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第二十八話
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「もう、二度と会う事はないと思ってたのにな」
「そうでしょうね。アタシは退学しててアンタはアタシには二度と関わらないと言った上に着信拒否までしてるんだもの」
「そもそもどうしてこんな時間にこんなところにいるんだ? お前の家はこっちじゃないだろ」
「……家を出たからよ」
「家を出た?」
「どうしてそんなことに?」
愛花はそっぽを向く。
「関係ないでしょ。現生徒会長で元生徒会長の腰巾着を続けてるアンタには」
「腰巾着って、お前なあ!」
愛花の言葉に憤りを感じる。これから母親になるという中でコイツは一切何も変わってないようだ。そんな奴にこれ以上関わってはいられない。
「……行きましょう、真夏さん。本当にこれ以上関わってもしょうがないみたいなので」
「いえ、待ってください」
「え?」
「愛花さん、でしたよね」
「そうですけど、あなたにだってアタシの事は関係な――」
憎まれ口を叩く愛花に対して真夏さんはふわりと笑うと、その体を静かに抱き締めた。
「えっ……」
「愛花さん、私はあなたの事を強い女性だと思っていますよ」
「な、何を言って……」
「だって、そうじゃないですか。自分が好きだと思っていた男性、それも成人の方から子供を孕まされてその人は逮捕されているというのに、それでもその子供に罪はないと考えて産もうとしてるのですから。私だったら耐えきれなくてそれすらも諦めているところです」
「そ、そんな事……」
「ただ、冬矢さんに対して憎まれ口を叩くのはダメです。冬矢さんはあなたに裏切られたり陥れられたりしていても最後に一度だけでもあなたを心配しようとしていた。あなたも冬矢さんのそういうところが好きだったのではないですか?」
「あ、アタシ、は……」
抱き締められながら愛花は口を開く。そしてその内にその目には涙が浮かび、少しずつ涙が流れ始めた。
「……家を出たのは、家族が信用出来ないから。そして、他に信頼出来る相手が出来たからです……」
「ご家族と相談なさった結果、退学をした上に出産を決めたと聞いていますが……」
「アタシもそのつもりでした。でも、ある時に聞いてしまったんです。両親が世間体を気にしてアタシに退学を勧めた事を」
「世間体を気にして?」
「アタシは本当は通いながら産みたかった。大変なのはわかってたし、苦労はするだろうけど友達と一緒にもっと学校に行きたかったし高校を出てた方が将来働く時にいいと思ったから。でも、両親は……あの人達は、妊婦になった自分の娘が学校に通っていたら世間から変に注目されて保護者としてなってないって後ろ指を指されるのが嫌だったからアタシを学校から遠ざけた。あの人達は、アタシの事よりも自分達の事が大事だった……!」
愛花は泣きながら言う。その涙は身近なはずの両親への失望と悔しさ、そして裏切られた怒りと悲しみから流れているようだった。
「だから、アタシは妊娠中でも働ける方法がないかなと思って探した。そんな時に出会ったのが今の彼。まだアタシと同じ未成年の大学生で、家も特別裕福ではないけど、彼と彼の両親はアタシの話をしっかり聞いた上で力になってくれる事を約束してくれた。ウチの両親と話した上でアタシを住まわせてくれたり妊娠中で辛かったりする中でも献身的なサポートをしてくれた。アタシに甘い言葉をささやいて自分の性欲の捌け口にしてきただけの学原先生や自分達の保身しかしない両親みたいな人達は違う。彼と彼の両親だけがアタシにとって信頼出来るの……」
「そんな出会いがあったんですね」
「だけど、やっぱり悔しかった。アタシが捨てて気持ちがどん底にいるはずの冬矢が生徒会長に気に入られたり自分自身も生徒会長になったりしながら少しずつ周囲に認められていくのがどうにも許せなかった。どうして冬矢だけは周囲の人に恵まれて、アタシは周りから辛い思いをさせられないといけないのかっていつも思ってた。アタシが捨てた奴の方が幸せそうにしているのがどうしても憎かった……!」
「愛花……」
正直、俺は真夏さんみたいに愛花に対して親身にはなれない。裏切られたり危うく周囲からの評価を下げられそうになったりしたのだからコイツの事を俺は一生許せないだろう。けど、コイツも身近な相手から裏切られるという経験を積んだ。それならコイツは今後の人生で誰かを裏切る事はないと思う。その痛みを身を持って知ったのだから。
「俺はお前と二度と関わらないという考えは改めない。それだけの事をお前がしてきたんだからな」
「うん……」
「けど、真夏さんがもしもお前の力になりたいって思うならそれは止めない。止める権利は俺にはないし、真夏さんの誰かを想う気持ちを縛るのは婚約者としてよくないからな」
「婚約者……そっか、アンタと田母神先輩は婚約者になったんだ」
「ああ。俺は一生かけて真夏さんを支えて愛していくし、絶対に裏切りはしない。それは婚約者だからというだけじゃない。真夏さんの事を女性として、そして一人の素敵な人間として愛してるからな」
「冬矢さん……」
真夏さんが嬉しそうな声で言う。それを聞いていた愛花はふうと息をついてから目を閉じた。
「……冬矢、今さらだとは思うけどこれだけは言わせて」
「ああ」
「学原先生の口車に乗せられてアンタを捨てたり友達を利用してアンタを周囲から孤立させようとしたりして本当にごめんなさい。アンタはアタシに結構色々尽くそうとしてくれてから、捨てたとしてもまだアタシを好きだと思ってたし、何かあれば利用出来ると思って何度も声をかけたの。でも、それは間違いだった。アンタのアタシへの気持ちはもう冷めてたし、アンタには田母神先輩っていう最高の婚約者がいる。だからアンタは田母神先輩を手放そうとしないで。アタシみたいな間違いは犯さないで」
「……もちろんだ」
愛花の言葉の重みを感じながら俺は答えた。その後、真夏さんが愛花と連絡先を交換してから俺達は別れ、俺は真夏さんと一緒に再び駅に向かって歩き始めた。
「なんというか、デートの最後に思わぬ出来事がありましたね」
「はい。けれど、愛花さんに出会えてよかったと思います。しっかりと彼女の気持ちも聞けましたし、今の彼女には信頼出来る相手もいる。これなら彼女も幸せな毎日を送る事が出来るはずです」
「そうですね」
歩きながら答えていたその時だった。
「冬矢さん」
立ち止まりながら真夏さんが静かに言う。その声は真剣な物で、俺は静かに立ち止まった。
「なんですか?」
「私達も愛花さんに負けないくらいに幸せになりましょうね。さっきの冬矢さんからの告白、とても嬉しかったですし、私も冬矢さんなら信頼出来ると常日頃から思っていますから」
「……もちろんです。俺も真夏さんの事を心から信頼してますし、一生かけて幸せにするつもりです。そんな人を裏切るわけはないですし、幸せにしないとバチが当たりますから」
「あの両家の両親や茉莉ちゃんだけではなく、八幡宮の神様達からも怒られてしまいますからね。冬矢さん、私もあなたの事を男性として、そして一人の素晴らしい人間として愛していますよ」
「はい、ありがとうございます。真夏さん、俺の隣をいつまでも歩いていてくださいね」
「はい、もちろんです」
俺達は笑い合う。真夏さんの言う通り、愛花と出会えてよかったのかもしれない。これで俺達の絆はもっと強固になったし、お互いに愛情が深まったのだから。そうして俺達は電車に乗って家の最寄駅まで着いた後、そのままお屋敷へと帰った。玄関の扉を開けると、そこには真宙さんと夏海さん、そして茉莉ちゃんの姿があった。
「パパ、ママ、おかえりなさい!」
「ただいま、茉莉ちゃん」
「茉莉ちゃん、ただいま。真宙さんも夏海さんも茉莉ちゃんのお世話をしていただきありがとうございました」
「構わないよ。茉莉ちゃんはいい子にしていたし、私達も楽しかったからね」
「そうですね。それにしても……」
夏海さんは俺達をしげしげと見つめてから安心したように笑った。
「二人とも、この一日でなんだか成長したみたいですね」
「はい。とてもいい一日になりました」
「そうですね。あ、そうだ……お留守番してくれた茉莉ちゃんと茉莉ちゃんのお世話をしてくれていた真宙さん達にお土産があるんだった」
「お土産!? なになに!?」
「ふふ、慌てなくても大丈夫だよ」
目を輝かせる茉莉ちゃんを見ながら俺達は笑った。その後、俺達は三人にそれぞれのお土産を渡した後にみんなで食べられるようにと思って買っておいたお菓子を食べながら今日の出来事を話し、大切な人達に囲まれながら想われる事の幸せを静かに噛み締めた。
「そうでしょうね。アタシは退学しててアンタはアタシには二度と関わらないと言った上に着信拒否までしてるんだもの」
「そもそもどうしてこんな時間にこんなところにいるんだ? お前の家はこっちじゃないだろ」
「……家を出たからよ」
「家を出た?」
「どうしてそんなことに?」
愛花はそっぽを向く。
「関係ないでしょ。現生徒会長で元生徒会長の腰巾着を続けてるアンタには」
「腰巾着って、お前なあ!」
愛花の言葉に憤りを感じる。これから母親になるという中でコイツは一切何も変わってないようだ。そんな奴にこれ以上関わってはいられない。
「……行きましょう、真夏さん。本当にこれ以上関わってもしょうがないみたいなので」
「いえ、待ってください」
「え?」
「愛花さん、でしたよね」
「そうですけど、あなたにだってアタシの事は関係な――」
憎まれ口を叩く愛花に対して真夏さんはふわりと笑うと、その体を静かに抱き締めた。
「えっ……」
「愛花さん、私はあなたの事を強い女性だと思っていますよ」
「な、何を言って……」
「だって、そうじゃないですか。自分が好きだと思っていた男性、それも成人の方から子供を孕まされてその人は逮捕されているというのに、それでもその子供に罪はないと考えて産もうとしてるのですから。私だったら耐えきれなくてそれすらも諦めているところです」
「そ、そんな事……」
「ただ、冬矢さんに対して憎まれ口を叩くのはダメです。冬矢さんはあなたに裏切られたり陥れられたりしていても最後に一度だけでもあなたを心配しようとしていた。あなたも冬矢さんのそういうところが好きだったのではないですか?」
「あ、アタシ、は……」
抱き締められながら愛花は口を開く。そしてその内にその目には涙が浮かび、少しずつ涙が流れ始めた。
「……家を出たのは、家族が信用出来ないから。そして、他に信頼出来る相手が出来たからです……」
「ご家族と相談なさった結果、退学をした上に出産を決めたと聞いていますが……」
「アタシもそのつもりでした。でも、ある時に聞いてしまったんです。両親が世間体を気にしてアタシに退学を勧めた事を」
「世間体を気にして?」
「アタシは本当は通いながら産みたかった。大変なのはわかってたし、苦労はするだろうけど友達と一緒にもっと学校に行きたかったし高校を出てた方が将来働く時にいいと思ったから。でも、両親は……あの人達は、妊婦になった自分の娘が学校に通っていたら世間から変に注目されて保護者としてなってないって後ろ指を指されるのが嫌だったからアタシを学校から遠ざけた。あの人達は、アタシの事よりも自分達の事が大事だった……!」
愛花は泣きながら言う。その涙は身近なはずの両親への失望と悔しさ、そして裏切られた怒りと悲しみから流れているようだった。
「だから、アタシは妊娠中でも働ける方法がないかなと思って探した。そんな時に出会ったのが今の彼。まだアタシと同じ未成年の大学生で、家も特別裕福ではないけど、彼と彼の両親はアタシの話をしっかり聞いた上で力になってくれる事を約束してくれた。ウチの両親と話した上でアタシを住まわせてくれたり妊娠中で辛かったりする中でも献身的なサポートをしてくれた。アタシに甘い言葉をささやいて自分の性欲の捌け口にしてきただけの学原先生や自分達の保身しかしない両親みたいな人達は違う。彼と彼の両親だけがアタシにとって信頼出来るの……」
「そんな出会いがあったんですね」
「だけど、やっぱり悔しかった。アタシが捨てて気持ちがどん底にいるはずの冬矢が生徒会長に気に入られたり自分自身も生徒会長になったりしながら少しずつ周囲に認められていくのがどうにも許せなかった。どうして冬矢だけは周囲の人に恵まれて、アタシは周りから辛い思いをさせられないといけないのかっていつも思ってた。アタシが捨てた奴の方が幸せそうにしているのがどうしても憎かった……!」
「愛花……」
正直、俺は真夏さんみたいに愛花に対して親身にはなれない。裏切られたり危うく周囲からの評価を下げられそうになったりしたのだからコイツの事を俺は一生許せないだろう。けど、コイツも身近な相手から裏切られるという経験を積んだ。それならコイツは今後の人生で誰かを裏切る事はないと思う。その痛みを身を持って知ったのだから。
「俺はお前と二度と関わらないという考えは改めない。それだけの事をお前がしてきたんだからな」
「うん……」
「けど、真夏さんがもしもお前の力になりたいって思うならそれは止めない。止める権利は俺にはないし、真夏さんの誰かを想う気持ちを縛るのは婚約者としてよくないからな」
「婚約者……そっか、アンタと田母神先輩は婚約者になったんだ」
「ああ。俺は一生かけて真夏さんを支えて愛していくし、絶対に裏切りはしない。それは婚約者だからというだけじゃない。真夏さんの事を女性として、そして一人の素敵な人間として愛してるからな」
「冬矢さん……」
真夏さんが嬉しそうな声で言う。それを聞いていた愛花はふうと息をついてから目を閉じた。
「……冬矢、今さらだとは思うけどこれだけは言わせて」
「ああ」
「学原先生の口車に乗せられてアンタを捨てたり友達を利用してアンタを周囲から孤立させようとしたりして本当にごめんなさい。アンタはアタシに結構色々尽くそうとしてくれてから、捨てたとしてもまだアタシを好きだと思ってたし、何かあれば利用出来ると思って何度も声をかけたの。でも、それは間違いだった。アンタのアタシへの気持ちはもう冷めてたし、アンタには田母神先輩っていう最高の婚約者がいる。だからアンタは田母神先輩を手放そうとしないで。アタシみたいな間違いは犯さないで」
「……もちろんだ」
愛花の言葉の重みを感じながら俺は答えた。その後、真夏さんが愛花と連絡先を交換してから俺達は別れ、俺は真夏さんと一緒に再び駅に向かって歩き始めた。
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「はい。けれど、愛花さんに出会えてよかったと思います。しっかりと彼女の気持ちも聞けましたし、今の彼女には信頼出来る相手もいる。これなら彼女も幸せな毎日を送る事が出来るはずです」
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「はい、もちろんです」
俺達は笑い合う。真夏さんの言う通り、愛花と出会えてよかったのかもしれない。これで俺達の絆はもっと強固になったし、お互いに愛情が深まったのだから。そうして俺達は電車に乗って家の最寄駅まで着いた後、そのままお屋敷へと帰った。玄関の扉を開けると、そこには真宙さんと夏海さん、そして茉莉ちゃんの姿があった。
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「そうですね。それにしても……」
夏海さんは俺達をしげしげと見つめてから安心したように笑った。
「二人とも、この一日でなんだか成長したみたいですね」
「はい。とてもいい一日になりました」
「そうですね。あ、そうだ……お留守番してくれた茉莉ちゃんと茉莉ちゃんのお世話をしてくれていた真宙さん達にお土産があるんだった」
「お土産!? なになに!?」
「ふふ、慌てなくても大丈夫だよ」
目を輝かせる茉莉ちゃんを見ながら俺達は笑った。その後、俺達は三人にそれぞれのお土産を渡した後にみんなで食べられるようにと思って買っておいたお菓子を食べながら今日の出来事を話し、大切な人達に囲まれながら想われる事の幸せを静かに噛み締めた。
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