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第31話 最後のあがきで用意される人質、復讐相手の1人ヴェルドの最期
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デウスが邪神を崇める神殿を少しずつ壊し始めた。 最初の1つさえ見つけてしまえば、後はそれと似た波動の場所を探すだけで良いらしく人族の3つと魔族の1つまで順調に破壊出来た。
俺の予想だと、最後の1つになる前にヴェルドは何かしらの行動を起こすと考えている。俺が今ではデウスさえ裏で従えていると気付けば、直接俺の前に姿を現して命乞いもしくは何かしらの提案で助命してもらおうとするだろう。いつヴェルドが来ても良い様に、アイテムボックスの1番手前に双神殺を置いてすぐに抜く事が出来る様に練習も重ねている。
そして、俺の予想していた日が訪れる。その日、俺は日課となっていた包丁や鍬等をサーラ達の前で打っていた。すると、店の前で
『ごめんください』
っと声がするので、リィナが様子を見に行ってくれた。 産まれてくる子に障らない様に、無理な事はしていないから大丈夫だろう。 しばらくすると、リィナが俺を呼びに来た。
「ミツクニ様、人族の男の方がミツクニ様に交渉事が有るそうで店の中でお呼びです」
「交渉事? ・・・もしかしたら、ようやく来たかもしれないな。 サーラ達も一緒に来い、セレスはもしもの時はヴェルドからサーラ達やラケシスを守ってやってくれ」
「分かったわ」
店の中を見ると、入り口付近に懐かしい奴隷屋の主が立っていた。デウスが出て行ったタイミングでも見計らっていた様だ、ヴェルドが姿を変えていると既に分かっているから余計に腹立たしい、サーラ達は初めに自分達を俺に売り払った男の顔をみて顔を蒼白にしている。
「よお、奴隷屋。 今日は何の用だ?」
『いえ、お客様に特上の品物をご用意出来ましたので、ぜひご購入して頂こうとここまで参りました』
「ほお、それはどのような物なんだ?」
『それは・・・こちらになります!?』
奴隷屋の主は手元で隠し持っていた鎖を勢い良く引いた、するとジャリンと鎖の擦れる様な音と共に、入り口から1人の女性が身包みを全て剥がされ全裸の状態で皆の前に引きずり出される。
「お母様!?」
その女性は、サーラの生まれ故郷で1人残っていたサーラの母親だった。
「おい、これは何の真似だ?」
『何の真似と言われましても、特上の品物をご用意出来たので今すぐ買って頂こうとお持ちしただけですよ』
「幾らで売るんだ?」
『お金は必要ありません、別の物でお支払い下さい。あなたならば、すぐにでもお支払い出来る筈だ』
「では、何が欲しいんだ?」
『私の命の保証』
そう言うと奴隷屋の主の身体が煙に包まれ、本来の姿に戻った。
「ヴェルド、そんな脅しが俺に通じるとでも思っているのか!?」
『ええ、通じますとも。あなたが大切にしている女性の母親を見殺しにする訳が無い。何よりその女性の目の前で母親が死ぬ姿は絶対に見せられないからな!』
ヴェルドはサーラの母親を自分の前に盾にする様に立たせ、俺がその脅しに屈する様に尚強い口調で命令してくる。
『ほら、早く誓え!俺の命は決して奪わないと。でなければ、この女性の手と足の指が1本ずつ無くなっていく事になるよ?』
善良な奴ならば、ここで屈していただろう。だが、俺は違う。俺にはこのセリフこそ、ヴェルドが追い詰められて焦っている証拠だと分かっていた。
「おい、ヴェルド。お前、自分が言った言葉の内容に気付いているのか?人質はな、生身で返すからこそ価値が有るんだ。傷つけたりしようものなら、より凄惨な報復を受けるだけだ。お前は、自分で追い詰められて焦っている事を自白した様なもんなんだよ!」
『お前は言っている事が分かっているのか!?貴様の様な奴は交渉すらまともにしようとせんのか!』
「お前は最初に会った時に言っていただろうが!?『これからお前がどうやって世界を弄んでゆくか、楽しみにみているよ』と。だから言われた通り、お前を弄んで殺すのさ。俺にどうやって殺されるのか楽しみに思って貰えないと困るんだがな」
『もはや、これまでなのか!?ならば、せめてこの女だけでも道連れにしてやる!』
「遅えよ」
俺は双神殺をヴェルドに向け全力で投げた、ヴェルドは正面に女を肉の壁にするつもりの様だがそれこそ悪手だ。双神殺はヴェルドとフローディアしか傷つける事が無い、ならばサーラの母親に当たったらどうなるのかと言えば、そのまま身体を通過してその後ろに居るヴェルドに突き刺さるだけだった。
『ぎゃああ!? な、なんでこの女の身体を通り抜けた上にわしの身体に刺さるのだ!?』
「当たり前だろ!?その武器は、お前とフローディアを殺す為だけに作った俺だけの武器だ。お前には最初から盾なんて無かったんだよ!?」
『このままでは終わらぬ、終わらせてたまるものか・・・この中の誰か1人でも道連れにして、デウスを多少なりとも困らせてやる』
「それは叶いませんよ」
ヴェルドの背後から声がすると、無数の光の矢がヴェルドの背後に突き刺さりハリネズミの様な姿になった。
『デ、デウス!? お前は残り2つの神殿の1つを壊しに行った筈だ!?』
「ああ、その事ですか? 場所さえ分かっていれば、この店の屋上からでも壊す事など簡単です。 わたしはずっと屋根の上からあなたの様子を伺っていたのに気付かないとは・・・愚かな事です」
『デウス~!?』
「もう言い残す事も無いよな?っていうか、聞いてやる気も無いからさっさと死んでくれ。じゃあな」
『ま、待ってくれ!?』
俺はヴェルドに刺さったままになっている双神殺を握ると、そのままヴェルドを細切れにする。ヴェルドの肉片から黒い煙の様な物が立ち上るが、デウスがそれに白く光る炎を放つとその煙は一瞬で燃え広がり、そして消えた。
「先程の黒い煙がヴェルドの魂だったので、全て焼き尽くしておきました」
デウスは単純作業の報告の様に、淡々と言ってくる。同じ神の仲間という意識は当の昔に無くしていたのだろう。ヴェルドの奴にはもっと別に相応しい殺し方が有ったのかもしれないが仕方ない。復讐相手の1人を殺す事が出来た、残りはフローディアだけだ。俺達の運命を弄んできた者の最期の刻がゆっくりと近づいていた。
俺の予想だと、最後の1つになる前にヴェルドは何かしらの行動を起こすと考えている。俺が今ではデウスさえ裏で従えていると気付けば、直接俺の前に姿を現して命乞いもしくは何かしらの提案で助命してもらおうとするだろう。いつヴェルドが来ても良い様に、アイテムボックスの1番手前に双神殺を置いてすぐに抜く事が出来る様に練習も重ねている。
そして、俺の予想していた日が訪れる。その日、俺は日課となっていた包丁や鍬等をサーラ達の前で打っていた。すると、店の前で
『ごめんください』
っと声がするので、リィナが様子を見に行ってくれた。 産まれてくる子に障らない様に、無理な事はしていないから大丈夫だろう。 しばらくすると、リィナが俺を呼びに来た。
「ミツクニ様、人族の男の方がミツクニ様に交渉事が有るそうで店の中でお呼びです」
「交渉事? ・・・もしかしたら、ようやく来たかもしれないな。 サーラ達も一緒に来い、セレスはもしもの時はヴェルドからサーラ達やラケシスを守ってやってくれ」
「分かったわ」
店の中を見ると、入り口付近に懐かしい奴隷屋の主が立っていた。デウスが出て行ったタイミングでも見計らっていた様だ、ヴェルドが姿を変えていると既に分かっているから余計に腹立たしい、サーラ達は初めに自分達を俺に売り払った男の顔をみて顔を蒼白にしている。
「よお、奴隷屋。 今日は何の用だ?」
『いえ、お客様に特上の品物をご用意出来ましたので、ぜひご購入して頂こうとここまで参りました』
「ほお、それはどのような物なんだ?」
『それは・・・こちらになります!?』
奴隷屋の主は手元で隠し持っていた鎖を勢い良く引いた、するとジャリンと鎖の擦れる様な音と共に、入り口から1人の女性が身包みを全て剥がされ全裸の状態で皆の前に引きずり出される。
「お母様!?」
その女性は、サーラの生まれ故郷で1人残っていたサーラの母親だった。
「おい、これは何の真似だ?」
『何の真似と言われましても、特上の品物をご用意出来たので今すぐ買って頂こうとお持ちしただけですよ』
「幾らで売るんだ?」
『お金は必要ありません、別の物でお支払い下さい。あなたならば、すぐにでもお支払い出来る筈だ』
「では、何が欲しいんだ?」
『私の命の保証』
そう言うと奴隷屋の主の身体が煙に包まれ、本来の姿に戻った。
「ヴェルド、そんな脅しが俺に通じるとでも思っているのか!?」
『ええ、通じますとも。あなたが大切にしている女性の母親を見殺しにする訳が無い。何よりその女性の目の前で母親が死ぬ姿は絶対に見せられないからな!』
ヴェルドはサーラの母親を自分の前に盾にする様に立たせ、俺がその脅しに屈する様に尚強い口調で命令してくる。
『ほら、早く誓え!俺の命は決して奪わないと。でなければ、この女性の手と足の指が1本ずつ無くなっていく事になるよ?』
善良な奴ならば、ここで屈していただろう。だが、俺は違う。俺にはこのセリフこそ、ヴェルドが追い詰められて焦っている証拠だと分かっていた。
「おい、ヴェルド。お前、自分が言った言葉の内容に気付いているのか?人質はな、生身で返すからこそ価値が有るんだ。傷つけたりしようものなら、より凄惨な報復を受けるだけだ。お前は、自分で追い詰められて焦っている事を自白した様なもんなんだよ!」
『お前は言っている事が分かっているのか!?貴様の様な奴は交渉すらまともにしようとせんのか!』
「お前は最初に会った時に言っていただろうが!?『これからお前がどうやって世界を弄んでゆくか、楽しみにみているよ』と。だから言われた通り、お前を弄んで殺すのさ。俺にどうやって殺されるのか楽しみに思って貰えないと困るんだがな」
『もはや、これまでなのか!?ならば、せめてこの女だけでも道連れにしてやる!』
「遅えよ」
俺は双神殺をヴェルドに向け全力で投げた、ヴェルドは正面に女を肉の壁にするつもりの様だがそれこそ悪手だ。双神殺はヴェルドとフローディアしか傷つける事が無い、ならばサーラの母親に当たったらどうなるのかと言えば、そのまま身体を通過してその後ろに居るヴェルドに突き刺さるだけだった。
『ぎゃああ!? な、なんでこの女の身体を通り抜けた上にわしの身体に刺さるのだ!?』
「当たり前だろ!?その武器は、お前とフローディアを殺す為だけに作った俺だけの武器だ。お前には最初から盾なんて無かったんだよ!?」
『このままでは終わらぬ、終わらせてたまるものか・・・この中の誰か1人でも道連れにして、デウスを多少なりとも困らせてやる』
「それは叶いませんよ」
ヴェルドの背後から声がすると、無数の光の矢がヴェルドの背後に突き刺さりハリネズミの様な姿になった。
『デ、デウス!? お前は残り2つの神殿の1つを壊しに行った筈だ!?』
「ああ、その事ですか? 場所さえ分かっていれば、この店の屋上からでも壊す事など簡単です。 わたしはずっと屋根の上からあなたの様子を伺っていたのに気付かないとは・・・愚かな事です」
『デウス~!?』
「もう言い残す事も無いよな?っていうか、聞いてやる気も無いからさっさと死んでくれ。じゃあな」
『ま、待ってくれ!?』
俺はヴェルドに刺さったままになっている双神殺を握ると、そのままヴェルドを細切れにする。ヴェルドの肉片から黒い煙の様な物が立ち上るが、デウスがそれに白く光る炎を放つとその煙は一瞬で燃え広がり、そして消えた。
「先程の黒い煙がヴェルドの魂だったので、全て焼き尽くしておきました」
デウスは単純作業の報告の様に、淡々と言ってくる。同じ神の仲間という意識は当の昔に無くしていたのだろう。ヴェルドの奴にはもっと別に相応しい殺し方が有ったのかもしれないが仕方ない。復讐相手の1人を殺す事が出来た、残りはフローディアだけだ。俺達の運命を弄んできた者の最期の刻がゆっくりと近づいていた。
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