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5話 ステータス画面

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「それでは、こちらへどうぞ」

 アーデルハイドさんが、扉に手を翳すと扉の中央部分に嵌まっていた黒い石が白い光を放つ。
 それは、蝋燭のみで照らされていた広場と階段の灯りを掻き消すほどの威力。
 そして明りと同時に、静かに両開きの扉が開いていく。
 扉が完全に音を立てずに開ききったあと、扉の先には暗闇ではなく光明が溢れていた。
 アーデルハイドさんが扉の先へと歩きだす。
 そのあとを、リーシャさんに背中を押される形で、俺も部屋の中へ入り追いかけていく。
 足を踏み入れた部屋の中は、光り輝く文字が一面に描かれていて六芒星と五芒星が重複して書かれているような変な魔法陣が存在していた。

「ここは……?」

 俺は不自然に思われないように前を歩くアーデルハイドさんに背中越しに話しかけた。
 すると彼女は部屋の中央に鎮座している直径1メートルほどの白く輝く丸い石の前に歩いていき、こちらへと振り返ると――、

「ここは、身分を証明するような場所です」

 ニコリと笑みを浮かべて俺にアーデルハイドさんは語りかけてくる。
 その表情に、半分は嘘だなと看破しながらも、アーデルハイドさんの横に浮いている白い球体に視線を向ける。
 
「(――さて、どうしたものか……)」

 心の中で毒づく。

「ささっ、カズマ様。まずは、お父様に会う前に身分の確認を行う習わしとなっておりますので、こちらの球に手を触れてください」
「なるほど……。身分確認は必要ですからね」
「はい。何も言わずにお連れしたことは、恩人の方に大変に失礼かと存じております。ただ――」
「大丈夫ですよ」

 俺はアーデルハイドさんに近づき白く光りを放つ球体に手を置く。
 それと同時に視界内にパネルが表示される。
 そこには、文字が表示されていた。

 ――異世界から渡ってきた者よ。汝には二つの道がある。一つは勇者として魔王を討伐し世界を平定する道。もう一つは、氷河期世代に得ることが出来なかった報酬をポイントとして得て自由に生きる道。どちらを選ぶ?
 
 それにしても表示されるが日本語なんだが……。
 町の中を馬車で移動していた時には見たことがない文字が使われていて読めなかった。
 とりあえず日本語で表示されていたことには感謝しよう。

「カズマ様。何か表示されましたか?」

 何か期待ある眼差しを向けてくるアーデルハイドさん。
 そういうイベントが起きそうな目を向けられると困るんだが。
 横目で、アーデルハイドさんを見たあと、俺は視界のテンプレートに表示される文字列を見ていく。

 とりあえず、勇者として生きる道は選びたくないな。
 面倒くさいし、何よりも身に危険があったら困る。
 それに、あまりにも大々的に強い力を喧伝するのも命を狙われるというのは物語の定番だ。
 
 ――勇者としてのスキルを手に入れる。
 ――一般人だが、氷河期世代の人間が本来得るはずだったお金をポイントとして手に入れる。

 二つの項目が――、選択肢が視界内のコンソールパネルに表示されている。
 俺は迷わず、一般人を選ぶ。

 ――無職を選択しました。
 ――クラスは無職になりました。
 ――ステータス画面を表示します。


 名前 朝霧 和馬
 レベル 1

 ステータス

 STR 100
 DEX 100
 CON 100
 WIS 100
 INT 68

 クラス 無職

 ポイント 120000000(端数は繰り上がり)

▽取得できるスキル

 隠蔽←NEW
 加速←NEW
 
 
 自分のステータスが、この世界の標準と照らし合わせて、どのくらいか分からないな。
 

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