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アツモリ、地獄の養成所へ行く
第80話 巨人の襲撃!
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「おい!これで何体目だ!!」
「そんなのイチイチ数えてる訳ないでしょ!ウチが聞きたいくらいよ!!」
敦盛と満里奈が互いに罵声を浴びせるかのように怒鳴ったが、不死生物と化した魔物が次々と現れる!ついさっきまで血塗れの巨大カエル4体とやりあっていたのに、その戦闘が終わって1分もしないうちに、今度は頭を潰された大型のキノコ生物2匹が現れたのだ!
戦闘そのものはアッサリ終ったけど、敦盛だけでなくバネットやモコもウンザリ顔だ。
「・・・ルシーダ、おかしくないか?」
エミーナは隣にいたルシーダに聞いたけど、そのルシーダも首を縦に振った。
「・・・さっきから出現率が半端じゃあないわね」
「その通り。しかも、大半が腕や足、中には頭を潰されているのはおかしいと思わないか?」
「その通りね。何か鈍器のような物で攻撃され、それが致命傷になって死んだ魔物たちが不死生物化したとしか思えません。刃物傷が原因で死んだ魔物が一つもいないのは不自然過ぎます」
「その通りだ。恐らく、その謎が解ければ大量の不死生物化した魔物の謎も解ける」
「でしょうね」
ルシーダは「はーー」とため息をついたけど、それはエミーナも同じだった。目的地の『地獄の養成所』の壁が見えているのに全然近づけないから歯軋りしているが、歯軋りすれば問題が解決する訳でもないから、余計に苛立つのだ。
「あっ!あれは何?」
突然、シルフィが右手の指を前に突き出しながら叫んだ。シルフィはエルフだから優れた弓手でもある。視力が人間の数倍も優れているから、エミーナやルシーダたちから見たら豆粒みたいな物でもハッキリと見えるのだ!
「う、嘘でしょ・・・」
シルフィは絶句しながら右の腰から弓を手に取り右手で矢を持った。さっきまで戦闘中でもノホホンとしていたシルフィの態度と表情が変わったから、敦盛やバネットたちも一斉にシルフィの視線の先に注目した。
その豆粒みたいな物が徐々に敦盛たちに近付いてきたが・・・その姿が何か分かった時、バネットとモコが茫然と呟いた。
「ま、まさか、あれは巨人・・・」
「アリアドネ周辺で巨人が出現したという記録は今までありません・・・」
敦盛も気付いたが、遠くから人間が歩いて来るのを・・・だが、あれは人間ではない!なぜなら・・・頭や腕が吹っ飛んでいる甲冑を来た人間、いや既に死んでるとしか思えないから不死生物と化した人間を引き連れた、見た目は半裸の男、いや、人間よりも2倍くらい背の高く筋肉隆々の存在、つまり巨人がこっちに向かってきていたからだ!!それも2体だ!!!
「大地の巨人だ!」
エミーナが絶叫した!
「ちょ、ちょっと待ってよ!あの巨人も不死生物なのお!?」
「違う!巨人は普通の存在だ!6体の不死生物は死霊、いや、それなら人としての意識を持ち合わせているから恐らく亡骸だ!!」
満里奈は一瞬、戸惑いの声を上げたが、それを打ち消すかのようにエミーナが声を荒げた!たしかに6人の人間がいたが、一人は右手をダラリとさげて右半身が半ば潰れているし、一人は顔が膨れ上がって手足は青痣だらけで、一人は頭が半分ぶっ飛んでいるし、残る3人は首から上が潰されて原状を留めてない!!そんな人間が歩くなど絶対にあり得ない!!!
2体の大地の巨人が右手に持つ棍棒を振りかぶりながら接近してきたが、さすがの敦盛も自分より遥かに巨大な生物と対戦した事がない!ゴブリンキングどころか霜の巨人をも凌駕する巨体に、敦盛は思わず『チイッ』と舌打ちしたほどだ。
バネットとモコは右の大地の巨人に、敦盛と満里奈は左の大地の巨人に突進した!
「はあああああああああああああ!」
モコが大地の巨人に気合の声を上げながら突っ込んでいった!その両手からは水しぶきが上がっている。という事は、モコは大地の巨人の特性を知っていて突っ込んでいったのだ!
「ぬおおおおおおおおおおおおお!」
敦盛は素早く動き、大地の巨人が棍棒を振り下ろす前に懐に飛び込んで最初の一撃を加えた!だが殆ど効いてないとしか思えぬ動きで棍棒を振り下ろしたから、敦盛は素早くかわした。
「はあああああああああああああああああああああああああああああああああ!」
敦盛が大地の巨人の棍棒をかわした瞬間、満里奈はがら空きになった大地の巨人の腰に強力な左の拳を放った!だが、大地の巨人に全然ダメージを与えているようには見えない!
「マリナさん!巨人族は分類上は妖精です!猛毒の追加効果は期待できません!」
「うっそー!」
「しかも鋼のような筋肉を持っています!金属鎧より硬いです!」
「勘弁してよー!」
「それにヒドラもキングヒドラも蛇の魔獣ですから、『キングヒドラの手袋』は大地の属性を持っている筈です!大地の属性を持つ大地の巨人に大地の属性の攻撃をしてもダメージは与えられるけど、効果はイマイチです!!」
「それを一番先に言ってよ!!」
ココアは絶叫するかのように叫んだが、ココアの短剣では巨人に殆どダメージを与えられない!だから攻撃手段が無くて、普段は無表情のココアが歯軋りしているほどだ。
満里奈は大地の巨人の棍棒を避けながらココアに文句を言ったけど髪の毛が数本舞っている!棍棒の威力も半端ない!!というより巨体にも関わらず敏捷性が人間とそう変わらないのだから、厄介な敵だ!
「眠れぬ者たちよ!我が言葉に耳を傾け、安息の地に赴け!」
ルシーダの言葉と共に6体の亡骸が白い炎に包まれた!その炎が消えた時、6体の亡骸は一斉に地面に倒れ、そのまま粉のようになって形を留めなくなった。
ルシーダの呪文『退魔』により、魂を失った人間の死体が浄化され、土に帰ったのだ!これで2体の巨人に攻撃を集中できる!!
【ここは赤き世界、全てを焼き尽くすところ・・・】
エミーナが呪文の詠唱を始めたが、さすがに上位魔法は詠唱に時間が掛かる。でも、エミーナの真剣な眼差しから、勝負に行ったというのは容易に想像できる!
「我が名はシルフィ!風の王ジンよ、その力を持って我が敵を切り裂け!!」
初めてシルフィの超真面目な声が響き渡り、その直後、上空に半透明な巨人、風の上位精霊が出現した!
「アツモリさん!マリナさん!下がって!!!」
ココアが警告を与えたので敦盛と満里奈は飛びのき、そのまま右側のもう1体の大地の巨人と戦うバネットとモコに加勢した。
その風の上位精霊が左手を掲げた時、左の大地の巨人の周囲に竜巻のような巨大な渦が出現した!!たちまち大地の巨人の体から真っ赤な血が噴き出し、竜巻まで真っ赤に染まったが、それでも大地の巨人は立っている!!凄まじいとしか言いようがない生命力だが、竜巻の威力は凄まじく大地の巨人の体から血がどんどん吹き出し、とうとう大地の巨人は棍棒を落とし左膝をついた!
【・・・我が敵を包み込め!全てを焼き尽くす地獄の炎よ!!】
エミーナの呪文、炎系の最強呪文『灼熱地獄』が完成し、今度は大地の巨人の周囲に巨大な火柱が上がった!たちまち周囲に肉の焼ける嫌な臭いが立ち込め、それと同時に大地の巨人の巨体が地面に『ズシーン』とうつ伏せに倒れた!
そのまま火柱は大地の巨人を焼き尽くし、火柱が消えた時には嫌な臭いと灰になった大地の巨人が残っただけだった。
その灰も消え去り、そこには大きな緑色の魔石が転がった。
もう1体の大地の巨人には敦盛たち4人が代わる代わる襲い掛かって猛攻を加えていた。
さすがの大地の巨人も4方向から代わる代わる攻められ、モコからは弱点である水の攻撃を加えられているから徐々に動きは鈍くなっている。その大地の巨人が最後の力を込めて右手の棍棒を振り上げた瞬間、バネットが一気に飛び込んで聖剣を大地の巨人の心臓に突き刺した!
” ズッシーーーーーーーーーン ”
とうとう大地の巨人は仰向けに倒れ、しばらく痙攣していたが、やがて動きを止め、白く光ったと思ったら緑色の魔石に姿を変えた。
「うわっ!わたしも巨人の魔石は初めて見たけど、わたしの頭より大きいよ!!」
ココアが歓喜の表情で魔石を拾ったけど、相当重いようで1個でも持ち上がらない程だ。仕方ないからココアと満里奈の二人で持ち上げてエミーナの魔法の巾着袋に入れた程だ。
「・・・エミーナちゃーん、重くない?」
「ぜーんぜん」
「マジ!?」
「でもさあ、これ、出す時が大変だよ。二人同時に手を突っ込むか肉体強化で相当筋力を上げておかないと、魔法の巾着袋から姿を現した途端、足の上に落として骨折確定だからね」
「あー、たしかに」
満里奈とエミーナが笑いながら話しているし、ココアもシルフィもニコニコ顔だ。4人は「これ1個でどの位のお金になるのかなあ」などと話していて、ここが戦場だというのを一時的に忘れている程だ。
「・・・あれっ?魔石がないぞ?」
敦盛は消滅した亡骸がいた所へ行ったが、亡骸が魔石を落としていかなかったから、思わずルシーダの方を向いたが、そのルシーダはニコッと微笑みながら
「当たり前です。亡骸というのは魂を失った人間の死体が、瘴気によって不死生物化したものですから、魔物が不死生物化した物ではありません。私個人としては、人の死体を弄ぶのが許せなかったから、本来の姿に戻しただけです」
「つまり、ルシーダとしては死者への弔い、いわば情けをかけたって事かあ?」
「簡単に言えばそうなります。『退魔』は魔物が不死生物化した時でも有効な攻撃呪文になりますが、フロッガーとかオバケキノコ程度のレベル相手に『退魔』を連発したら、単なる魔法力の無駄遣いになりますよ」
そう言ったかと思ったらルシーダは急に真面目な顔になり、胸元でバレンティノの聖印を切った。敦盛はルシーダが恐らく死者に対して祈りの言葉を言ってるのであろうと思ったが、それが何を意味するのかまでは分からなかった。
そんな敦盛の隣でバネットとモコは亡骸が残した服や鎧をつぶさに見てるが、それを見て表情が曇った。
バネットは顔を上げると敦盛の顔を見た。
「アツモリ様、さっきの亡骸の正体が分かりました」
「本当か?」
「あの亡骸たち、腐敗の具合からして最近死亡した者たちです。しかも服や鎧の紋章は大公家の物です」
「という事は・・・」
「不死生物化するのが早すぎます!絶対に子爵夫人は何かを隠しています!だから大慌てで立入禁止にしたとしか思えません!」
「そうかもしれないな」
「グロリア大公の騎士団と私兵は全滅しました。戦の守護者アルマーニの紋章が入った首飾が6つあるという事は、グロリア大公は全滅覚悟で送り出したのは間違いありません。この首飾があったから、彼らの魂は『喜びの野』に行ったんでしょうけど、まさかこんなに早く肉体が不死生物化するとはグロリア大公も想像してなかったんでしょうね」
「という事は、亡骸はまだ出てくるって事ですかあ!?」
「恐らく。多分ですけど、子爵の騎士たちは全滅覚悟で挑んでません。亡骸ではなく死霊となって彷徨ってる可能性もあるし、亡骸だと思ってると痛い目にあいます。何しろ自分は生きてると勘違いして『オレを攻撃するとは何事だ!』などと反撃してくる可能性大ですから」
「勘弁してくれー」
「まあまあ、そんなに嫌ならエミーナ様の炎系の呪文で一気に焼いてもらうか、ルシーダ様の退魔で神の元へ送ってしまえばいいのです」
「はーー・・・そうしてくれー。俺は人間の死体以外に専念させて欲しいぞー。もう巨人ともやり合いたくないし」
「その巨人も2体だけとは限りませんよ」
「勘弁してよー」
「ですが・・・ここで新たな疑問も増えました」
バネットはそう言って立ち上がったけど、その視線の先にはレパード子爵の別荘、通称『地獄の養成所』があった。
「大地の巨人はドルチェガッバーナ王国周辺には絶対にいない種族。だれかが故意に別荘周辺に置いたとしか思えない・・・」
「そんなのイチイチ数えてる訳ないでしょ!ウチが聞きたいくらいよ!!」
敦盛と満里奈が互いに罵声を浴びせるかのように怒鳴ったが、不死生物と化した魔物が次々と現れる!ついさっきまで血塗れの巨大カエル4体とやりあっていたのに、その戦闘が終わって1分もしないうちに、今度は頭を潰された大型のキノコ生物2匹が現れたのだ!
戦闘そのものはアッサリ終ったけど、敦盛だけでなくバネットやモコもウンザリ顔だ。
「・・・ルシーダ、おかしくないか?」
エミーナは隣にいたルシーダに聞いたけど、そのルシーダも首を縦に振った。
「・・・さっきから出現率が半端じゃあないわね」
「その通り。しかも、大半が腕や足、中には頭を潰されているのはおかしいと思わないか?」
「その通りね。何か鈍器のような物で攻撃され、それが致命傷になって死んだ魔物たちが不死生物化したとしか思えません。刃物傷が原因で死んだ魔物が一つもいないのは不自然過ぎます」
「その通りだ。恐らく、その謎が解ければ大量の不死生物化した魔物の謎も解ける」
「でしょうね」
ルシーダは「はーー」とため息をついたけど、それはエミーナも同じだった。目的地の『地獄の養成所』の壁が見えているのに全然近づけないから歯軋りしているが、歯軋りすれば問題が解決する訳でもないから、余計に苛立つのだ。
「あっ!あれは何?」
突然、シルフィが右手の指を前に突き出しながら叫んだ。シルフィはエルフだから優れた弓手でもある。視力が人間の数倍も優れているから、エミーナやルシーダたちから見たら豆粒みたいな物でもハッキリと見えるのだ!
「う、嘘でしょ・・・」
シルフィは絶句しながら右の腰から弓を手に取り右手で矢を持った。さっきまで戦闘中でもノホホンとしていたシルフィの態度と表情が変わったから、敦盛やバネットたちも一斉にシルフィの視線の先に注目した。
その豆粒みたいな物が徐々に敦盛たちに近付いてきたが・・・その姿が何か分かった時、バネットとモコが茫然と呟いた。
「ま、まさか、あれは巨人・・・」
「アリアドネ周辺で巨人が出現したという記録は今までありません・・・」
敦盛も気付いたが、遠くから人間が歩いて来るのを・・・だが、あれは人間ではない!なぜなら・・・頭や腕が吹っ飛んでいる甲冑を来た人間、いや既に死んでるとしか思えないから不死生物と化した人間を引き連れた、見た目は半裸の男、いや、人間よりも2倍くらい背の高く筋肉隆々の存在、つまり巨人がこっちに向かってきていたからだ!!それも2体だ!!!
「大地の巨人だ!」
エミーナが絶叫した!
「ちょ、ちょっと待ってよ!あの巨人も不死生物なのお!?」
「違う!巨人は普通の存在だ!6体の不死生物は死霊、いや、それなら人としての意識を持ち合わせているから恐らく亡骸だ!!」
満里奈は一瞬、戸惑いの声を上げたが、それを打ち消すかのようにエミーナが声を荒げた!たしかに6人の人間がいたが、一人は右手をダラリとさげて右半身が半ば潰れているし、一人は顔が膨れ上がって手足は青痣だらけで、一人は頭が半分ぶっ飛んでいるし、残る3人は首から上が潰されて原状を留めてない!!そんな人間が歩くなど絶対にあり得ない!!!
2体の大地の巨人が右手に持つ棍棒を振りかぶりながら接近してきたが、さすがの敦盛も自分より遥かに巨大な生物と対戦した事がない!ゴブリンキングどころか霜の巨人をも凌駕する巨体に、敦盛は思わず『チイッ』と舌打ちしたほどだ。
バネットとモコは右の大地の巨人に、敦盛と満里奈は左の大地の巨人に突進した!
「はあああああああああああああ!」
モコが大地の巨人に気合の声を上げながら突っ込んでいった!その両手からは水しぶきが上がっている。という事は、モコは大地の巨人の特性を知っていて突っ込んでいったのだ!
「ぬおおおおおおおおおおおおお!」
敦盛は素早く動き、大地の巨人が棍棒を振り下ろす前に懐に飛び込んで最初の一撃を加えた!だが殆ど効いてないとしか思えぬ動きで棍棒を振り下ろしたから、敦盛は素早くかわした。
「はあああああああああああああああああああああああああああああああああ!」
敦盛が大地の巨人の棍棒をかわした瞬間、満里奈はがら空きになった大地の巨人の腰に強力な左の拳を放った!だが、大地の巨人に全然ダメージを与えているようには見えない!
「マリナさん!巨人族は分類上は妖精です!猛毒の追加効果は期待できません!」
「うっそー!」
「しかも鋼のような筋肉を持っています!金属鎧より硬いです!」
「勘弁してよー!」
「それにヒドラもキングヒドラも蛇の魔獣ですから、『キングヒドラの手袋』は大地の属性を持っている筈です!大地の属性を持つ大地の巨人に大地の属性の攻撃をしてもダメージは与えられるけど、効果はイマイチです!!」
「それを一番先に言ってよ!!」
ココアは絶叫するかのように叫んだが、ココアの短剣では巨人に殆どダメージを与えられない!だから攻撃手段が無くて、普段は無表情のココアが歯軋りしているほどだ。
満里奈は大地の巨人の棍棒を避けながらココアに文句を言ったけど髪の毛が数本舞っている!棍棒の威力も半端ない!!というより巨体にも関わらず敏捷性が人間とそう変わらないのだから、厄介な敵だ!
「眠れぬ者たちよ!我が言葉に耳を傾け、安息の地に赴け!」
ルシーダの言葉と共に6体の亡骸が白い炎に包まれた!その炎が消えた時、6体の亡骸は一斉に地面に倒れ、そのまま粉のようになって形を留めなくなった。
ルシーダの呪文『退魔』により、魂を失った人間の死体が浄化され、土に帰ったのだ!これで2体の巨人に攻撃を集中できる!!
【ここは赤き世界、全てを焼き尽くすところ・・・】
エミーナが呪文の詠唱を始めたが、さすがに上位魔法は詠唱に時間が掛かる。でも、エミーナの真剣な眼差しから、勝負に行ったというのは容易に想像できる!
「我が名はシルフィ!風の王ジンよ、その力を持って我が敵を切り裂け!!」
初めてシルフィの超真面目な声が響き渡り、その直後、上空に半透明な巨人、風の上位精霊が出現した!
「アツモリさん!マリナさん!下がって!!!」
ココアが警告を与えたので敦盛と満里奈は飛びのき、そのまま右側のもう1体の大地の巨人と戦うバネットとモコに加勢した。
その風の上位精霊が左手を掲げた時、左の大地の巨人の周囲に竜巻のような巨大な渦が出現した!!たちまち大地の巨人の体から真っ赤な血が噴き出し、竜巻まで真っ赤に染まったが、それでも大地の巨人は立っている!!凄まじいとしか言いようがない生命力だが、竜巻の威力は凄まじく大地の巨人の体から血がどんどん吹き出し、とうとう大地の巨人は棍棒を落とし左膝をついた!
【・・・我が敵を包み込め!全てを焼き尽くす地獄の炎よ!!】
エミーナの呪文、炎系の最強呪文『灼熱地獄』が完成し、今度は大地の巨人の周囲に巨大な火柱が上がった!たちまち周囲に肉の焼ける嫌な臭いが立ち込め、それと同時に大地の巨人の巨体が地面に『ズシーン』とうつ伏せに倒れた!
そのまま火柱は大地の巨人を焼き尽くし、火柱が消えた時には嫌な臭いと灰になった大地の巨人が残っただけだった。
その灰も消え去り、そこには大きな緑色の魔石が転がった。
もう1体の大地の巨人には敦盛たち4人が代わる代わる襲い掛かって猛攻を加えていた。
さすがの大地の巨人も4方向から代わる代わる攻められ、モコからは弱点である水の攻撃を加えられているから徐々に動きは鈍くなっている。その大地の巨人が最後の力を込めて右手の棍棒を振り上げた瞬間、バネットが一気に飛び込んで聖剣を大地の巨人の心臓に突き刺した!
” ズッシーーーーーーーーーン ”
とうとう大地の巨人は仰向けに倒れ、しばらく痙攣していたが、やがて動きを止め、白く光ったと思ったら緑色の魔石に姿を変えた。
「うわっ!わたしも巨人の魔石は初めて見たけど、わたしの頭より大きいよ!!」
ココアが歓喜の表情で魔石を拾ったけど、相当重いようで1個でも持ち上がらない程だ。仕方ないからココアと満里奈の二人で持ち上げてエミーナの魔法の巾着袋に入れた程だ。
「・・・エミーナちゃーん、重くない?」
「ぜーんぜん」
「マジ!?」
「でもさあ、これ、出す時が大変だよ。二人同時に手を突っ込むか肉体強化で相当筋力を上げておかないと、魔法の巾着袋から姿を現した途端、足の上に落として骨折確定だからね」
「あー、たしかに」
満里奈とエミーナが笑いながら話しているし、ココアもシルフィもニコニコ顔だ。4人は「これ1個でどの位のお金になるのかなあ」などと話していて、ここが戦場だというのを一時的に忘れている程だ。
「・・・あれっ?魔石がないぞ?」
敦盛は消滅した亡骸がいた所へ行ったが、亡骸が魔石を落としていかなかったから、思わずルシーダの方を向いたが、そのルシーダはニコッと微笑みながら
「当たり前です。亡骸というのは魂を失った人間の死体が、瘴気によって不死生物化したものですから、魔物が不死生物化した物ではありません。私個人としては、人の死体を弄ぶのが許せなかったから、本来の姿に戻しただけです」
「つまり、ルシーダとしては死者への弔い、いわば情けをかけたって事かあ?」
「簡単に言えばそうなります。『退魔』は魔物が不死生物化した時でも有効な攻撃呪文になりますが、フロッガーとかオバケキノコ程度のレベル相手に『退魔』を連発したら、単なる魔法力の無駄遣いになりますよ」
そう言ったかと思ったらルシーダは急に真面目な顔になり、胸元でバレンティノの聖印を切った。敦盛はルシーダが恐らく死者に対して祈りの言葉を言ってるのであろうと思ったが、それが何を意味するのかまでは分からなかった。
そんな敦盛の隣でバネットとモコは亡骸が残した服や鎧をつぶさに見てるが、それを見て表情が曇った。
バネットは顔を上げると敦盛の顔を見た。
「アツモリ様、さっきの亡骸の正体が分かりました」
「本当か?」
「あの亡骸たち、腐敗の具合からして最近死亡した者たちです。しかも服や鎧の紋章は大公家の物です」
「という事は・・・」
「不死生物化するのが早すぎます!絶対に子爵夫人は何かを隠しています!だから大慌てで立入禁止にしたとしか思えません!」
「そうかもしれないな」
「グロリア大公の騎士団と私兵は全滅しました。戦の守護者アルマーニの紋章が入った首飾が6つあるという事は、グロリア大公は全滅覚悟で送り出したのは間違いありません。この首飾があったから、彼らの魂は『喜びの野』に行ったんでしょうけど、まさかこんなに早く肉体が不死生物化するとはグロリア大公も想像してなかったんでしょうね」
「という事は、亡骸はまだ出てくるって事ですかあ!?」
「恐らく。多分ですけど、子爵の騎士たちは全滅覚悟で挑んでません。亡骸ではなく死霊となって彷徨ってる可能性もあるし、亡骸だと思ってると痛い目にあいます。何しろ自分は生きてると勘違いして『オレを攻撃するとは何事だ!』などと反撃してくる可能性大ですから」
「勘弁してくれー」
「まあまあ、そんなに嫌ならエミーナ様の炎系の呪文で一気に焼いてもらうか、ルシーダ様の退魔で神の元へ送ってしまえばいいのです」
「はーー・・・そうしてくれー。俺は人間の死体以外に専念させて欲しいぞー。もう巨人ともやり合いたくないし」
「その巨人も2体だけとは限りませんよ」
「勘弁してよー」
「ですが・・・ここで新たな疑問も増えました」
バネットはそう言って立ち上がったけど、その視線の先にはレパード子爵の別荘、通称『地獄の養成所』があった。
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