迷子を助けたら生徒会長の婚約者兼女の子のパパになったけど別れたはずの彼女もなぜか近づいてくる

九戸政景

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第二十六話

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「それでは皆さん、今後のわが社の発展を願って今宵は楽しんでいってください。乾杯! そしてハッピーハロウィン!」
『ハッピーハロウィン!』


 真宙さんの声に続いて俺達は手に持った飲み物を掲げてから近くにいた人達と乾杯をする。ここはとある高級ホテルのホールで、俺達が企画して手伝いもしたハロウィンパーティーが開催されていた。こんなに豪華なパーティーに参加した事はないし、用意してもらったスーツも高級そうな物だったので少し緊張しているが、同じくおめかしをした茉莉ちゃんやドレス姿の真夏さんもいるのでまだ安心していた。


「思ったより参加してくれた社員さんが多くてよかったですね。中には残念だけど予定が合わなくて参加出来ない人もいましたけど、その人達も次回があれば今度こそ参加したいと言ってくれていたみたいですから楽しみにはしてもらっていたみたいです」
「そうですね。それにしても、驚きました。一週間前にいきなりお父様とお母様からハロウィンパーティーをすると連絡が来たのですから。それに、それを発案してくれたのが冬矢さんと茉莉ちゃんだというのですから、嬉しさ半分申し訳なさ半分でしたよ」
「真夏さんは普段から頑張ってましたからね。これは息抜きとして楽しんでいってください」
「そうだよ、ママ。お勉強を頑張るのもいいけど、眉間がギューってなったりお顔をムーってしたりしてるとうまくいくものもうまくいかないからね」
「ふふ、そうですね。二人とも、本当にありがとうございます。今夜は目一杯楽しんじゃいますね」


 真夏さんが心からの笑顔を浮かべ、これだけでもこのパーティーは成功だと思っていると、そこに真宙さんと夏海さんが近づいてきた。


「冬矢君、茉莉ちゃん、本当にありがとう。社員のみんなも久しぶりにハメを外せる場が出来て楽しそうにしているよ」
「会社でのパーティーにしようという事を考えたのは夏海さんですけどね。まあでも、社員さん達の楽しみの場に出来てるのは本当によかったです。真宙さんと夏海さんも気分転換のために楽しんでくださいね」
「うん、もちろんだよ」
「ああ、そうそう。パーティーの最後には重大発表があるので楽しみにしていてくださいね」
「重大発表?」
「なんだろね?」
「さあ……」


 俺達が首を傾げる中、真宙さんと夏海さんは楽しそうに笑った。そして真宙さん達がいるのを見て、次々に社員さん達が挨拶をしにやってきた。専務や常務、各部の部長や各課の課長さんなどもいたし、上司に連れられて今年入ったばかりの新入社員さんなんかも挨拶に訪れていて、真宙さんや真夏さんに挨拶をした後に俺にもしっかりと挨拶をしてくれた。俺も挨拶は返したけれど、やっぱりこういう場の挨拶の仕方や礼儀作法などをもう少ししっかりと学んでおけばよかったかなと少しだけ思っていた。


「それにしても、ハロウィンパーティーと言う割には普通のパーティーのようにも見えますが、何かハロウィンらしいものがあるのでしょうか?」
「ああ、それなんだけどね」


 真宙さんが言ったその時、ホールの扉がゆっくりと開いて顔がついた白いカブの被り物をしたホテルマンさん達がカートを押しながら歩いてきた。


「あ、ジャック・オー・ランタンさんだ! それもいーっぱい!」
「本来は白いカブだからね。ただ、よーく見てごらん」
「え?」


 俺はよく目を凝らしてホテルマン達を見る。すると、その中に一人だけ白く塗られてカブっぽい形に加工されたカボチャの被り物をした人がいた。


「あっ、カボチャの被り物をしてる人もいますね」
「その通り。私達からのイタズラとしてあれを見つけられる社員がいるかという試みをしているんだ。しっかりとカブらしい形にしているからよーく見ないとやっぱり見つけられないし、このサプライズの中に何かを紛れ込ませているというのも考えづらい。夏海さんが考えてくれた物だけど、これは本当に面白いやり方だと思うよ」
「因みに、それを真宙さんに聞きに来るまでやらないと達成にはなりません。そしてそれを達成した人にはちょっとした贈り物が後である予定ですよ」
「へー! それじゃあパパもそれは貰えるの?」
「もちろんだよ。さてさて、他の社員達はいつになったら気づくかな」


 そう言う真宙さんはとても楽しそうで、いたずらっ子のような笑みを浮かべるその姿はとても親しみやすいものだった。そしてハロウィン仕様のごちそうを食べたり飲み物を飲んだりしながら楽しいパーティーの時間は少しずつ過ぎていき、そろそろ終わりの時間になろうとしていた時に真宙さんは俺と真夏さんを呼んでステージへと上がった。


「皆さん、今宵のパーティーは楽しんでもらえているでしょうか。そんな皆さんに重大発表があります」


 その言葉に会場がざわつく中、真宙さんは俺と真夏さんに手を握らせながら嬉しそうな顔をした。


「私共の娘である真夏ですが、この度こちらにいる父川冬矢君と婚約を致しました」
「……え? こ、ここでその発表を!?」
「そ、そのようですね」


 俺達が困惑する中、会場にいた人達はわっと沸き、その姿を見ながら真宙さんは笑顔を浮かべながら言葉を続けた。


「真夏が小さい頃にも助けてもらったのですが、今年の1月にも親戚の頼母木茉莉ちゃんが迷子になっていたところを冬矢君に助けてもらい、私はこれは運命だと感じて冬矢君とご両親に真夏との婚約の話を提案し、それを受けてもらいました。そして今は株式会社タノモギの社長である頼母木松也さんと副社長の結里さんの提案で、ご息女の茉莉ちゃんと真夏と一緒に暮らしてもらっていますし、その生活の質のよさは真夏達からも聞いています。皆さん、二人の今後の幸せな生活を願って盛大な拍手をお送りください!」


 その言葉の後に会場からは割れんばかりの拍手が送られる。嬉しいは嬉しいが、やっぱりどこか気恥ずかしい物があり、真夏さんも軽く俯きながら顔を赤くしていた。そして真宙さんは満足げに頷くと、俺にマイクを差し出してきた。


「冬矢君、よければ一言もらえないかな?」
「えっ……じゃ、じゃあ一言だけ……」
「頑張ってくださいね、冬矢さん」
「は、はい!」


 真夏さんの笑顔に元気付けられ、俺は真宙さんからマイクを受け取って深呼吸をしてから話し始めた。


「ご紹介に与りました、父川冬矢です。私自身は一般的な家庭の生まれですし、これまではこれといって優れたところもない人間でした。けれど、真夏さんと出会ってから私は変わりたいと思いました。どんな家庭でも関係なく、ただ私自身を求めてくれた真夏さんの想いに応え、いつかは真夏さんの隣にいても恥ずかしくない人間になりたいなと思ったんです」
「冬矢さん……」
「そして今は日々勉学や自分磨きに励んでいて、学校では真夏さんの後を継いで生徒会長にもなりました。でも、まだまだ足りないと思っています。なので、今後も真夏さんと共に歩みながら自分というものを成長させ、いつかは皆さんもこんな立派な人間の言葉を聞いたんだぞと自慢出来るような人間になっていきます。この度はこのパーティーに参加していただき本当にありがとうございます。最後の最後まで楽しんでください」


 俺が頭を下げると、会場中から大きな拍手が送られた。安心しながら頭を上げると、真宙さんと真夏さんは笑みを浮かべていた。


「とてもいい挨拶だったよ、冬矢君」
「かっこよかったですよ、冬矢さん」
「変な事を言ってしまわないか心配でしたけどね。でも、なんとかなってよかったです」
「ふふ、将来はウチの会社で働いてもらい、ゆくゆくは社長の座を継いでもらおうかな?」
「そ、それは……けど、頑張ってみたいです。色々な事に挑戦するのもいいことだと思いますし、そうなれるように頑張ろうと思います」
「それなら私は副社長になりましょうか。ふふ、楽しみですね」


 真夏さんはにこにこ笑っていたが、ふと何かを思い付いた様子で手を出してきた。


「ん……真夏さん、どうしました?」
「ハロウィンですからね。冬矢さん、トリック・オア・トリート」
「あ、たしかに。でも、お菓子はいま持ってなかったな……」
「それなら……」


 真夏さんは俺に顔を近づけてくると、静かに唇を押し当ててきた。


「んむっ……!?」


 突然の事に俺がびっくりする中、会場はまたわっと沸き、真夏さんは唇を離してからにこりと笑った。


「ふふっ、ちょっとイタズラしちゃいました」
「ま、真夏さん……」


 未だ驚きから覚めずにいたが、真夏さんの気持ちは嬉しかった。そしてその後、パーティーは終わり、社員さん達が見つけられなかった真宙さんのイタズラを見つけたという事で俺は景品として特製のジャック・オー・ランタンのフィギュアをもらった。それは俺の部屋の机の上に飾られ、それを見る度に俺はその日の楽しかった出来事を思い出す事が出来た。
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