氷の薔薇は愛に目覚める~婚約破棄された令嬢と救国の王子~

イアペコス

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囚われの騎士と偽りの告白 1

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エドワード王太子の非情な号令一下、アルカディア王国の討伐軍は、まるで飢えた狼の群れのように、エルム村の貧弱な防衛線へと牙を剥いた。鬨の声と、剣戟の音、怒号と悲鳴が入り乱れ、平和だった村は一瞬にして地獄の戦場へと変貌した。
エリザベスは、老騎士ゲルハルトと共に、館の屋上から、必死の形相で戦うシルヴァリアの護衛兵たちと、農具を手に、恐怖を押し殺して立ち向かう村の男たちの姿を、胸を締め付けられる思いで見つめていた。彼女が事前に練り上げた防衛戦略――村の地形を利用した巧妙な罠や、少数で多数を翻弄するための陽動作戦――は、緒戦においては驚くほどの効果を発揮し、討伐軍の進撃を一時的に食い止めることに成功していた。シルヴァリアの兵士たちは、その卓越した武勇と統率力で、数の不利を補い、村の男たちも、愛する家族と故郷を守るという一心で、獅子奮迅の働きを見せていた。

しかし、その奮戦も、圧倒的な兵力差の前には、長くは続かなかった。討伐軍は、次々と新たな兵を投入し、波状攻撃を仕掛けてくる。エルム村の防衛線は、徐々に、しかし確実に後退を余儀なくされ、シルヴァリアの兵士たちの中にも、傷つき倒れる者が出始めた。村の男たちも、その多くが戦闘の素人であり、その抵抗は、もはや絶望的なまでの勇気と犠牲の上に成り立っていた。
エリザベスの心は、目の前で繰り広げられる、あまりにも残酷で不公平な戦闘の光景に、引き裂かれそうだった。自分のために、これほど多くの人々が血を流し、命を危険に晒している。その事実に、彼女は耐え難いほどの罪悪感と無力感を覚えていた。
(私が…私がここにいなければ…この村の人々は、こんな目に遭わずに済んだのかもしれない…)
そんな、自己否定の囁きが、悪魔のように彼女の心の隙間に忍び寄ろうとする。
その時、戦況をさらに絶望的なものにする、最悪の知らせがもたらされた。
王都から、ルシアンがエリザベスを救出するために、そしてオルダス公爵の陰謀を暴くための決定的な証拠を携えて、少数の精鋭と共にエルム村へと急行しているという情報が、オルダス公爵の手に渡ってしまったのだ。オルダス公爵は、この千載一遇の機会を逃さず、街道の途中に巧妙な伏兵を配置し、ルシアンの一隊を奇襲した。
不意を突かれたルシアンたちは、圧倒的な数の敵に包囲され、激しい戦闘の末、ルシアン自身も深手を負い、側近の騎士たちと共に捕らえられてしまったというのだ。そして、その報は、まるで勝利を誇示するかのように、エドワード王太子の陣営から、エルム村へと伝えられた。
「反逆者エリザベスに告ぐ!貴様と共謀せしシルヴァリアのルシアン王子は、我が軍の手中にあり!これ以上の無益な抵抗を続けるならば、ルシアン王子の命はないものと心得よ!」
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