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4話 勇者が召喚されたらしい
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リーシェさんと、城へと通じる跳ね橋を守っているであろう兵士が会話している。
距離は遠くて何を話しているのか分からないが。
「――なんだと? 勇者様が召喚されたというのは本当の話なのか?」
何か聞こえてきた。
小声で話しているというのに聞こえてきた。
意識を耳に集中する。
「まだ分からないが、アーデルハイド様は、そう仰られていた。まずは、本当に勇者なのか確認するために王城の地下転送陣に行きたいと思っている」
「分かった。勇者が本当に召喚されたというのなら、それが本当なら最近の魔物の活性化も説明がつく」
「任せた」
リーシャさんは短く男の兵士に告げると此方へと戻ってくる。
そんな彼女の後姿を見ていた男の兵士は、「ああ。お前もくれぐれも勇者様にバレないようにな。それにしてもヴァルキリー隊が壊滅するとは……」と、呟いていた。
もちろん、それも俺にはばっちり聞こえていた。
「待たせたな。カズマ」
「――いや、気にしないでほしい。それよりも、俺は、ここで一回別れたいと思っているんだが……」
「どうしてだ?」
「いや、冒険者ギルドに寄らないといけないことを思い出してな」
「ふむ。期限付きのクエストなどを受けていたということか?」
リーシャさんが、思案するかのような表情をしたあと、俺に確認するかのように話しかけてきた。
もちろん俺は小さく首肯する。
正直、勇者とか魔王とかそういう事に巻き込まれたくない。
そもそも俺は日本では一般人だったのだ。
そういう大層な問題事に巻き込まれるなんて死亡フラグにしかならない。
「カズマ」
「OKか?」
「――いや、王族が命を助けられていて何も礼を出さないというのは王族の沽券に関わる問題事だ。だから、冒険者ギルドの方には王家の方から連絡を入れておく。それで、問題はないな?」
問題は大有りだっ! と、叫びたくなったが、ここで断るのは逆に不自然だろう。
「そ、そうだな……」
どうしよう……。
何で、こんなことに――。
思わず額に手を置き心の中で溜息をついた。
馬車は、降りてきた跳ね橋を渡る。
そして王城内噴水広場前で馬車が停まった。
「では、カズマ。少し、待っていてくれ」
「ああ」
ダッシュして逃げたい気持ちを抑えながら、待っていると馬車から降りてくるアーデルハイドさん。
そのエスコートは、リーシャさんが行っていた。
「カズマ様! それでは、一緒に付いてきて頂けますか?」
「あ、はい」
歩き出したアーデルハイドさんと、兵士のリーシャさん。
その後ろを俺は付いていく。
城の中どころか、噴水広場ですら大勢の身なりのいい人たちから、俺を値踏みするような視線が向けらえている事には気が付いていた。
どうやら、俺が王女様の客人ということで興味を引いてしまったようだ。
そのことで、俺のことを誰だ? と、見てきているのだろう。
そのくらいは容易に想像がついた。
「どうかしましたか? カズマ様」
「いえ。随分と立派な城だと思いまして」
「ここは、他国の使者も通る場所ですので、それなりの調度品や細工を施しているのです」
「そうですか」
それなら豪奢な作りなのも理解は出来る。
「――では、カズマ様。こちらの階段を下ります」
螺旋状の階段を下りた先――、100段はあろうかという階段。
その先には、学校の体育館の半分ほどの広さがある広間が広がっており、奥の中央部には、高さ5メートルほどの扉が存在していた。
おそらく、これが地下転送陣というモノなのだろう。
何とかして一般人だと証明しないとな。
距離は遠くて何を話しているのか分からないが。
「――なんだと? 勇者様が召喚されたというのは本当の話なのか?」
何か聞こえてきた。
小声で話しているというのに聞こえてきた。
意識を耳に集中する。
「まだ分からないが、アーデルハイド様は、そう仰られていた。まずは、本当に勇者なのか確認するために王城の地下転送陣に行きたいと思っている」
「分かった。勇者が本当に召喚されたというのなら、それが本当なら最近の魔物の活性化も説明がつく」
「任せた」
リーシャさんは短く男の兵士に告げると此方へと戻ってくる。
そんな彼女の後姿を見ていた男の兵士は、「ああ。お前もくれぐれも勇者様にバレないようにな。それにしてもヴァルキリー隊が壊滅するとは……」と、呟いていた。
もちろん、それも俺にはばっちり聞こえていた。
「待たせたな。カズマ」
「――いや、気にしないでほしい。それよりも、俺は、ここで一回別れたいと思っているんだが……」
「どうしてだ?」
「いや、冒険者ギルドに寄らないといけないことを思い出してな」
「ふむ。期限付きのクエストなどを受けていたということか?」
リーシャさんが、思案するかのような表情をしたあと、俺に確認するかのように話しかけてきた。
もちろん俺は小さく首肯する。
正直、勇者とか魔王とかそういう事に巻き込まれたくない。
そもそも俺は日本では一般人だったのだ。
そういう大層な問題事に巻き込まれるなんて死亡フラグにしかならない。
「カズマ」
「OKか?」
「――いや、王族が命を助けられていて何も礼を出さないというのは王族の沽券に関わる問題事だ。だから、冒険者ギルドの方には王家の方から連絡を入れておく。それで、問題はないな?」
問題は大有りだっ! と、叫びたくなったが、ここで断るのは逆に不自然だろう。
「そ、そうだな……」
どうしよう……。
何で、こんなことに――。
思わず額に手を置き心の中で溜息をついた。
馬車は、降りてきた跳ね橋を渡る。
そして王城内噴水広場前で馬車が停まった。
「では、カズマ。少し、待っていてくれ」
「ああ」
ダッシュして逃げたい気持ちを抑えながら、待っていると馬車から降りてくるアーデルハイドさん。
そのエスコートは、リーシャさんが行っていた。
「カズマ様! それでは、一緒に付いてきて頂けますか?」
「あ、はい」
歩き出したアーデルハイドさんと、兵士のリーシャさん。
その後ろを俺は付いていく。
城の中どころか、噴水広場ですら大勢の身なりのいい人たちから、俺を値踏みするような視線が向けらえている事には気が付いていた。
どうやら、俺が王女様の客人ということで興味を引いてしまったようだ。
そのことで、俺のことを誰だ? と、見てきているのだろう。
そのくらいは容易に想像がついた。
「どうかしましたか? カズマ様」
「いえ。随分と立派な城だと思いまして」
「ここは、他国の使者も通る場所ですので、それなりの調度品や細工を施しているのです」
「そうですか」
それなら豪奢な作りなのも理解は出来る。
「――では、カズマ様。こちらの階段を下ります」
螺旋状の階段を下りた先――、100段はあろうかという階段。
その先には、学校の体育館の半分ほどの広さがある広間が広がっており、奥の中央部には、高さ5メートルほどの扉が存在していた。
おそらく、これが地下転送陣というモノなのだろう。
何とかして一般人だと証明しないとな。
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