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3話 王都に到着
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馬が、走り出し、景色がゆっくりと流れていく中、唐突に火柱が走り出した馬車の後方に見えた。
「――なっ!」
御者席の横で立ち上がり、後ろを見るがアーデルハイトさんが乗っている部分が邪魔をして視界が確保できないので見ることができない。
「カズマ。落ち着け」
「落ち着けって……」
「死体を焼いただけだ」
「焼いただけって……」
「死体は処理しなければ、アンデットになってしまう。だから、致し方ないのだ」
リーシャさんは赤い瞳で俺を見上げながら、そう自身を諭すかのように呟く。
そういえば、馬車の周りには数頭の馬が倒れていた。
馬の死体の数よりも、女兵士の死体の数が少なく感じたのは、もしかしたら馬が襲撃時に驚いて逃げたのかも知れない。
あくまでも俺の推測に過ぎないが。
「そうですか……」
俺はリーシャさんが座っている御者席の横に座り直す。
彼女も、同僚の兵士が亡くなったのだから、思うところがあったのだろうと、思考する。
「いえ。私も強い物言いになってしまってすまない」
前を見ながら素直に謝罪をしてくる女兵士のリーシャさんに、少し驚きながらも俺は「気にしないでください。同僚の方が亡くなったのですから」と、言葉を返す。
「そうか。気を使ってもらって申し訳なかった」
「いえ」
話が続かない。
そりゃ、この世界は俺の知っている世界ではないのだ。
さらに言えば、この世界の常識も分からない。
下手に会話をすれば、俺の話に矛盾が生じてしまい変な疑いを持たれてしまうかもしれない。
そうなると面倒ごとになるかも知れないと考えてしまいどうしても話が続かない。
なので自然と無言になってしまう。
「カズマ」
「何でしょうか?」
馬車は、サスペンションがないからなのか上下にガタガタと揺れる。
そんな中で、俺の方へと視線を向けてきたリーシャさんは口を開く。
「貴方は、どうして、あの場所に?」
この質問、アーデルハイドさんにもされたな。
やっぱり俺が襲われていた場所に居たのは普通に考えて気になるよな。
「野暮用で――」
「野暮用ですか? 何かのギルドのクエストで?」
「依頼については、守秘義務があるので」
「そうですか……。冒険者でしたら当然のことですね」
どうやら納得してくれたようだ。
2時間ほど、馬車は踏み固められた道を走り始める。
俺は、30分ほど経過した頃から、馬車の揺れにより気持ち悪くなり目を瞑ってグッタリとしていた。
「王都カーネルです」
気持ち悪い中、必死に吐き気を堪えていた俺の耳にリーシャさんの声がスッと入ってきた。
この世界が、どういう世界か分からない俺は、瞼を開けて馬車が向かう先へと視線を向ける。
「カズマ、あれがスメラギ王国の王都カーネルだ」
「へー」
もう精神的に摩耗していた俺は、そっけなく答える。
正直、相手しているだけで辛い。
車のサスペンションの偉大さが分かる。
「そっか……。やっと王都に――」
視線の先には、高い城壁しか見えないが――、否! 一つだけ高い建物がある。
それは赤い屋根を幾つも持つ中世ヨーロッパ風のお城。
海外出張で見たノイシュヴァンシュタイン城に似ている。
「あれが、アーデルハイド様の?」
「そうなる。王族が住まう城となる」
「なるほど……」
会話をしている間にも、俺たちが乗っている馬車は城壁に近づく。
城壁に近づくと、跳ね橋がある事に気が付く。
――ということは、跳ね橋の下には水があるのか……。
回らない頭で思考していると跳ね橋を馬車は渡る。
すると、城壁には両開きの高さ5メートルほどの両開きの鉄製の扉があり、開かれていた。
その開いている扉の向こうには中世ヨーロッパ風の街並みが広がっているのが見えた。
文明レベルとしては、中世ヨーロッパの暗黒時代ってところか……。
建物の建造物から大体の文明レベルを予測する。
以前に、文明を育てて戦をするというゲームをしていたので、そこからの知識だが、間違っていなければいいな。
馬車は、大勢の並んでいる人たちの横を通り過ぎる。
その際に、門を護衛していた兵士たちが啓礼していたので、おそらく王族の乗る馬車だから優先的に王都に入れたのだろうと予測する。
「カズマ、どうかしたか?」
「――いや」
俺は首を振って答える。
「まるで初めて、王都を見た農民のように見えたぞ」
「そ、そうか? そんなことない」
「まぁ、いいけど」
リーシャが手綱を握る馬車は、門を潜り抜けると王都に入る。
すると道を歩いていた人たちが足を止めて頭を下げてくる。
やっぱり馬車で誰が乗っているか判断しているようだ。
馬車は王都の中を走る。
10分ほどで王都の中心部に到着したあと、
「カズマ、私は門番に事のあらましを説明してくる。アーデルハイド様の護衛を頼むぞ?」
――と、短く俺に伝えると王城に繋がる跳ね橋の近くに立っていた兵士たちにリーシャさんは駆け寄った。
「――なっ!」
御者席の横で立ち上がり、後ろを見るがアーデルハイトさんが乗っている部分が邪魔をして視界が確保できないので見ることができない。
「カズマ。落ち着け」
「落ち着けって……」
「死体を焼いただけだ」
「焼いただけって……」
「死体は処理しなければ、アンデットになってしまう。だから、致し方ないのだ」
リーシャさんは赤い瞳で俺を見上げながら、そう自身を諭すかのように呟く。
そういえば、馬車の周りには数頭の馬が倒れていた。
馬の死体の数よりも、女兵士の死体の数が少なく感じたのは、もしかしたら馬が襲撃時に驚いて逃げたのかも知れない。
あくまでも俺の推測に過ぎないが。
「そうですか……」
俺はリーシャさんが座っている御者席の横に座り直す。
彼女も、同僚の兵士が亡くなったのだから、思うところがあったのだろうと、思考する。
「いえ。私も強い物言いになってしまってすまない」
前を見ながら素直に謝罪をしてくる女兵士のリーシャさんに、少し驚きながらも俺は「気にしないでください。同僚の方が亡くなったのですから」と、言葉を返す。
「そうか。気を使ってもらって申し訳なかった」
「いえ」
話が続かない。
そりゃ、この世界は俺の知っている世界ではないのだ。
さらに言えば、この世界の常識も分からない。
下手に会話をすれば、俺の話に矛盾が生じてしまい変な疑いを持たれてしまうかもしれない。
そうなると面倒ごとになるかも知れないと考えてしまいどうしても話が続かない。
なので自然と無言になってしまう。
「カズマ」
「何でしょうか?」
馬車は、サスペンションがないからなのか上下にガタガタと揺れる。
そんな中で、俺の方へと視線を向けてきたリーシャさんは口を開く。
「貴方は、どうして、あの場所に?」
この質問、アーデルハイドさんにもされたな。
やっぱり俺が襲われていた場所に居たのは普通に考えて気になるよな。
「野暮用で――」
「野暮用ですか? 何かのギルドのクエストで?」
「依頼については、守秘義務があるので」
「そうですか……。冒険者でしたら当然のことですね」
どうやら納得してくれたようだ。
2時間ほど、馬車は踏み固められた道を走り始める。
俺は、30分ほど経過した頃から、馬車の揺れにより気持ち悪くなり目を瞑ってグッタリとしていた。
「王都カーネルです」
気持ち悪い中、必死に吐き気を堪えていた俺の耳にリーシャさんの声がスッと入ってきた。
この世界が、どういう世界か分からない俺は、瞼を開けて馬車が向かう先へと視線を向ける。
「カズマ、あれがスメラギ王国の王都カーネルだ」
「へー」
もう精神的に摩耗していた俺は、そっけなく答える。
正直、相手しているだけで辛い。
車のサスペンションの偉大さが分かる。
「そっか……。やっと王都に――」
視線の先には、高い城壁しか見えないが――、否! 一つだけ高い建物がある。
それは赤い屋根を幾つも持つ中世ヨーロッパ風のお城。
海外出張で見たノイシュヴァンシュタイン城に似ている。
「あれが、アーデルハイド様の?」
「そうなる。王族が住まう城となる」
「なるほど……」
会話をしている間にも、俺たちが乗っている馬車は城壁に近づく。
城壁に近づくと、跳ね橋がある事に気が付く。
――ということは、跳ね橋の下には水があるのか……。
回らない頭で思考していると跳ね橋を馬車は渡る。
すると、城壁には両開きの高さ5メートルほどの両開きの鉄製の扉があり、開かれていた。
その開いている扉の向こうには中世ヨーロッパ風の街並みが広がっているのが見えた。
文明レベルとしては、中世ヨーロッパの暗黒時代ってところか……。
建物の建造物から大体の文明レベルを予測する。
以前に、文明を育てて戦をするというゲームをしていたので、そこからの知識だが、間違っていなければいいな。
馬車は、大勢の並んでいる人たちの横を通り過ぎる。
その際に、門を護衛していた兵士たちが啓礼していたので、おそらく王族の乗る馬車だから優先的に王都に入れたのだろうと予測する。
「カズマ、どうかしたか?」
「――いや」
俺は首を振って答える。
「まるで初めて、王都を見た農民のように見えたぞ」
「そ、そうか? そんなことない」
「まぁ、いいけど」
リーシャが手綱を握る馬車は、門を潜り抜けると王都に入る。
すると道を歩いていた人たちが足を止めて頭を下げてくる。
やっぱり馬車で誰が乗っているか判断しているようだ。
馬車は王都の中を走る。
10分ほどで王都の中心部に到着したあと、
「カズマ、私は門番に事のあらましを説明してくる。アーデルハイド様の護衛を頼むぞ?」
――と、短く俺に伝えると王城に繋がる跳ね橋の近くに立っていた兵士たちにリーシャさんは駆け寄った。
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