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秘密の会談
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「姉様、戻ってこられるのが予定の時間よりも遅かったですね?」
「ふふっ、可愛らしい令嬢に捕まっちゃってね」
「また悪口を言われたのですか?……その家、潰しますか?」
可愛らしい顔で物騒なことを言う弟に笑みがこぼれる。
「なんてことない世間話よ。ほら落ち着きなさい?」
「姉様……」
私がハオルの頭を撫でると、怒りは収まったようだ。
無表情から微笑みへと表情を変化させた。
「はい、それじゃ時間も遅れていることだしすぐに向かいましょうか」
「別に一休みしてからでも良いのでは?」
「お相手を待たせる訳にはいかないでしょう?」
「はぁ……わかりました」
ハオルはズボンのポケットから一本の鍵を取り出すと、クローゼットを開いた。
そこには私の替えのドレスや衣装が僅かに並んでいる。
それらをハオルが丁寧に寄せると、奥には白い壁があった。
一見すればただの壁に見えるかもしれないが、よく見ると鍵穴があり、そこに先ほどの鍵を差し込む。
ガチャリ。
ゴゴゴ……
重い音を立てて壁の扉を開くと、その先には下に降りる階段があった。
「姉様、手を」
「ええ」
私は差し出された手を取るとクローゼットの扉を閉じた。
「光よ」
そしてハオルが照明の魔法を唱えると、暗闇の中を照らす光が彼の右手に生まれるのだった。
コツコツコツコツ……
石造りの階段を降りると石畳へと降り立った。
そこをさらにまっすぐに進んでいくと、やがて扉へと突き当たる。
その扉には黒い薔薇が装飾されており、なんとも厳かな雰囲気を醸し出していた。
「じゃあ姉様。お願いします」
「あら?貴方が解錠してもいいのよ?」
「いえ、当主は姉様ですから」
「もぉ……変なところで真面目なのだから……」
私は扉の前に立つと、右手を開き口に手を当てる。
そして、
「夜の一族。レミゼラルムーンがここに」
結界を解く言葉を唱えると、扉を覆っていた魔力の膜が消え去っていった。
コンコン。
その扉を数度ノックした後、私は扉を開いた。
すると眩しいばかりの光が漏れ、そこには質素な空間が広がっている。
長方形の木のテーブルと二組の椅子が向かい合う形で並び、計四つ。
決して広いとは言えない部屋にあるのはそれだけだが、椅子に腰掛けている二人の先客がいた。
「お待たせいたしました。陛下」
「うむ」
その先客の一人が、十五代国王ランドルフ・フォレインバッハ・グレイシアであった。
威厳溢れるその態度は変わらずだが、先ほど謁見したときのような軽蔑の眼差しはない。
というよりもむしろ……
「ライちゃん!さっきはごめんよぉぉぉ!」
「……陛下、抱きつくのは辞めていただけませんか?もう子どもではありませんので」
「離れてください、陛下」
「おお!ハオル!大きくなったな」
「前回お会いしてから一月ほどしか経っていませんが?」
「ははは!口だけは達者になりおってからに!」
陛下を私から引き剥がしたハオルは一国の王であるランドルフに対して、おざなりな振る舞いだ。
だが、ランドルフは一向に気にした様子を見せずに、ハオルの頭をガシガシっと思いっきり撫でてている。
「父上、お戯れはそこまでにしませんか?ライラックとハオルが困っていますぞ?」
「そうか?ならば仕方ないな」
そんなランドルフを諌めたのは彼の息子であるセイクリッド。
流れるような金髪に青い瞳。
端正な顔立ちに私よりも頭二つは高いであろう身長。
さすが世の令嬢を魅了するお方だ。
「ようこそ。ライラック」
「麗しい殿下にお目にかかり光栄であります」
「ふふっ、ここは公の場ではない。セイと呼んでくれないかい?」
そんな彼の柔和な微笑みが、私の身体をほぐしていく。
「わかりましたわ。セイ様」
「相変わらず、美し……」
「失礼します。雑談はそれまでにして本題に入りませんか?」
セイクリッドの手が私の方へと伸ばされたそのとき。
ハオルが私たちの間に入り込んだ。
「そうね。そうしましょうか」
「……ハオル。君も相変わらずだな」
「殿下も」
二人はバチバチとにらみ合うが、なにをしているのだろうか?
「ははは!……よし、本題に移るとしよう」
陛下は大きく笑われた後、威厳あるお顔へと戻られた。
「「「はっ」」」
ここからはレミゼラルムーン当主として、王に報告をする時間だ。
「違法賭博、薬物、風俗などの流通および開業は先月よりも増えております。こちらがその場所のリストになります」
「ふむ……騎士団による取り締まりを強くしているが、なかなか減らぬものよ」
「犯罪組織が潜り込みたいほどの富と人口を誇る王都ですからね。仕方ありません」
「光が強いほど、影もまた強くなるということか。そちらの商いも盛況なのだろう?」
「はい、おかげさまで」
「ふぅ……人の欲とは底しれぬものよのぉ……?」
「そうおっしゃいますが、私たちを使って王都の影をも支配しているのは陛下ではありませんか?」
「ふふふ……これもライラたちが一身に汚名を引き受けてくれているからよ」
表向き、レミゼラルムーン家と王家の仲は険悪となっている。
それは王家が欲に塗れた仕事をこなすレミゼラルムーン家を軽蔑しているという建前で。
だが、元々レミゼラルムーン家に夜の仕事を任せたのは初代の王である。
そこから王との繋がりは良好で今に至っている。
「それにしても初代はよく考えたのぉ。余では思いつかん方策だ」
「ふふふ、乱世でその才を発揮された方ですからね」
「幸であるが、余は戦争を体験したことのない王だからの。言ってみれば皆の上にただ立っているだけだ」
「そんなことはありません。一から起こすことも大変ですが維持することも大変です。陛下は見事に国を治めていらっしゃいます」
「ははは、ライラにそう言われると照れるのぉ」
陛下と私。
二人の会話が弾んだ後、陛下の瞳が鋭くなる。
「それで?不正を行っている愚臣は誰だ?」
「はい、グリオン男爵ですね。犯罪組織に入国許可を不当に出し、私腹を肥やしています」
「あやつか……意外な人物だったな」
「ええ、表向きは優秀な秘書官ですからね」
「どこから得た情報なのだ?」
「私の店の一人の歌姫からです」
「ふふふ……男はベッドの上では口が軽くなるものだからな」
「陛下もですか?」
「おっと、藪蛇だったな」
「ふふふ……」
この場所の上では今もまだ、生誕パーティが祝われている。
そしてグリオン男爵も楽しんでいるのだろう。
明日になれば、その身が破滅するなどと夢にも思わず……
「ふふっ、可愛らしい令嬢に捕まっちゃってね」
「また悪口を言われたのですか?……その家、潰しますか?」
可愛らしい顔で物騒なことを言う弟に笑みがこぼれる。
「なんてことない世間話よ。ほら落ち着きなさい?」
「姉様……」
私がハオルの頭を撫でると、怒りは収まったようだ。
無表情から微笑みへと表情を変化させた。
「はい、それじゃ時間も遅れていることだしすぐに向かいましょうか」
「別に一休みしてからでも良いのでは?」
「お相手を待たせる訳にはいかないでしょう?」
「はぁ……わかりました」
ハオルはズボンのポケットから一本の鍵を取り出すと、クローゼットを開いた。
そこには私の替えのドレスや衣装が僅かに並んでいる。
それらをハオルが丁寧に寄せると、奥には白い壁があった。
一見すればただの壁に見えるかもしれないが、よく見ると鍵穴があり、そこに先ほどの鍵を差し込む。
ガチャリ。
ゴゴゴ……
重い音を立てて壁の扉を開くと、その先には下に降りる階段があった。
「姉様、手を」
「ええ」
私は差し出された手を取るとクローゼットの扉を閉じた。
「光よ」
そしてハオルが照明の魔法を唱えると、暗闇の中を照らす光が彼の右手に生まれるのだった。
コツコツコツコツ……
石造りの階段を降りると石畳へと降り立った。
そこをさらにまっすぐに進んでいくと、やがて扉へと突き当たる。
その扉には黒い薔薇が装飾されており、なんとも厳かな雰囲気を醸し出していた。
「じゃあ姉様。お願いします」
「あら?貴方が解錠してもいいのよ?」
「いえ、当主は姉様ですから」
「もぉ……変なところで真面目なのだから……」
私は扉の前に立つと、右手を開き口に手を当てる。
そして、
「夜の一族。レミゼラルムーンがここに」
結界を解く言葉を唱えると、扉を覆っていた魔力の膜が消え去っていった。
コンコン。
その扉を数度ノックした後、私は扉を開いた。
すると眩しいばかりの光が漏れ、そこには質素な空間が広がっている。
長方形の木のテーブルと二組の椅子が向かい合う形で並び、計四つ。
決して広いとは言えない部屋にあるのはそれだけだが、椅子に腰掛けている二人の先客がいた。
「お待たせいたしました。陛下」
「うむ」
その先客の一人が、十五代国王ランドルフ・フォレインバッハ・グレイシアであった。
威厳溢れるその態度は変わらずだが、先ほど謁見したときのような軽蔑の眼差しはない。
というよりもむしろ……
「ライちゃん!さっきはごめんよぉぉぉ!」
「……陛下、抱きつくのは辞めていただけませんか?もう子どもではありませんので」
「離れてください、陛下」
「おお!ハオル!大きくなったな」
「前回お会いしてから一月ほどしか経っていませんが?」
「ははは!口だけは達者になりおってからに!」
陛下を私から引き剥がしたハオルは一国の王であるランドルフに対して、おざなりな振る舞いだ。
だが、ランドルフは一向に気にした様子を見せずに、ハオルの頭をガシガシっと思いっきり撫でてている。
「父上、お戯れはそこまでにしませんか?ライラックとハオルが困っていますぞ?」
「そうか?ならば仕方ないな」
そんなランドルフを諌めたのは彼の息子であるセイクリッド。
流れるような金髪に青い瞳。
端正な顔立ちに私よりも頭二つは高いであろう身長。
さすが世の令嬢を魅了するお方だ。
「ようこそ。ライラック」
「麗しい殿下にお目にかかり光栄であります」
「ふふっ、ここは公の場ではない。セイと呼んでくれないかい?」
そんな彼の柔和な微笑みが、私の身体をほぐしていく。
「わかりましたわ。セイ様」
「相変わらず、美し……」
「失礼します。雑談はそれまでにして本題に入りませんか?」
セイクリッドの手が私の方へと伸ばされたそのとき。
ハオルが私たちの間に入り込んだ。
「そうね。そうしましょうか」
「……ハオル。君も相変わらずだな」
「殿下も」
二人はバチバチとにらみ合うが、なにをしているのだろうか?
「ははは!……よし、本題に移るとしよう」
陛下は大きく笑われた後、威厳あるお顔へと戻られた。
「「「はっ」」」
ここからはレミゼラルムーン当主として、王に報告をする時間だ。
「違法賭博、薬物、風俗などの流通および開業は先月よりも増えております。こちらがその場所のリストになります」
「ふむ……騎士団による取り締まりを強くしているが、なかなか減らぬものよ」
「犯罪組織が潜り込みたいほどの富と人口を誇る王都ですからね。仕方ありません」
「光が強いほど、影もまた強くなるということか。そちらの商いも盛況なのだろう?」
「はい、おかげさまで」
「ふぅ……人の欲とは底しれぬものよのぉ……?」
「そうおっしゃいますが、私たちを使って王都の影をも支配しているのは陛下ではありませんか?」
「ふふふ……これもライラたちが一身に汚名を引き受けてくれているからよ」
表向き、レミゼラルムーン家と王家の仲は険悪となっている。
それは王家が欲に塗れた仕事をこなすレミゼラルムーン家を軽蔑しているという建前で。
だが、元々レミゼラルムーン家に夜の仕事を任せたのは初代の王である。
そこから王との繋がりは良好で今に至っている。
「それにしても初代はよく考えたのぉ。余では思いつかん方策だ」
「ふふふ、乱世でその才を発揮された方ですからね」
「幸であるが、余は戦争を体験したことのない王だからの。言ってみれば皆の上にただ立っているだけだ」
「そんなことはありません。一から起こすことも大変ですが維持することも大変です。陛下は見事に国を治めていらっしゃいます」
「ははは、ライラにそう言われると照れるのぉ」
陛下と私。
二人の会話が弾んだ後、陛下の瞳が鋭くなる。
「それで?不正を行っている愚臣は誰だ?」
「はい、グリオン男爵ですね。犯罪組織に入国許可を不当に出し、私腹を肥やしています」
「あやつか……意外な人物だったな」
「ええ、表向きは優秀な秘書官ですからね」
「どこから得た情報なのだ?」
「私の店の一人の歌姫からです」
「ふふふ……男はベッドの上では口が軽くなるものだからな」
「陛下もですか?」
「おっと、藪蛇だったな」
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