婚約破棄と溺愛のアンソロジー[短編集]

イアペコス

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残響のワルツと、始まりのプレリュード

終章:始まりのプレリュード

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季節は巡り、冬が訪れた。
キャスピアン・ラ・ヴェルハルト大公の居城である『冬の宮殿』の窓からは、白銀に染まった世界が一望できた。

「綺麗……。まるで宝石箱のようだわ」
暖炉の炎に照らされながら、私は窓の外の景色に見惚れていた。
背後から、たくましい腕が優しく私を包み込む。
「君の方が、ずっと綺麗だよ、セラフィナ」
耳元で囁かれた甘い声に、私は心地よく目を閉じた。

あの日、アラリックと再会した後、私はキャスピアンに全てを話した。
彼は何も言わず、ただ、私が落ち着くまでそばにいてくれた。
そして、私の心が完全に過去から解き放たれたことを悟ると、彼は言ったのだ。
「セラフィナ。改めて、私と結婚してほしい。私のパートナーとして、私の妻として、私の全てになってほしい」
私は、涙を流しながら、何度も頷いた。

私たちの結婚式は、盛大でありながら、心のこもった温かいものだった。
そして今、私たちは二人きりで、新しい人生の始まりを祝っている。

「キャスピアン様」
「なんだい?」
「……幸せです。こんなに満たされた気持ちになったのは、生まれて初めて」
「私もだよ。私の凍てついた世界は、君という太陽を得て、ようやく春を迎えた」

彼は私をくるりと向かい合わせると、その青い瞳でまっすぐに見つめた。
「約束しよう。私は生涯、君を愛し、君を尊重し、君の望む全てのものを与えよう。君が望むなら、星すらもその手に」
「ふふ、星は自分の手で掴みますわ。貴方が隣にいてくだされば、きっと」
私たちの間に、言葉はもう必要なかった。

唇が重なり、魂が溶け合う。
あの夜会で始まった婚約破棄という名の『残響のワルツ』は、終わりを告げた。
そして今、私たちのための、輝かしい未来への『始まりのプレリュード』が、高らかに奏でられている。

私の手の中には、もう金鍍金の鳥籠はない。
あるのは、どこまでも広がる大空へと羽ばたくための、力強く、そして愛に満ちた翼だけだった。
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