね! それじゃ、全員分を解除するね。それじゃ東のポイントで!」

全員と連絡が取れたので、【念話】を解除する。
また必要な時は、オレが発動すれば問題ない。

――――そんな時、目の前にいたレイチェルさんが、プルプル震えていた。

「お、おい、今の声はなんだ? ザムスの声が急に、耳元に聞こえてきたんだが……」

あっ、そうか。
すっかり忘れていた。
この人も【念話】の対象内にしていたんだ。

ちゃんと説明しないと。

「……という訳でオレは支援魔術師で、魔物が近くまで接近しています。なので工事現場の人たちの避難の指示をお願いします。魔物は《東方の黄昏《たそがれ》団》で、何とかするので」

「ふう……そうか。未だに信じられないが、理解はした。それなら避難は任せておけ」

「ありがとうございます! それではオレも行ってきます!」

レイチェルさんと別れて、急いで東の合流ポイントに向かう。
自分に支援魔法で脚力アップもしておく。

お蔭でザムスさんとサラと同じタイミングで、合流できた。

「お待たせしました!」

「ハリト、魔物の動きはどうだ?」

「はい、変わらず東の方向から、こちらに向かってきます。あと180秒くらいです」

「ハリト君、まだ魔物の姿見えないのに、どうしてそこまで詳しく分かるのですか?」

「えっ、【探知】の支援魔法を使っているんだ。あっ、サラにもかけてあげようか?」

「い、いえ、今はけっこうです。逆に混乱してしまうので、魔物のタイミングと方向だけ教えてもらえたら助かります」

たしかに戦闘中は慣れない情報は、無い方がいい。

ザムスさんとサラは武器を構えて、戦闘態勢に入る。
そんな時、少し遅れて女弓士マリナが到着する。

「お待たせ! ハリト、魔物は、あっちから来るの?」

「うん、この感じだと飛行系の魔物かな? もうすぐ見えるはず」

「了解!」

マリナも弓矢を構える。
いつでも迎撃できる体勢だ。

東の空の方向を、四人で警戒していく。
……残り数十秒。

「ちなみにハリト君、魔物の種類は特定できますか?」

「えっ、種類、サラ? この距離だと分からないなー。でも、けっこう強めの魔物だよ」

「なるほどです。ん? ちょっと、待って下さい。“けっこう強め”ですか⁉ あのハリト君が⁉ ちなみに前の“一眼巨人サイクロプス”に比べたら、どうなんですか、今回のは?」

「えっ、前の一眼巨人サイクロプスは、あんまり強くない反応だったかな? それよりは上だよ。それがどうしたの、サラ?」

「いえ、それは、つまり“危険度ランクB上”だった一眼巨人サイクロプスより、上ということは……」

――――サラが言いかけた時だった。

目的の魔物が、遠くの空に姿を現す。

翼竜ワイバーンに似た、飛行系の魔物だ。

だが大きさと魔力の放出量は、翼竜ワイバーンとは桁違いに強い。

接近してくる魔物を見つめ、ザムスさんが小さくつぶやく。

「ちっ……ドラゴンか……まずいな」

接近してきくるのは最強の魔物の一種。

こうして危険度の最上位のドラゴンと、《東方の黄昏たそがれ団》は対峙するのであった。
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