僕と私の散歩部

九戸政景

文字の大きさ
1 / 4

プロローグ

しおりを挟む
 よく晴れた日、僕は外をゆっくりと歩いていた。手には携帯電話があり、その画面にはすこし長い文章とそれを吹き出しで言う可愛らしい女の子のミニキャラ、そして周囲の建物や道路などをデジタルで表した物とそれを歩く自分のアバターが表示されていた。


「今日も良い天気だなぁ……早穂さほさん、大丈夫? 疲れてない?」
「大丈夫ですよ、あゆむさん。今日も調子は良いですし、何より貴方とこうして“散歩部”の活動が出来るのが楽しいですから」
「それならよかった。でも、無理はしないでよ? 具合が悪くなってきたと思ったらちゃんと言ってね?」
「わかりました。はあ……それにしても、今日も本当に良いお天気ですね」


 早穂さんは空を見上げながら気持ち良さそうに笑みを浮かべる。歩きやすいように、そしてたとえ汚れても目立たないようにと考えられてと誂えられた上質な紺色のジャージを身に纏い、雪のように白くキメ細やかな肌やポニーテールにしているツヤツヤとした長く黒い髪が太陽の光を浴びるその姿は美術品のように美しく、そんな人とこうして一緒に歩いたり話したり出来る事が本当に幸せだと思えた。


「……本当に綺麗だな」
「え?」
「あっ、いや今日も早穂さんは綺麗だなと思ったらつい口に出て……」
「歩さん……ふふ、ありがとうございます。そういう歩さんだって初めてお会いした頃から凛々しく頼りになる方ですよ。あの日、歩さんと出会わなければ私はいつまでもお屋敷の中にいるだけで楽しい出来事にもこれまでお会いしてきたような素敵な方々にも出会う事はありませんでした。だから、私は歩さんに本当に感謝をしているんです。私を外へ連れ出して下さった事、そして私達の繋がりでもあるこのアプリケーションを紹介して下さった事も」


 早穂さんは上品な笑みを浮かべる。その姿が僕にはとても眩しく、そして美しく見えて頬がゆっくりと熱を持っていくのを感じた。


「見つけたのは偶然だったけどね。それに、早穂さんとの出会いが無かったら僕もこのアプリには手を出さなかったと思うし、こんなに楽しい日々を過ごす事もなかった。だから、本当にありがとう。僕に出会ってくれた事、そして僕に楽しい日々を与えてくれた事」
「歩さん……うふふ、こうしてお互いに褒めあってお互いに感謝をし合うというのは本当に気持ちが良いですね。私はこれからもこの関係を続けていきたいです」
「僕もだよ。大人になってもずっとこういう関係でいたいな」
「そうですね。では、散歩部の活動を再開しましょうか。改めて本日もよろしくお願いしますね、部長」
「こちらこそよろしく、副部長」


 二人で笑い合い、僕達はまた歩き始める。部長副部長と言い合った物のこの散歩部は僕達二人だけの部活動だし、どこかの学校で認可された物でもない。けれど、僕達にとっては大切な活動なのだ。


「そう、あの日からずっと大切なんだ」


 歩きながら僕は今日までの出来事を想起した。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする

夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】 主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。 そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。 「え?私たち、付き合ってますよね?」 なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。 「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。

まなの秘密日記

到冠
大衆娯楽
胸の大きな〇学生の一日を描いた物語です。

むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム

ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。 けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。 学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!? 大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。 真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。

鐘ヶ岡学園女子バレー部の秘密

フロイライン
青春
名門復活を目指し厳しい練習を続ける鐘ヶ岡学園の女子バレー部 キャプテンを務める新田まどかは、身体能力を飛躍的に伸ばすため、ある行動に出るが…

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

処理中です...