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125話 フリッツ
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「むしろ貴方にはこう自己紹介をするべきですね。自分はウィッシュタニア第三王子直轄第二部隊の隊長を勤めるフリッツと申します。以後お見知りおきください、勇者トシオ様」
フリッツ
人 男 26歳
パラディンLv21
不法進入者が現れた直後に緊急の案件として飛んでくる奴とくれば、それはもう限られている。
自称でも何でもない、今度こそ本物のウィッシュタニアの関係者だ。
そして昨晩の焼肉パーリィで見た顔でもある。
黄緑の髪に精悍な面持ちのイケ顔、190センチは有ろう長身を包んだ衣服は筋肉で盛り上がっている。
ボディビルダーの様なガチガチに膨れ上がった筋肉ではなく、体操選手のようなしなやかで力強い身体付き。
レンさんと同じソフトマッチョでこれ程のイケメンなら、さぞや女性も黙ってはいないことだろう。
しかも顔や腕に付いた傷に加え、その年齢でファイター系最上級職の一つであるパラディンとは、かなりの修羅場を潜って来たのは容易に伺える。
四十五階層で見せてもらったモーディーンさんの剣技を思うと、例えレベル的に格下であっても油断してはできない。
だが腰に目を向け全身を観察し直すと、こんな男なら持っているであろう刃物の類が一切無く、サーチマジックによる魔法反応も確認できないので、魔道具の類も見当たらない。
敵意が無いことを表しているつもりだろうが、油断何て絶対にしてやらんが。
それと、俺は異世界人ではあるが勇者じゃない。
彼の最後の一言に、心の中でのみツッコミを入れておく。
そんな内心のお陰もあり、驚きによる思考停止にならずに済んだ。
口に出して否定しても良いのだが、態々こちらの情報を与える必要もない。
勇者と思われているということは、裏で他国と繋がっている可能性を臭わせる事にも繋がるため、今は勝手に勘違いさせておいく。
その間もサーチエネミーは反応を示さず、彼を敵では無いと告げていた。
だが職業軍人だ、迷宮に放り込んでいる奴と同じく敵意をコントロールされているのかもしれない。
こいつに敵意が無くても命令を下した奴に敵意があるかもしれないので、これも用心しなければ。
そして俺の返答次第で突然敵に回る可能性もある。
念のためマナ感知を屋敷の敷地内とその隣家にまで範囲を伸ばし、怪しい動きをしている人間が居ないかチェックする。
問題は無さそうなので更に斜向かいまで範囲を拡大。
ごく普通の二階建て民家の二階の一室に男3人女2人が、窓に張り付きこちらの様子を伺っていた。
いくら近くに大きな川があるライシーンの夜が比較的涼しいとはいえ、狭い部屋にあの人数がさぞ息苦しいだろう。
ま、知ったこっちゃないが。
視覚やセンサー系で周囲を確認する間も、男との会話は続いている。
「本日は緊急を要する案件のため、こうして伺わせて頂ました」
非武装な上に何処かの馬鹿と違い、玄関から堂々と来て名乗りを上げるってことは、敵対の意思は無いと判断する。
だがしかし、緊急の案件なんて物騒なモノを持ってこないでもらいたいと強く叫びたい衝動に駆られる。
心臓に悪いからやめて欲しいぞコンチクショー。
だが聞かない訳にもいかないため、何処まで通じるか分からないポーカーフェイスを気取りながらの問いを投げかける。
「緊急の案件ってなにかな?」
「先程お宅に賊が侵入した件です」
「あぁ、あれね」
緊急の案件とやらが更なる厄介事でないとわかり安堵するが、この家が既にウィッシュタニアの軍人にも監視されていた事実に冷や汗が流れる。
これも心の安寧的には知りたくなかった……。
「まず最初に、お宅を監視する形になっていたことを心からお詫び申し上げます」
男はすまなそうな表情を作って頭を下げると、直ぐに面を上げる。
「つきましては、その弁解と謝罪のための一席を設けて下さると幸いです」
「………」
謝罪したいだけならこの場でも出来る。
へりくだった言い方だが、要は話し合いがしたいって言ってるのだ。
これを受ける必要が有るか無いかと言えば、建前である弁解とやらで事情を聴かなければ後悔する事態に陥りかねない。
イヤイヤながらも頷かない訳にもいかなかった。
「……わかった、少しここで待っていてくれ」
「圧倒的感謝」
「ブフッ!?」
ポーカーフェイスはどこへやら、フリッツの唐突な日本語がツボに入り吹き込んでしまう。
だからこの世界の人間はどこでそんな言葉を覚えやがる!?
「感謝を伝える時に用いられる言葉と聞き及んでいたのですが、間違っていましたか?」
「ある意味な!」
あたかも何も分からない素振りを見せる男に、思わず脊髄反射的に叫ぶ。
なんだか真面目に相手をするのがバカバカしくなってくる。
――いやいや、ペースに呑まれるな。
奥歯を噛みしめ自分に言い聞かす。
「すぐ戻る」
不思議そうにこちらを見る男にそう短く告げ、俺は一旦扉を閉めた。
―――――――――――――――――――――――――――――
更新が滞りがちになり申し訳ありません。
フリッツ
人 男 26歳
パラディンLv21
不法進入者が現れた直後に緊急の案件として飛んでくる奴とくれば、それはもう限られている。
自称でも何でもない、今度こそ本物のウィッシュタニアの関係者だ。
そして昨晩の焼肉パーリィで見た顔でもある。
黄緑の髪に精悍な面持ちのイケ顔、190センチは有ろう長身を包んだ衣服は筋肉で盛り上がっている。
ボディビルダーの様なガチガチに膨れ上がった筋肉ではなく、体操選手のようなしなやかで力強い身体付き。
レンさんと同じソフトマッチョでこれ程のイケメンなら、さぞや女性も黙ってはいないことだろう。
しかも顔や腕に付いた傷に加え、その年齢でファイター系最上級職の一つであるパラディンとは、かなりの修羅場を潜って来たのは容易に伺える。
四十五階層で見せてもらったモーディーンさんの剣技を思うと、例えレベル的に格下であっても油断してはできない。
だが腰に目を向け全身を観察し直すと、こんな男なら持っているであろう刃物の類が一切無く、サーチマジックによる魔法反応も確認できないので、魔道具の類も見当たらない。
敵意が無いことを表しているつもりだろうが、油断何て絶対にしてやらんが。
それと、俺は異世界人ではあるが勇者じゃない。
彼の最後の一言に、心の中でのみツッコミを入れておく。
そんな内心のお陰もあり、驚きによる思考停止にならずに済んだ。
口に出して否定しても良いのだが、態々こちらの情報を与える必要もない。
勇者と思われているということは、裏で他国と繋がっている可能性を臭わせる事にも繋がるため、今は勝手に勘違いさせておいく。
その間もサーチエネミーは反応を示さず、彼を敵では無いと告げていた。
だが職業軍人だ、迷宮に放り込んでいる奴と同じく敵意をコントロールされているのかもしれない。
こいつに敵意が無くても命令を下した奴に敵意があるかもしれないので、これも用心しなければ。
そして俺の返答次第で突然敵に回る可能性もある。
念のためマナ感知を屋敷の敷地内とその隣家にまで範囲を伸ばし、怪しい動きをしている人間が居ないかチェックする。
問題は無さそうなので更に斜向かいまで範囲を拡大。
ごく普通の二階建て民家の二階の一室に男3人女2人が、窓に張り付きこちらの様子を伺っていた。
いくら近くに大きな川があるライシーンの夜が比較的涼しいとはいえ、狭い部屋にあの人数がさぞ息苦しいだろう。
ま、知ったこっちゃないが。
視覚やセンサー系で周囲を確認する間も、男との会話は続いている。
「本日は緊急を要する案件のため、こうして伺わせて頂ました」
非武装な上に何処かの馬鹿と違い、玄関から堂々と来て名乗りを上げるってことは、敵対の意思は無いと判断する。
だがしかし、緊急の案件なんて物騒なモノを持ってこないでもらいたいと強く叫びたい衝動に駆られる。
心臓に悪いからやめて欲しいぞコンチクショー。
だが聞かない訳にもいかないため、何処まで通じるか分からないポーカーフェイスを気取りながらの問いを投げかける。
「緊急の案件ってなにかな?」
「先程お宅に賊が侵入した件です」
「あぁ、あれね」
緊急の案件とやらが更なる厄介事でないとわかり安堵するが、この家が既にウィッシュタニアの軍人にも監視されていた事実に冷や汗が流れる。
これも心の安寧的には知りたくなかった……。
「まず最初に、お宅を監視する形になっていたことを心からお詫び申し上げます」
男はすまなそうな表情を作って頭を下げると、直ぐに面を上げる。
「つきましては、その弁解と謝罪のための一席を設けて下さると幸いです」
「………」
謝罪したいだけならこの場でも出来る。
へりくだった言い方だが、要は話し合いがしたいって言ってるのだ。
これを受ける必要が有るか無いかと言えば、建前である弁解とやらで事情を聴かなければ後悔する事態に陥りかねない。
イヤイヤながらも頷かない訳にもいかなかった。
「……わかった、少しここで待っていてくれ」
「圧倒的感謝」
「ブフッ!?」
ポーカーフェイスはどこへやら、フリッツの唐突な日本語がツボに入り吹き込んでしまう。
だからこの世界の人間はどこでそんな言葉を覚えやがる!?
「感謝を伝える時に用いられる言葉と聞き及んでいたのですが、間違っていましたか?」
「ある意味な!」
あたかも何も分からない素振りを見せる男に、思わず脊髄反射的に叫ぶ。
なんだか真面目に相手をするのがバカバカしくなってくる。
――いやいや、ペースに呑まれるな。
奥歯を噛みしめ自分に言い聞かす。
「すぐ戻る」
不思議そうにこちらを見る男にそう短く告げ、俺は一旦扉を閉めた。
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