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正妻戦争(14)
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「正妻戦争の話は、神田様から聞いているかしら?」
見た目の姿はリルカの俺に、ニードルス伯爵が威圧的に話かけてきた。
俺と会話している時とは、まったく違った態度だ。
何というか刺々しい。
そんな感じだ。
俺は、ニードルス伯爵の言葉に頷く。
彼女が、どう言った経緯でこちらの内部分裂を行ったのか分からないが、俺にはエルナというサポートが居る。
それにソルティだって、一応はこちらの味方のはず……だ。
「それでは、リルカさん。一応、貴女は獣人ですから知っていらっしゃると思いますが正妻戦争について説明させていただきます」
「……」
「本来の正妻戦争は山などで行いますが、今回は避難が済んでいる街中で行います。そして、開始してからしばらくしてから合図音があります」
ニードルス伯爵が一度、話を区切ると同時に爆竹のような音が聞こえてきた。
「これが合図になります。この合図と共に、日が暮れるまで戦うことになります。そして! 最後まで立っている者が勝者になります! よろしいですね? ちなみに正妻戦争が始まりましたら、降りることは可能ですが、その際に敗北と見なされますので注意してください」
俺は彼女の言葉に頷く。
「――それでは、陣地を構えてください」
ニードルス伯爵の言葉と同時に、ニードルス伯爵から俺は離れる。
俺の身体強化の魔法では、獣人の身体能力よりも遥かに劣るからだが――。
「――ん?」
俺は妙な違和感に気がついた。
それは、エルナが俺に合流してこないことだ。
何故かエルナは、山猫族と狼族の幼女達と会話をしている。
そして、それを獣人の女たちが聞いているのだ。
「……ま、まさか……」
俺の脳裏に横切る。
それは……、エルナが敵の振りをして相手に取り入って俺の有利なように動こうとしているのではないのかと言う考えだ。
「――さすがリルカの妹のエルナだけはあるな」
俺は、エルナが味方でよかったと思った。
これで俺の勝算が少しだけ上がったように思える。
伯爵や獣人たちから離れて建物の中に隠れた。
2階建ての酒場ではあるが、俺の能力をフルに活用するには十分な場所。
「生活魔法発動!」
俺の手の中にスナイパーライフルが出現する。
もちろん、本物ではない。
極めて精巧に本物に近いように作られたエアガンだ。
もちろん弾頭も当たっても痛くはない。
せいぜい、威嚇で使える程度だろう。
だが、それで十分だ。
俺は肩にスナイパーライフルを担いだまま屋根の上に上がっていく。
そしてセッティングが終わったと、正妻戦争開始の合図と思われる爆竹音が聞こえてきた。
しばらくするとスコープ越しに狼族の女性達の姿が見えた。
どうやら、俺の匂いを辿って来ているようだ。
「――さて、今日の俺は少しばかりマジだぞ。手加減はする予定だが――、恨むなよ」
俺は銃口を彼女たちの足元に向けると同時に、トリガーを引いた。
空気の音と同時に、銃口から放たれた弾頭が狼族の女性達の足元に着弾し音を鳴らす。
それと同時に彼女たちは突然、足元で鳴った音に敏感に反応し足を止めた。
俺は、その様子を見ながら作戦どおりと微笑む。
さら続けて打った銃弾が次々と近づいてくる狼族の進行を静止させていく。
彼女たちは何が起きているのか分からないのだろう。
だが、その高い危険察知能力により、俺に近づくのが危険だと本能が理解したのか歩みを止めている。
「チャンス! 生活魔法発動!」
俺は、足を止めた狼族の女性達の足元に特大の穴を作り出すと同時に、パソコンの掃除でよく使っていたスライムを生み出す。
狼族の女性達は、突然足元が消えたことに動揺を見せると共に穴の中へと消えていった。
「まずは4人!」
きっと穴の中では地球産のパソコン掃除で使うスライムが落下衝撃を弱めたはず。
おそらく死人は出ていないだろう。
まあ、問題はスライムによりぐちょぐちょになっているくらいだ。
とくに問題はない。
俺は、屋根から下りたあと酒場の裏口から外へと出る。
「さて、あとはエルナを抜いて7人といったところか?」
敵対勢力の数を把握しつつ、俺は無人となった街中を走る。
石鹸により住民の避難が終わっている道を走りながら生活魔法を発動させる。
手の中に作り出したのは無数の小さな火薬が詰まった玉。
――所謂、かんしゃく玉というやつだ。
俺は走りながら、地面の上にかんしゃく玉をばら蒔きながら移動する。
そして十分にばら蒔いたのを確認したところで、無人となった建物の窓から、建物の中へ飛び込む。
「餌は十分にばらまいた」
俺は背中に背負っていたエアーガンと言う名のスナイパーライフルを取り出しBB弾を装填していく。
用意が終わったところで、俺は建物の2階へと上がる。
その際には、背を低くして移動していく。
「サバゲーの経験が役に立つとはな……」
2階に上がったところで生活魔法を発動。
手鏡を作りだし、木の窓の隙間から外を確認する。
「2人か?」
近づいてくるのは山猫族の女性達だ。
周囲を注意深く確認しながら一歩一歩確実に近づいてくる。
見た目の姿はリルカの俺に、ニードルス伯爵が威圧的に話かけてきた。
俺と会話している時とは、まったく違った態度だ。
何というか刺々しい。
そんな感じだ。
俺は、ニードルス伯爵の言葉に頷く。
彼女が、どう言った経緯でこちらの内部分裂を行ったのか分からないが、俺にはエルナというサポートが居る。
それにソルティだって、一応はこちらの味方のはず……だ。
「それでは、リルカさん。一応、貴女は獣人ですから知っていらっしゃると思いますが正妻戦争について説明させていただきます」
「……」
「本来の正妻戦争は山などで行いますが、今回は避難が済んでいる街中で行います。そして、開始してからしばらくしてから合図音があります」
ニードルス伯爵が一度、話を区切ると同時に爆竹のような音が聞こえてきた。
「これが合図になります。この合図と共に、日が暮れるまで戦うことになります。そして! 最後まで立っている者が勝者になります! よろしいですね? ちなみに正妻戦争が始まりましたら、降りることは可能ですが、その際に敗北と見なされますので注意してください」
俺は彼女の言葉に頷く。
「――それでは、陣地を構えてください」
ニードルス伯爵の言葉と同時に、ニードルス伯爵から俺は離れる。
俺の身体強化の魔法では、獣人の身体能力よりも遥かに劣るからだが――。
「――ん?」
俺は妙な違和感に気がついた。
それは、エルナが俺に合流してこないことだ。
何故かエルナは、山猫族と狼族の幼女達と会話をしている。
そして、それを獣人の女たちが聞いているのだ。
「……ま、まさか……」
俺の脳裏に横切る。
それは……、エルナが敵の振りをして相手に取り入って俺の有利なように動こうとしているのではないのかと言う考えだ。
「――さすがリルカの妹のエルナだけはあるな」
俺は、エルナが味方でよかったと思った。
これで俺の勝算が少しだけ上がったように思える。
伯爵や獣人たちから離れて建物の中に隠れた。
2階建ての酒場ではあるが、俺の能力をフルに活用するには十分な場所。
「生活魔法発動!」
俺の手の中にスナイパーライフルが出現する。
もちろん、本物ではない。
極めて精巧に本物に近いように作られたエアガンだ。
もちろん弾頭も当たっても痛くはない。
せいぜい、威嚇で使える程度だろう。
だが、それで十分だ。
俺は肩にスナイパーライフルを担いだまま屋根の上に上がっていく。
そしてセッティングが終わったと、正妻戦争開始の合図と思われる爆竹音が聞こえてきた。
しばらくするとスコープ越しに狼族の女性達の姿が見えた。
どうやら、俺の匂いを辿って来ているようだ。
「――さて、今日の俺は少しばかりマジだぞ。手加減はする予定だが――、恨むなよ」
俺は銃口を彼女たちの足元に向けると同時に、トリガーを引いた。
空気の音と同時に、銃口から放たれた弾頭が狼族の女性達の足元に着弾し音を鳴らす。
それと同時に彼女たちは突然、足元で鳴った音に敏感に反応し足を止めた。
俺は、その様子を見ながら作戦どおりと微笑む。
さら続けて打った銃弾が次々と近づいてくる狼族の進行を静止させていく。
彼女たちは何が起きているのか分からないのだろう。
だが、その高い危険察知能力により、俺に近づくのが危険だと本能が理解したのか歩みを止めている。
「チャンス! 生活魔法発動!」
俺は、足を止めた狼族の女性達の足元に特大の穴を作り出すと同時に、パソコンの掃除でよく使っていたスライムを生み出す。
狼族の女性達は、突然足元が消えたことに動揺を見せると共に穴の中へと消えていった。
「まずは4人!」
きっと穴の中では地球産のパソコン掃除で使うスライムが落下衝撃を弱めたはず。
おそらく死人は出ていないだろう。
まあ、問題はスライムによりぐちょぐちょになっているくらいだ。
とくに問題はない。
俺は、屋根から下りたあと酒場の裏口から外へと出る。
「さて、あとはエルナを抜いて7人といったところか?」
敵対勢力の数を把握しつつ、俺は無人となった街中を走る。
石鹸により住民の避難が終わっている道を走りながら生活魔法を発動させる。
手の中に作り出したのは無数の小さな火薬が詰まった玉。
――所謂、かんしゃく玉というやつだ。
俺は走りながら、地面の上にかんしゃく玉をばら蒔きながら移動する。
そして十分にばら蒔いたのを確認したところで、無人となった建物の窓から、建物の中へ飛び込む。
「餌は十分にばらまいた」
俺は背中に背負っていたエアーガンと言う名のスナイパーライフルを取り出しBB弾を装填していく。
用意が終わったところで、俺は建物の2階へと上がる。
その際には、背を低くして移動していく。
「サバゲーの経験が役に立つとはな……」
2階に上がったところで生活魔法を発動。
手鏡を作りだし、木の窓の隙間から外を確認する。
「2人か?」
近づいてくるのは山猫族の女性達だ。
周囲を注意深く確認しながら一歩一歩確実に近づいてくる。
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