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16話 容易く死ぬ世界
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「いやぁ、最後のはヒヤっとさせられましたにゃ」
「最後のはすんごく怖かったですにゃ」
ごまかすように頭を掻くモーディーンさんに恨みがましく言って差し上げると、そのとがった猫耳が下に垂れた。
「面目ないですにゃ……」
「冗談です」
こちらも本気で怒っている訳ではないため、これはただの意趣返し。
勝負で負けておいて口で仕返しとかダサすぎる……。
「ですが、とても貴重な経験をさせて貰いました。ありがとうございます」
俺は頭を下げ礼を述べた。
俺達にあるボーナススキルの殆どが〈便利系スキル〉で、〈使えば相手は必ず死ぬ〉〈どんな攻撃も無効化する〉のようなチート級のぶっ飛んだものなんて一つも無い。
恐らく危機管理をきちんとせず、相手が現地人だからと油断すると簡単に死にかねない世界。
上には上が居るし、魔物相手に無茶をすれば、命がいくつあっても足りはしない。
それをモーディーンさんは身をもって教えてくれた。
金貨100枚積まれるよりも価値のある一戦は、どれほど感謝してもし足りないくらいに有意義なものだ。
「君は素直で良い人ですにゃ。君のような人になら安心して姪を任せることが出来そうですにゃ」
「あたしも駆け出し冒険者のような身なりの奴を一方的に追い詰める弟を持って幸せだよ」
「これまた耳が痛いですにゃ」
俺達の元に来たベラーナさんの辛辣な言葉に、またもモーディーンさんの耳が垂れ下がる。
そのベラーナさんとジスタさんの隣には、いつの間にやらリシアやローザ、バルナックさん達も居た。
他にも何人かギャラリーが増えている。
こんな大勢に俺がのど元に剣を突きつけられ降参するみっともない姿を見られていた訳だ。
鬱だ……。
「トシオ様、大丈夫ですか?」
「大丈夫、心配してくれてありがとね」
不安な表情を浮かべるリシアに笑顔で答える。
その隣で同じく不安気だったローザにも微笑んでおく。
すると、ハラハラとした様子のローザが、真っ赤な顔をしてリシアの後ろに隠れてしまった。
体が隠れられてないけど。
だが、そんなローザが普通に可愛く思えてしまう。
ほら、夏だから(言い訳)
「ところでトシオくん、なぜ最後の以外スキルを使わなかったのですかにゃ?」
少し思案顔のモーディーンさんが問いかけてくる。
なぜと言われましても……というか最後のもスキルじゃないし。
手持ちの攻撃系スキルは〈ノービスバッシュ〉のみ。
〈ノービスバッシュ〉は瞬間的に僅かばかりの攻撃力が上がる程度。
あんな高速戦闘で使う余裕なんてあっただろうか?
スキル戦闘初心者の俺には〈ノービスバッシュ〉と念じるだけでも集中力が分散しかねない。
「スキルと言われても〈ノービスバッシュ〉くらいしか持っていないので使えませんでしたよ?」
「え?」
「え?」
無い袖は振れないから正直に述べると、その場に居た全員が固まりやがりましたわよ。
なんなんですかいったい…。
「だでは最後に使ったアレは……」
言い澱むモーディーンさんに、俺は先程のお礼も兼ねて種明かしをすることにした。
上半身を少し逸らし、誰も居ない場所に顔を向けて「あ、来てたの?」と口走る。
その場に居た全員がそれに釣られ、俺が声をかけた方に目を向けると、俺はモーディーンさんに向き直った。
「「「???」」」
当然そこには誰も居ないため、彼は俺のほうに目を戻すと、既に何事も無く自分を見ている俺と目が合う。
そこでモーディーンさんの顔に理解の色が浮かぶ。
「なるほど、そういうことだったのですにゃ」
「はい、そういうことです。先程の授業料代わりにはなったでしょうか?」
「逆に私がおつりを払わねばならない程ですにゃ」
「どういうことです?」
俺達二人だけで納得していると、リシアが疑問の声を上げた。
「なんていうかね、これは人の本能に訴えかけるモノなんだよ」
人は他人が唐突に見た方向に目を向けたくなる。
好奇心や危機意識のため、どうしてもそちらが気になって見てしまうものなのだ。
当然そっちへ向いたら何があるのかを確かめようとするもので、その確認するという時間も込みで丸々隙に繋がるのだ。
ただし必ず成功するとは限らないため、失敗した時の代償も馬鹿でかい。
ホント、0.何秒でパンチの応酬をする世界でこんな技を使ったあのボクシング世界チャンピオンは異常である(褒め言葉)
まさか技が成功したのに攻撃を避けられるなんて、こっちが思わなかったが。
後程リシアにはフェイントの一種で『話してる途中に話し相手が余所見をしたらその視線が気になるので自分もつい見ちゃう』の〈話し相手〉の部分を〈戦ってる相手〉に置き換えた技だ、と説明した。
そして今日ファイターに転職したばかりだともついでに伝えた。
「…あっははははは! え、あんたなに、成り立てとは言え到達者級の冒険者が、本物の初心者を相手にスキル使ってボコったんだ!」
ベラーナさんがモーディーンさんに向かって豪快に笑い飛ばすと、またも耳を項垂れさせた。
これは一生酒の肴にされるやつや…。
「お前さん! うちの婿さんは将来有望だわ! リシアは良い旦那を捕まえたね!」
「そ、それは昨日出会ったときから気付いていたさ」
「当然です。トシオ様なのですから」
ベラーナさんが今度は俺の首に腕を回し、頭をぐしゃぐしゃに撫で回しながらジスタさんに向き直ると、ジスタさんは額に淀みながらも満足げに頷き、リシアは自慢満々にその大きな胸を張る。
ちょっ、ベラーナさん、おぱーい! おぱーいが顔に当たってますから!
その後、モーディーンさん夫妻は冒険者ギルドに仲間を待たせているからと、屋敷を後にした。
実際に戦うのって結構楽しいなぁ。
夕食後、リシアとローザに連れられて、新たに用意された部屋へと向かう。
俺の前を、二人が他愛ないおしゃべりを楽しそうにしながら並んで歩いている。
何気なくリシアのお尻に目を向けると、形の良い大きなお尻から伸びる尻尾が、長いスカート裾からちょこちょこ顔を出すのが可愛いかった。
まるで豹の尻尾みたいだな。
次にその隣を並んで歩くローザのお尻に目が吸い寄せられる。
……でかいなぁ。
裾の長いワンピースはローザの身体にぴったりと密着しているため、そのムチムチのお尻のラインがはっきりと現れてしまっている。
しかもそのお尻が天真爛漫に左右へ揺れ弾んでいるのだ。
あの大きなお尻を鷲掴みにして揉みしだいたらどんな感触が楽しめるのだろう…?
少しおかしな気分になってきたので、お尻から視線を外し、ローザの顔へ目を向ける。
朗らかに笑って話すローザと目が合ったので微笑みかけてみるも、先程までの陽気なおしゃべりが嘘のように黙ってしまった。
視線をリシアに向けると、彼女が小さく微笑んで頷いた。
やはり俺は居ない方がいいだろうな。
次から食事の帰りは時間をずらしたほうが良さそうだ。
「おやすみなさいローザちゃん」
「おやすみなさいリシアちゃん……」
部屋に到着すると、ローザは俺達の隣の部屋へ入って行った。
これからしばらくはお隣さんか。
部屋の中に入ると、質素だがダブルベッドと箪笥、それと小さめのテーブルと椅子が二脚ある。
テーブルの上にはコップ2つと歯ブラシ代わりの木の枝が二本、それに木製の桶が置かれている。
俺達は枝とコップと桶を片手に外に設置された洗面台に向かうと、整備された水道の水を汲んで歯を磨き、ついでに頭も洗っておく。
初夏の暖かさを差し引いても、水道の水は冷たかった。
「最後のはすんごく怖かったですにゃ」
ごまかすように頭を掻くモーディーンさんに恨みがましく言って差し上げると、そのとがった猫耳が下に垂れた。
「面目ないですにゃ……」
「冗談です」
こちらも本気で怒っている訳ではないため、これはただの意趣返し。
勝負で負けておいて口で仕返しとかダサすぎる……。
「ですが、とても貴重な経験をさせて貰いました。ありがとうございます」
俺は頭を下げ礼を述べた。
俺達にあるボーナススキルの殆どが〈便利系スキル〉で、〈使えば相手は必ず死ぬ〉〈どんな攻撃も無効化する〉のようなチート級のぶっ飛んだものなんて一つも無い。
恐らく危機管理をきちんとせず、相手が現地人だからと油断すると簡単に死にかねない世界。
上には上が居るし、魔物相手に無茶をすれば、命がいくつあっても足りはしない。
それをモーディーンさんは身をもって教えてくれた。
金貨100枚積まれるよりも価値のある一戦は、どれほど感謝してもし足りないくらいに有意義なものだ。
「君は素直で良い人ですにゃ。君のような人になら安心して姪を任せることが出来そうですにゃ」
「あたしも駆け出し冒険者のような身なりの奴を一方的に追い詰める弟を持って幸せだよ」
「これまた耳が痛いですにゃ」
俺達の元に来たベラーナさんの辛辣な言葉に、またもモーディーンさんの耳が垂れ下がる。
そのベラーナさんとジスタさんの隣には、いつの間にやらリシアやローザ、バルナックさん達も居た。
他にも何人かギャラリーが増えている。
こんな大勢に俺がのど元に剣を突きつけられ降参するみっともない姿を見られていた訳だ。
鬱だ……。
「トシオ様、大丈夫ですか?」
「大丈夫、心配してくれてありがとね」
不安な表情を浮かべるリシアに笑顔で答える。
その隣で同じく不安気だったローザにも微笑んでおく。
すると、ハラハラとした様子のローザが、真っ赤な顔をしてリシアの後ろに隠れてしまった。
体が隠れられてないけど。
だが、そんなローザが普通に可愛く思えてしまう。
ほら、夏だから(言い訳)
「ところでトシオくん、なぜ最後の以外スキルを使わなかったのですかにゃ?」
少し思案顔のモーディーンさんが問いかけてくる。
なぜと言われましても……というか最後のもスキルじゃないし。
手持ちの攻撃系スキルは〈ノービスバッシュ〉のみ。
〈ノービスバッシュ〉は瞬間的に僅かばかりの攻撃力が上がる程度。
あんな高速戦闘で使う余裕なんてあっただろうか?
スキル戦闘初心者の俺には〈ノービスバッシュ〉と念じるだけでも集中力が分散しかねない。
「スキルと言われても〈ノービスバッシュ〉くらいしか持っていないので使えませんでしたよ?」
「え?」
「え?」
無い袖は振れないから正直に述べると、その場に居た全員が固まりやがりましたわよ。
なんなんですかいったい…。
「だでは最後に使ったアレは……」
言い澱むモーディーンさんに、俺は先程のお礼も兼ねて種明かしをすることにした。
上半身を少し逸らし、誰も居ない場所に顔を向けて「あ、来てたの?」と口走る。
その場に居た全員がそれに釣られ、俺が声をかけた方に目を向けると、俺はモーディーンさんに向き直った。
「「「???」」」
当然そこには誰も居ないため、彼は俺のほうに目を戻すと、既に何事も無く自分を見ている俺と目が合う。
そこでモーディーンさんの顔に理解の色が浮かぶ。
「なるほど、そういうことだったのですにゃ」
「はい、そういうことです。先程の授業料代わりにはなったでしょうか?」
「逆に私がおつりを払わねばならない程ですにゃ」
「どういうことです?」
俺達二人だけで納得していると、リシアが疑問の声を上げた。
「なんていうかね、これは人の本能に訴えかけるモノなんだよ」
人は他人が唐突に見た方向に目を向けたくなる。
好奇心や危機意識のため、どうしてもそちらが気になって見てしまうものなのだ。
当然そっちへ向いたら何があるのかを確かめようとするもので、その確認するという時間も込みで丸々隙に繋がるのだ。
ただし必ず成功するとは限らないため、失敗した時の代償も馬鹿でかい。
ホント、0.何秒でパンチの応酬をする世界でこんな技を使ったあのボクシング世界チャンピオンは異常である(褒め言葉)
まさか技が成功したのに攻撃を避けられるなんて、こっちが思わなかったが。
後程リシアにはフェイントの一種で『話してる途中に話し相手が余所見をしたらその視線が気になるので自分もつい見ちゃう』の〈話し相手〉の部分を〈戦ってる相手〉に置き換えた技だ、と説明した。
そして今日ファイターに転職したばかりだともついでに伝えた。
「…あっははははは! え、あんたなに、成り立てとは言え到達者級の冒険者が、本物の初心者を相手にスキル使ってボコったんだ!」
ベラーナさんがモーディーンさんに向かって豪快に笑い飛ばすと、またも耳を項垂れさせた。
これは一生酒の肴にされるやつや…。
「お前さん! うちの婿さんは将来有望だわ! リシアは良い旦那を捕まえたね!」
「そ、それは昨日出会ったときから気付いていたさ」
「当然です。トシオ様なのですから」
ベラーナさんが今度は俺の首に腕を回し、頭をぐしゃぐしゃに撫で回しながらジスタさんに向き直ると、ジスタさんは額に淀みながらも満足げに頷き、リシアは自慢満々にその大きな胸を張る。
ちょっ、ベラーナさん、おぱーい! おぱーいが顔に当たってますから!
その後、モーディーンさん夫妻は冒険者ギルドに仲間を待たせているからと、屋敷を後にした。
実際に戦うのって結構楽しいなぁ。
夕食後、リシアとローザに連れられて、新たに用意された部屋へと向かう。
俺の前を、二人が他愛ないおしゃべりを楽しそうにしながら並んで歩いている。
何気なくリシアのお尻に目を向けると、形の良い大きなお尻から伸びる尻尾が、長いスカート裾からちょこちょこ顔を出すのが可愛いかった。
まるで豹の尻尾みたいだな。
次にその隣を並んで歩くローザのお尻に目が吸い寄せられる。
……でかいなぁ。
裾の長いワンピースはローザの身体にぴったりと密着しているため、そのムチムチのお尻のラインがはっきりと現れてしまっている。
しかもそのお尻が天真爛漫に左右へ揺れ弾んでいるのだ。
あの大きなお尻を鷲掴みにして揉みしだいたらどんな感触が楽しめるのだろう…?
少しおかしな気分になってきたので、お尻から視線を外し、ローザの顔へ目を向ける。
朗らかに笑って話すローザと目が合ったので微笑みかけてみるも、先程までの陽気なおしゃべりが嘘のように黙ってしまった。
視線をリシアに向けると、彼女が小さく微笑んで頷いた。
やはり俺は居ない方がいいだろうな。
次から食事の帰りは時間をずらしたほうが良さそうだ。
「おやすみなさいローザちゃん」
「おやすみなさいリシアちゃん……」
部屋に到着すると、ローザは俺達の隣の部屋へ入って行った。
これからしばらくはお隣さんか。
部屋の中に入ると、質素だがダブルベッドと箪笥、それと小さめのテーブルと椅子が二脚ある。
テーブルの上にはコップ2つと歯ブラシ代わりの木の枝が二本、それに木製の桶が置かれている。
俺達は枝とコップと桶を片手に外に設置された洗面台に向かうと、整備された水道の水を汲んで歯を磨き、ついでに頭も洗っておく。
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