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158話 鬼の洗礼
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アイヴィナーゼ玉座の間。
放心したアウグストが玉座の間から兵士に両脇を抱えられこの場を退出していく。
少年達を無事に保護出来たのでまずは一安心だ。
だが本命であるウィッシュタニアへの開戦を止める話はまだ始まってすらいない。
「じゃぁ本題に移らせてもらっても?」
「申せ、聞くだけは聞いてやろう」
相変わらずの尊大さで、人を見下した態度は健在だ。
「俺が今日ここに来たのは、アイヴィナーゼが侵略戦争に向かうのを止めるためだ」
一握りの権力者の欲望で大勢の命が犠牲になるなんて、そんな理不尽があって堪るか。
それを止める力が俺にあるのなら、例え相手が誰であろうと止めてやる!
「俺がこの世に存在している限り、この周辺で戦争を仕掛けた国の軍隊は尽く潰す。アイヴィナーゼが侵略戦争をすると言うなら、そのアイヴィナーゼ軍も俺の排除対象に加わえるだけだ。他所の国を攻める戦力があるなら民を苦しめる魔物でも狩りにいけ」
こちらのを玉座から黙って聞いているアイヴィナーゼ王グレアム陛下と立ち並ぶアイヴィナーゼの重鎮達。
将軍や大臣だけでなく、騎士達1人1人の迫力も凄まじく、どう言いつくろっても指定暴力団としか言いようがない面構えだ。
すると、沈黙を守っていた老将軍が口を開く。
「小僧、戦争をするかどうかは陛下がお決めになること、それを否定する権限が貴様に有ると思っておるのか?」
マクシミリアン将軍が1歩こちらに踏み出した。
たった1歩間合いを詰められただけで、老将から強烈な圧迫を受けるも、相手はエキドナ以下の戦闘力だと言い聞かせる。
平気へっちゃら平気へっちゃら……。
「否定する権限なんてある訳ないだろ? だがそれはあんたらも同じことだ」
国家ってものは武力があるから国家として成り立っている。
武力で従わせられないのなら、ほかのことで従わせるより他にない。
「俺を止める権限とやらがあんた等にあるなら行使してみせろ。侵略戦争を片っ端から否定するだけの武力が有ると自負している。撥ね退けられるのが嫌ならそれ以上の力を持って示せばいい。仮にそうなった場合は国が傾くどころか国名が変わることも覚悟はしておいてくれ」
「内政干渉も甚だしいな」
睨み返しそう告げると、老将軍がズイっともう1歩踏み出した。
歳を感じさせない男の気迫に、更なる圧迫がのしかかる。
確かに俺の主張は完全に内政干渉だが、〝戦争をやめろ〟とお願いしているのではなく〝戦争をするなら潰す〟と脅しているので、一応はお互いの主張をぶつけ合った外交だ。
そして戦争とは、互いの主張が受け入れられない場合に発生する外交の最終手段である。
俺は戦争をやらせないためにも、どれほどの強面で威圧されようとここで引く訳にはいかない。
こちらも負けじと肩幅に足を開き、腕を組み胸を張り顎を引いて偉そうにふんぞり返り、不敵な笑みを浮かべてやる。
するとあら不思議、全然負ける気がしなくなる。
はっはっはっ!
俺を誰だと思ってやがる!
ライシーンのトシオ様たぁ俺のことだ!
……世間的にはまだ無名でしたねごめんなさい。
引きつった顔をそうやって無理矢理隠すと、俺よりも頭一つ半程背の高い老将がどんどんと近付き、すぐ目の前で立ち止まる。
背の高さと深いシワの刻まれた顔にはところどころ刀傷があり、その大きな体と相まって893なんて生ぬるく、〝鬼〟と形容するのがふさわしい恐ろしさだった。
そんな物体が目線の高さを俺よりも下げるように屈み、額が触れそうなくらいに顔を寄せて下から覗き込むように睨み上げてきたのだからたまらない。
ちかいこわいこわいちかいちかいちかいこわいちかいこわい!
思わず顔を後ろに引いてしまう。
それを俺が怖気付いたったと捕らえたか、将軍の口元に嘲りの笑みが生まれた。
――この程度で、舐められてたまるか!
俺は上半身をそのまま大きく後に傾けると、反動を利用してその勝ち誇った男の額に頭突きをぶちかます!
だが微動だにしないマクシミリアンが、力を込めて押し返してきた。
身体強化魔法を発動させてそれを押し込める。
ぐうぅ、自分でやっておきながら滅茶苦茶痛いけど痛くない!
引くことの許されない攻防を、固唾を呑んで見守るクラウディアと周囲の騎士達。
しばらく睨にらみ合いが続いたところで、玉座からパンパンと手を打つ音。
「そこまでだ、マクシミリアン。トシオもあまり粋がるでないわ」
グレアム国王の言葉に老将が引き下がり、何事も無かったかのような顔で王の傍に戻り立つ。
次いでセドリック大臣が何やら耳打ちをすると、グレアム国王が小さく頷いた。
「それでは騎士達よ、この度の務め大儀であった。別命あるまで休暇を取らす。一同下がるがよい」
「「「はっ!」」」
国王の命令で騎士達が立ち上がり、胸に握りこぶしを当てて敬礼をすると、一糸乱れぬ動きで下がって行った。
「クラウディア、その者を客室に案内せい。それとすぐ執務室に来い」
「はい、お父様」
国王がいかめしい口調で娘に命令を下すと、堂々とした足取りで臣下を従え退出していく。
こうして俺VSアイヴィナーゼ首脳陣との第1ラウンドが終了した。
この後すぐに第2ラウンドが待っているのかと思うと、気が重いし胃が痛い……。
放心したアウグストが玉座の間から兵士に両脇を抱えられこの場を退出していく。
少年達を無事に保護出来たのでまずは一安心だ。
だが本命であるウィッシュタニアへの開戦を止める話はまだ始まってすらいない。
「じゃぁ本題に移らせてもらっても?」
「申せ、聞くだけは聞いてやろう」
相変わらずの尊大さで、人を見下した態度は健在だ。
「俺が今日ここに来たのは、アイヴィナーゼが侵略戦争に向かうのを止めるためだ」
一握りの権力者の欲望で大勢の命が犠牲になるなんて、そんな理不尽があって堪るか。
それを止める力が俺にあるのなら、例え相手が誰であろうと止めてやる!
「俺がこの世に存在している限り、この周辺で戦争を仕掛けた国の軍隊は尽く潰す。アイヴィナーゼが侵略戦争をすると言うなら、そのアイヴィナーゼ軍も俺の排除対象に加わえるだけだ。他所の国を攻める戦力があるなら民を苦しめる魔物でも狩りにいけ」
こちらのを玉座から黙って聞いているアイヴィナーゼ王グレアム陛下と立ち並ぶアイヴィナーゼの重鎮達。
将軍や大臣だけでなく、騎士達1人1人の迫力も凄まじく、どう言いつくろっても指定暴力団としか言いようがない面構えだ。
すると、沈黙を守っていた老将軍が口を開く。
「小僧、戦争をするかどうかは陛下がお決めになること、それを否定する権限が貴様に有ると思っておるのか?」
マクシミリアン将軍が1歩こちらに踏み出した。
たった1歩間合いを詰められただけで、老将から強烈な圧迫を受けるも、相手はエキドナ以下の戦闘力だと言い聞かせる。
平気へっちゃら平気へっちゃら……。
「否定する権限なんてある訳ないだろ? だがそれはあんたらも同じことだ」
国家ってものは武力があるから国家として成り立っている。
武力で従わせられないのなら、ほかのことで従わせるより他にない。
「俺を止める権限とやらがあんた等にあるなら行使してみせろ。侵略戦争を片っ端から否定するだけの武力が有ると自負している。撥ね退けられるのが嫌ならそれ以上の力を持って示せばいい。仮にそうなった場合は国が傾くどころか国名が変わることも覚悟はしておいてくれ」
「内政干渉も甚だしいな」
睨み返しそう告げると、老将軍がズイっともう1歩踏み出した。
歳を感じさせない男の気迫に、更なる圧迫がのしかかる。
確かに俺の主張は完全に内政干渉だが、〝戦争をやめろ〟とお願いしているのではなく〝戦争をするなら潰す〟と脅しているので、一応はお互いの主張をぶつけ合った外交だ。
そして戦争とは、互いの主張が受け入れられない場合に発生する外交の最終手段である。
俺は戦争をやらせないためにも、どれほどの強面で威圧されようとここで引く訳にはいかない。
こちらも負けじと肩幅に足を開き、腕を組み胸を張り顎を引いて偉そうにふんぞり返り、不敵な笑みを浮かべてやる。
するとあら不思議、全然負ける気がしなくなる。
はっはっはっ!
俺を誰だと思ってやがる!
ライシーンのトシオ様たぁ俺のことだ!
……世間的にはまだ無名でしたねごめんなさい。
引きつった顔をそうやって無理矢理隠すと、俺よりも頭一つ半程背の高い老将がどんどんと近付き、すぐ目の前で立ち止まる。
背の高さと深いシワの刻まれた顔にはところどころ刀傷があり、その大きな体と相まって893なんて生ぬるく、〝鬼〟と形容するのがふさわしい恐ろしさだった。
そんな物体が目線の高さを俺よりも下げるように屈み、額が触れそうなくらいに顔を寄せて下から覗き込むように睨み上げてきたのだからたまらない。
ちかいこわいこわいちかいちかいちかいこわいちかいこわい!
思わず顔を後ろに引いてしまう。
それを俺が怖気付いたったと捕らえたか、将軍の口元に嘲りの笑みが生まれた。
――この程度で、舐められてたまるか!
俺は上半身をそのまま大きく後に傾けると、反動を利用してその勝ち誇った男の額に頭突きをぶちかます!
だが微動だにしないマクシミリアンが、力を込めて押し返してきた。
身体強化魔法を発動させてそれを押し込める。
ぐうぅ、自分でやっておきながら滅茶苦茶痛いけど痛くない!
引くことの許されない攻防を、固唾を呑んで見守るクラウディアと周囲の騎士達。
しばらく睨にらみ合いが続いたところで、玉座からパンパンと手を打つ音。
「そこまでだ、マクシミリアン。トシオもあまり粋がるでないわ」
グレアム国王の言葉に老将が引き下がり、何事も無かったかのような顔で王の傍に戻り立つ。
次いでセドリック大臣が何やら耳打ちをすると、グレアム国王が小さく頷いた。
「それでは騎士達よ、この度の務め大儀であった。別命あるまで休暇を取らす。一同下がるがよい」
「「「はっ!」」」
国王の命令で騎士達が立ち上がり、胸に握りこぶしを当てて敬礼をすると、一糸乱れぬ動きで下がって行った。
「クラウディア、その者を客室に案内せい。それとすぐ執務室に来い」
「はい、お父様」
国王がいかめしい口調で娘に命令を下すと、堂々とした足取りで臣下を従え退出していく。
こうして俺VSアイヴィナーゼ首脳陣との第1ラウンドが終了した。
この後すぐに第2ラウンドが待っているのかと思うと、気が重いし胃が痛い……。
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