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通じる思い
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ブラッドは肋骨にひびが入っていたが、それ以外は問題なかった。ひびも軽傷で治癒師の施術で治せる程度だったが、安静にしている必要があり、彼はしばらく仕事を休んだ。
その間、フィーナはほとんどつきっきりでブラッドの世話をした。
夜、寝間着に着替えてフィーナはブラッドの部屋を訪れた。
「あの、一緒に寝てもいいですか?」
「え?」
「ジェシカから聞いたんです。添い寝するだけでも癒されるって」
意を決してフィーナが言うと、ブラッドは頭を抱えた。
「ジェシカはなんてことをフィーナに教えるんだ」
「……ダメですか?」
フィーナは緊張で、胸の前でぎゅっと手を握る。恥ずかしさに真っ赤になって、ブラッドに訴えた。
ブラッドはそんなフィーナを見て、ゆっくりと息を吐いた。
「いいよ、おいで」
微笑んでくれるブラッドにほっとして、フィーナはそっとベッドに入る。
主寝室のベッドは二人で寝ても十分な大きさだった。
極力動かないようにと治癒師から言われているブラッドは仰向けのまま。フィーナはその腕に抱きつく形で横になった。手を握るとブラッドも握り返してくれる。
触れたところから魔力が混ざり、フィーナの胸元は温かい。ほぅと息を吐くと、ブラッドの肩が揺れた。
ブラッドは顔だけフィーナに向ける。フィーナが涙を流すのを見て、彼は困ったように眉を下げた。
「フィーナ、どうしたんだい?」
「ブラッド様が無事でよかった……。ブラッド様がいなくなると思ったら、怖くて」
「心配かけて、すまなかったね。フィーナ、助けてくれてありがとう。フィーナは私の一番弟子。優秀な魔術師だよ」
「私、ブラッド様のお役に立てましたか」
「もちろんだとも」
「うれしいです……よかった」
ブラッドは微笑んだ。
「私、ブラッド様にお伝えしたいことがあって。……あの、私もブラッド様のことを愛しています。男性として、好きです……」
「フィーナ、ありがとう」
「怪我が治ったら、私を本当の妻にしてくださいますか?」
フィーナがそう願うと、ブラッドはうなずいた。
「きちんと婚姻届は提出されているんだから、君はすでに僕の本当の妻だよ」
「それはそうなんですけれど、そうじゃなくて」
しどろもどろになるフィーナを見て、ブラッドは笑った。
「わかっているよ。でも、フィーナの口から聞かせてほしい。君は何を望む?」
「私は」
フィーナはブラッドを見つめた。今までで一番近くに彼の顔がある。フィーナが好きな優しい微笑み。彼はいつもフィーナを見守ってくれる。
「私を抱きしめてください。私もあなたを抱きしめたいです。それから、あなたを全部受け止めたい。――私はブラッド様が欲しいです」
「ああ」
「えっと、あの、性的な意味で、です」
フィーナが小さく付け加えると、ブラッドの手に力がこもった。
「フィーナ」
名前を呼ぶ声がかすれている。
「君に口付けたい」
「ブラッド様」
「動けない僕の代わりに、君がしてくれないか?」
「え、私がですか?」
フィーナの返事に構わず、ブラッドは目を閉じた。
彼は無防備にフィーナを待っている。
自分に身を委ねてくれている姿にフィーナの心が震えた。
そっと身を乗り出せば、ブラッドの顔はすぐだ。
軽く触れる。一瞬だけ唇が重なった。
ふわりと柔らかい感触。
目を開けたブラッドは微笑んでくれて、フィーナも同じように笑みを返す。
フィーナはもう一度、先ほどより長く口付けた。
魔力の相性のせいか、好き合っているせいか、とろけるような心地だった。
「……気持ちいいです」
うっとりとささやくフィーナに、ブラッドは「僕はだいぶ物足りないけれどね」と苦笑した。
「抱きしめるのは怪我が治ってからだ」
二人で手を繋いで眠ったのだ。
その間、フィーナはほとんどつきっきりでブラッドの世話をした。
夜、寝間着に着替えてフィーナはブラッドの部屋を訪れた。
「あの、一緒に寝てもいいですか?」
「え?」
「ジェシカから聞いたんです。添い寝するだけでも癒されるって」
意を決してフィーナが言うと、ブラッドは頭を抱えた。
「ジェシカはなんてことをフィーナに教えるんだ」
「……ダメですか?」
フィーナは緊張で、胸の前でぎゅっと手を握る。恥ずかしさに真っ赤になって、ブラッドに訴えた。
ブラッドはそんなフィーナを見て、ゆっくりと息を吐いた。
「いいよ、おいで」
微笑んでくれるブラッドにほっとして、フィーナはそっとベッドに入る。
主寝室のベッドは二人で寝ても十分な大きさだった。
極力動かないようにと治癒師から言われているブラッドは仰向けのまま。フィーナはその腕に抱きつく形で横になった。手を握るとブラッドも握り返してくれる。
触れたところから魔力が混ざり、フィーナの胸元は温かい。ほぅと息を吐くと、ブラッドの肩が揺れた。
ブラッドは顔だけフィーナに向ける。フィーナが涙を流すのを見て、彼は困ったように眉を下げた。
「フィーナ、どうしたんだい?」
「ブラッド様が無事でよかった……。ブラッド様がいなくなると思ったら、怖くて」
「心配かけて、すまなかったね。フィーナ、助けてくれてありがとう。フィーナは私の一番弟子。優秀な魔術師だよ」
「私、ブラッド様のお役に立てましたか」
「もちろんだとも」
「うれしいです……よかった」
ブラッドは微笑んだ。
「私、ブラッド様にお伝えしたいことがあって。……あの、私もブラッド様のことを愛しています。男性として、好きです……」
「フィーナ、ありがとう」
「怪我が治ったら、私を本当の妻にしてくださいますか?」
フィーナがそう願うと、ブラッドはうなずいた。
「きちんと婚姻届は提出されているんだから、君はすでに僕の本当の妻だよ」
「それはそうなんですけれど、そうじゃなくて」
しどろもどろになるフィーナを見て、ブラッドは笑った。
「わかっているよ。でも、フィーナの口から聞かせてほしい。君は何を望む?」
「私は」
フィーナはブラッドを見つめた。今までで一番近くに彼の顔がある。フィーナが好きな優しい微笑み。彼はいつもフィーナを見守ってくれる。
「私を抱きしめてください。私もあなたを抱きしめたいです。それから、あなたを全部受け止めたい。――私はブラッド様が欲しいです」
「ああ」
「えっと、あの、性的な意味で、です」
フィーナが小さく付け加えると、ブラッドの手に力がこもった。
「フィーナ」
名前を呼ぶ声がかすれている。
「君に口付けたい」
「ブラッド様」
「動けない僕の代わりに、君がしてくれないか?」
「え、私がですか?」
フィーナの返事に構わず、ブラッドは目を閉じた。
彼は無防備にフィーナを待っている。
自分に身を委ねてくれている姿にフィーナの心が震えた。
そっと身を乗り出せば、ブラッドの顔はすぐだ。
軽く触れる。一瞬だけ唇が重なった。
ふわりと柔らかい感触。
目を開けたブラッドは微笑んでくれて、フィーナも同じように笑みを返す。
フィーナはもう一度、先ほどより長く口付けた。
魔力の相性のせいか、好き合っているせいか、とろけるような心地だった。
「……気持ちいいです」
うっとりとささやくフィーナに、ブラッドは「僕はだいぶ物足りないけれどね」と苦笑した。
「抱きしめるのは怪我が治ってからだ」
二人で手を繋いで眠ったのだ。
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