最悪最凶の現代令嬢~幼馴染みを盗られた私が悪役令嬢になるまで~

九戸政景

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第十二話

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『へえ……そんな事もあるんだな』

 夜、『花刻』のチャットルームに入ってみると、『ユウ』さんと『レイ』さんが既に来ていて、挨拶をしてから日中の事を話すと、『ユウ』さんからはそんな返事が来て、続けて『レイ』さんからのメッセージも表示された。

『アン的にはやっぱり驚いた?』
『驚きましたよ。リンさんは一人称は僕でしたけど、女の人でも自分を僕って呼ぶ人はいるイメージだったので、リンさんは女の人だと思ってましたし』
『結果、男だった上に思わぬオフ会になったわけか。けど、それって話して良かったのか?』
『あ、はい。リンさんからは話しても良いって言われてますし、今日は自分が来られない分をその話で盛り上げてくれると嬉しいって言われました』

 夕方頃、『リン』さん、凛音さんと一緒に思わぬ展開に驚いていた時、何も知らない凛斗君はトイレから戻ってきた後に私達の様子を見て何があったのかと訊いてきた。
それに対して私達がお互いが同じチャットルームのメンバーだった事を話すと、凛斗君も驚いてはいたけれど、それなら凛音さんとチャットルームだけじゃなくリアルの方でも関わって欲しいと頼まれて、私達は連絡先を交換し、私の家まで荷物を運んでもらった後に解散した。
本当は買い物に付き合ってもらったお礼として家でお茶でも飲んでいってもらいたかったけど、夜には家族揃って出掛ける用事があるとの事だったので残念だけどそれは次回に持ち越して、こうして凛音さんがいない状態だけど、日中の出来事を二人にも話したのだった。

『まあ、本人達が話しても良いって判断したなら良いか。それにしても、チャットルームで繋がった相手と翌日にリアルでも繋がって、お互いに異性と来たか……ゲームや漫画ならそこから恋愛に発展してもおかしくないけど、二人は特にそういう気はないんだよな?』
『そうですね……私もリンさんもお互いに恋愛で痛い目を見た者同士ですし、しばらく恋愛は良いかなと思ってます。たしかにリンさんはカッコいい人でしたけど、女性に対して恋心を抱けなくなってる状態なのに、恋愛に発展させようとしてもリンさんもその気持ちには応えられないと思いますし、私も異性だけじゃなく家族や皆さん以外の人にはちょっと心を開けないので……』
『でも、私達にはこうして色々話してくれるし、その弟君からのお願いだったとしてもリンとも連絡先は交換してるんだね。それはなんで?』
『うーん……皆さんの場合は、面と向かって話していないからっていうのがあるかもしれないです。たしかにお二人とも現実にいる人で家族とは違う他人ではありますけど、このチャットルームの雰囲気はどこかあたたかくて安心するんです。
リンさん達の場合もなんだか色々話しても大丈夫って思わせるような安心感があって、これからも機会があったらご飯くらいなら行っても大丈夫かなと思ってます』
『そうか……なんだかそう言ってもらえるのって嬉しいな』
『うん、同感。でも、よくよく考えたらリンだけずるい気がする。だから、私も機会があったらアンとリアルで会ってオフ会がしたい』
『あー……たしかにすぐには無理でもそういうのはやりたいよな。まあ、男女二人ずつだからパッと見はダブルデートみたいになってるけどな』
『ダブルデート……その場合、私だけなんだか浮いちゃいそうですね。皆さんは大学生だけど、私は高校生ですから背丈も雰囲気の幼さも一人だけ浮く気がします……』

 大人っぽいイメージの三人の中にいる私を想像して少し落ち込んでいると、『レイ』さんからのメッセージが表示された。

『それなら、アンも大人っぽい人になればいいと思う』
『私が……大人っぽく……?』
『ああ、たしかにそうだな。リンと弟君からアドバイスを貰って服やメイク道具を選んできたんだろ? だったら、それを駆使して誰もが振り向く程の大人っぽい高校生になればいいんだよ。周囲からの視線を独り占めするくらいにな』
『そ、そこまで出来ますかね……』
『それはアンの頑張り次第。後は立ち居振舞いも学んで語彙は増やしても良いと思う』
『立ち居振舞いと語彙力……』
『それは俺も同感だな。一個一個の所作が綺麗だったり上品さを感じさせるような動きだったりするとなんだか大人っぽい感じはするし、嫌みっぽく知識をひけらかすようにしなければ色々な言葉を知ってる人は感心されるからな』

 それを聞いて、私はアンジェリカの言葉を思い出した。アンジェリカも礼儀作法や立ち居振舞いを私に身に付けさせようとしてくれていて、日中も語彙は増やしておいた方が良いと言っていた。
そして、『ユウ』さんと『レイ』さんも同じ事を言っている。それはやっぱり大切な事だから。私が悪役令嬢になるためだけじゃなく、その方が人生を生きていく中で大切な事で、それが出来ている大人は色々な人から頼られたり憧れられたりする。別にそれを望んではいないけど、ここまで言われる事なら、私はちゃんとやりたい。

『……そうですね。私、頑張ってみます。元々、コツコツとやるのは好きですし、成果が目に見えてわかるのは楽しいですから』
『うん、それが良いと思う』
『だな。さて……今日もだいぶ喋ったし、そろそろお開きにするか』
『そうですね。それじゃあ、おやすみなさい』
『うん、おやすみ』
『おやすみー』

 そこで今日のチャットは終わり、私は携帯電話を枕元に置いてからベッドの上に仰向けになる。

「はあ……思わぬ展開になったけど、凛音さんと凛斗君に出会えたのは良かったかも。アンジェリカはどう思う?」
『……ええ、私も良いと思います。お互いに恋に対して距離を置いている者同士ですから、情欲に身を焼かれる事も中々起きないと思いますし、今日のように異性からのアドバイスを聞くためや少しずつ異性とのつきあい方について学んでいくための特訓相手にも相応しいと思っています』
「うん、そうだよね」
『なので、そろそろ次のステップに参りましょうか』
「次のステップ……ああ、とりあえず服とメイク道具は買ったからね。それで、次のステップって何なの?」
『それは明日教えます。ですので、今日はもう寝ておきなさい。昨夜は話が盛り上がりすぎて夜更かしをしていましたが、美容のために夜更かしをするのは止めた方が良いですから』
「まあ、たしかにそうだね。よし……今日はまだ日を跨いでない時間帯だし、そろそろ寝ようかな。それじゃあおやすみ、アンジェリカ」
『ええ、おやすみなさい、梨花』

 アンジェリカとおやすみを言い合った後、私は部屋の電気を消した。そして再びベッドの上に寝転がり、毛布をしっかりとかけてから静かに眠り始めた。
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