巻き添えで召喚された会社員は貰ったスキルで勇者と神に復讐する為に、魔族の中で鍛冶屋として生活すると決めました。

いけお

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第1話 巻き添え召喚されてしまったよ

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「あ~あ、どこかに簡単に儲かる話は転がってないかな~」

会社員【越後屋 光圀(えちごや みつくに)】は、そんな話が有る訳無い事を堂々と呟いていた。

少しでも多くお金が稼げるならと、怪しい営業の職に就き口先三寸で多少人より多い給料を稼いではいるが恨みも多く買っていた。そして今日も午後から老人共を集めて、産地を偽装した羽毛布団や効果の疑わしい医療器具等をどれだけ高く売り付けようかと画策している。

お昼も済ませて、近くの公園のベンチで休んでいると隣に生真面目そうな若者が立ち話し掛けてきた。

「突然すいません、僕はこの周辺でボランティアに従事している【長谷川 吉宗(はせがわ よしむね)】と言います。宜しかったら、週末に公園の清掃ボランティアの仲間を募集しておりますのでご参加下さい」

そう言いながらパンフレットを差し出してきたが、それを手で払いこう言ってやった。

「そんなくだらない物に時間を浪費する位なら、一円でも多く年寄り達から多く巻き上げてる方が利口だ」

「ちょっと待って下さい、それじゃ最近周辺のアパート等に住むご年配の方々に高額な商品を売り付けている人ってあなたなのですか!?」

「はあ!?向こうは納得して買っているんだろうが!?その価格で良いと判子押しているんだ何で文句言われなくちゃならん!」

「あなたには良心って物は無いのですか!?」

「そんな価値の無い物はとっくの昔に捨てたよ、人より多くの金さえ稼げればそれでいいのさ」

(長谷川が拳を握りしめている、これはチャンスだ。このまま殴られれば治療費の名目でお金をかなり分捕れる。)

表情は変えずに殴りかかってくるのを待っていたその時、足元に急に光り輝く魔方陣の様な物が現れた!

「な、なんだこれ!?」

「知るか!?急いで離れないと午後からの商売に影響が出る!?」

「あなたはこの期に及んでまだ金の事しか考えてないのですか!?」

「当たり前だ!金が全てだ、金の無い奴は野たれ死ねばいいんだ」

そうして、魔方陣の光が更に強くなると足元の地面が無くなり2人はそのまま地面に吸い込まれていった。

「起きてください、起きてください!」

長谷川に体を揺らされ目を覚ますと、そこは先程まで居た公園では無く青白い光に包まれた空間の中だった。

『お待ちしておりました、異世界より召喚されし勇者よ』

声の方向に目を向けると一瞬で目を奪われてしまう位の美しい女性が立っていた。

『わたしの名はフローディア、主神デウスに仕える神の1人。この世界を救う為に召喚された勇者を出迎える為に送られてきました』

「おいおい、人の断りも無しにいきなり勇者をやれって言われても困るじゃねえか!?」

『勇者として召喚されたのはあなたの様な人間ではありません。長谷川 吉宗様、どうかその強い正義の心を持ってこの世界を魔王の手からお救い頂けないでしょうか?』

「自分みたいな人間でも必要とされる世界だというのなら、喜んで協力させて頂くよ」

(ちっ吐き気がする位のお人好しかよコイツ。なら俺じゃ無いなら早く元の世界に返して貰わないとな、少しは色付けてくれないとここで使った時間だけ無駄になっちまう)

「おい、俺じゃないって言うのならとっとと元の世界に返せや。それと、巻き添えで召喚したんだ。慰謝料代わりに何かついでに寄越せ」

「お前という奴は本当に人間の屑だな」

「お前みたいにお人好しで生きている方が間抜けなんだよ」

『元の世界にはお2人共もう戻れませんよ』

「「はあ!?」」

『召喚する際に2人の元の世界との繋がりを完全に消す為に、原因不明の爆発事故に巻き込まれた格好で2人は死亡した事になっております』

(もう元の世界に戻れないだと!?ふざけるな!これからどうやって金を稼がないとならないんだ!?)

『吉宗様、この様な形でこの世界に骨を埋めて頂く事になるのを深くお詫び致します。お詫びとしてあちらの光の間で幾つかのスキルや能力値の変更を行いたいと思いますので参りましょう』

「ちょっと待てや!俺はほったらかしかよ!?巻き添えで召喚された俺にも何か寄越せ!何も無しで放り出されて生きていける訳無いだろうが!?」

『先程、御自身で言われた筈では?【金の無い奴は野たれ死ねばいいんだ】と。少し先に扉が有るのでそこから出て後は自由に過ごしなさい。この空間もしばらくすれば消滅するからそれと一緒に死んでも一向に構いませんよ』

「ははは!いい様だ、自分のこれまでの言動が全て返ってきたじゃないか!?これでお別れになるが、精々達者で暮らすんだな」

そうして吉宗とフローディアの2人が光の間に入るとその入り口の扉は消え、空間に俺1人が取り残された。

(ちくしょう、ちくしょう、ちくしょう!長谷川の奴、俺を馬鹿にしやがって。あのフローディアって奴にも絶対に復讐してやるぞ!?)

『面白い・・・人の中にも貴様の様に性根の腐った輩が居るとはな。ならば、わしが貴様に力を与えてやろうか?』

すると、今度は黒いローブを纏った老人が姿を現した。

『わしの名は邪神ヴェルド、デウスに逆らい人の世を弄ぶ者』

「ほ~あんたが俺に力を貸してくれるって言うのか?」

『うむ、貴様の様な奴をこの世界に放てばどの様に人の世を弄んでくれるのか見物だろうからな』

「じゃあ俺にもさっきの長谷川みたいに何かスキルと能力変更を与えてくれ!俺は戦う事よりも商売の方が得意だから魔王の側に付いて武器を作って売る鍛冶屋として勇者を返り討ちにするのに協力するわ」

『お前自身は一切戦わず血で汚れる事も無く魔族の手で勇者を始末させようとは、本当に面白い奴だ!こちらの闇の間に入り欲しいスキルを選ぶが良かろう』

すると光の間の反対側に深い闇に包まれた扉が現れる、躊躇無く俺が入るのを見ると邪神は残忍な笑顔をしながら後に続き闇の扉が消えると青白い光で包まれた空間は徐々に崩壊し無に戻ったのだった。

闇の間の中にはテーブルが有り、そのテーブルの上に辞書の様な物が有った。

『その辞書の中に有る物から好きなスキルを選ぶが良い、ただし選ぶ事が出来るのは9個までだ。慎重に選んで決めるのだぞ』

スキルを選ぶ前にステータスをまずは変えてもらう。

名前 越後屋 光圀

職業 鍛冶屋 LV1

HP 999

MP 999

力 999

魔力 999

体力 999

素早さ 999

物理防御 999(力と体力の平均値)

魔法防御 999(魔力と体力の平均値)

武器製作 LV1

武器追加効果付与 LV1

とりあえず、上級のモンスターに襲われても返り討ちに出来る強さにしてもらった。鍛冶屋のLVが上がればこの数値も上昇していくそうだから最終的に自分の手で勇者の長谷川を倒してみるのも面白そうだな。そして鍛冶屋として生活していく中で必要と思える物、また少しでもお金を使わなくて済むスキルを厳選した結果以下のものとなった。

万能言語【全ての種族との会話が可能】

複製【目の前に有る物と全く同じ物を作り出す、お金や武器などは複製不可だが鉱物類は可能】

鑑定【目の前に有る物の価値や性能を診断する、武器の残りの耐久力も分かる】

修復【目の前に有る物を生まれた状態に戻す事が出来る、生物は不可だが武器類は例え破損していても元に戻す事が可能】

融合【武器同士、もしくは武器と魔宝石を組み合わせ新たなる装備を作る事が出来る】

結界【自らが戦う意思が無い場合に一定範囲内において全ての攻撃を無効化する】

作業効率化【似た様な作業を繰り返す程作業時間が短縮される、長い時間を掛けて武器を作る事の多い鍛冶屋には必須スキル】

アイテムボックス【異空間に魔力の数値分の種類のアイテムと魔力の数値分の個数を収められるレアスキル。現在999種類のアイテムを999個ずつ格納可能】

世界地図【この世界のありとあらゆる場所を網羅している地図、拡大縮小だけでは無くダンジョン内のトラップの位置等も全て分かる為非常に便利。最新機能も随時追加更新されるので更新のお知らせ時には要チェック】

武器製作と武器追加効果付与もそれぞれLV1だがLVが上がっていけばより等級の高い武器や追加効果が複数付いた物も作れる様になるそうだ。

こうして、これから生きていく為に必要なスキルやステータスの変更をしてもらいヴェルドから最後の餞別としてロングソード1本と袋入りの鉄鉱石20kgを3袋にお金も100G(ゴールド)を貰い闇の間を後にする。

『これからお前がどうやって世界を弄んでゆくか、楽しみにみているよ』

ヴェルドの言葉を聞きながら、こちらの世界に降りたら早速現在地を調べて魔族の領土に向かう準備を始めようといまだ衰えない長谷川とフローディアへの復讐心を胸に新たな世界への第一歩を踏み出したのだった。
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