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呆れるほどの蒼穹で③
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今すぐ助けにいかない理由って何なんだ?
多少のリスクを犯してでも、強行突破してハンスを助けたい。
「オレだって団長に何度も確認したよ。でもキミを北の台地まで連れて行けって命令したのは団長なんだ」
ハンスが?
「牢が劣悪な環境なのはキミも知ってるよね? いつ処刑されるか分からない恐怖を抱えながら過ごすのは、オレたちみたいな一端の騎士には耐え難い苦痛だよ。でも団長なら乗り越えられる。キミもそう思うよね?」
俺はハンスが心配で仕方ない。
ハンスとフレデリクの信頼関係に完敗だ。
「……本当に大丈夫なんですか?」
「大丈夫大丈夫。何度も死にかけたけど、あの人は立ち上がって来たんだ。今頃、看守の目を盗んで鍛錬に励んでるよ」
牢の中で腕立て伏せをするハンスを想像した。
「それはちょっと笑えるかも」
「それともう一つ、団長から与えられた使命があるんだ」
フレデリクは声のトーンを一つ落とした。
聞いてはいけないことなのか?
だが、好奇心を抑えられない。
「極秘任務ですか?」
「うーん、まあ、そんなとこかな! ほら、オレって人の懐に入るのが上手でしょ? だからキミを無事送り届けたら、色んな国に行って色んな人から情報をかき集めるんだよ」
「何のために? ハンスが処刑されない方法を見つけるとか?」
「それはキミにも教えられない」
気になるし、俺も連れて行って欲しい。
スパイ活動みたいでカッコイイ!
「連れては行けないよ。団長から怒られるのはオレなんだから、ね?」
フレデリクに釘を刺されてしまった。
「うぅ……。分かりました」
戦力にならない俺が付いて回っても足でまといか。
「さあ、着いたよ。ラムハリから大量の馬を仕入れないといけないなあ」
馬がどれだけ進んでも、荒れ果てた土地であることに変わりなかった。
着いたと言われても、全く実感がない。
ここで一人ぼっちの自給自足生活が始まるのか?
「……ありがとうございます。ここが北の台地……」
「この先をまっすぐ歩けば、人が生活してる。彼らはキミと同じ流刑者だよ」
一人じゃないのか。
いや、逆に荒くれ者の中で生き延びるのは過酷じゃないか?
極秘任務を控えているフレデリクには申し訳ないが、あまりにも心細い。
「流刑者って、大罪人ってことですよね?」
「ここは昔から流刑地として定番だからねぇ。死罪まではいかずとも、結構悪いことをした人が集まるんじゃない?」
やっぱり……。
「でも、それはキミも同じだよ? 事情を知らない人は、ロマーリア王国の中枢を担う宰相を陥れようとした謀反人としてキミを見るだろうね」
この純粋無垢な俺が謀反人とはね。
「だから最初から決めつけずに、その人をちゃんと見れば、ここでの生活も悪くないと思うよ」
「フレディさん……!」
やっぱりフレデリクは悪い人じゃない。
「オレは容姿、世評、中身、全てが美しいから、どこから判断してくれても構わないけどね!」
「…………」
……そろそろ俺の新生活を始めるか。
食べ物の奪い合いくらいは覚悟しておこう!
「フレディさん、本当にありがとうございます。俺、いってきます」
歩き始めた俺をフレデリクが呼び止めた。
「そうそう、団長からの伝言。『必ず迎えに行く。待っていろ』って。幸運を祈るよ!」
「はい!!」
ここから先は未知の領域だ。
王宮の頃みたいに、贅沢な暮らしはできないだろう。
だが、1日でも長く生き延びてやろう。
――必ず迎えに行く。待っていろ――
顔、声、匂い、体温……。
俺が忘れないうちに、早く迎えに来いよな!
多少のリスクを犯してでも、強行突破してハンスを助けたい。
「オレだって団長に何度も確認したよ。でもキミを北の台地まで連れて行けって命令したのは団長なんだ」
ハンスが?
「牢が劣悪な環境なのはキミも知ってるよね? いつ処刑されるか分からない恐怖を抱えながら過ごすのは、オレたちみたいな一端の騎士には耐え難い苦痛だよ。でも団長なら乗り越えられる。キミもそう思うよね?」
俺はハンスが心配で仕方ない。
ハンスとフレデリクの信頼関係に完敗だ。
「……本当に大丈夫なんですか?」
「大丈夫大丈夫。何度も死にかけたけど、あの人は立ち上がって来たんだ。今頃、看守の目を盗んで鍛錬に励んでるよ」
牢の中で腕立て伏せをするハンスを想像した。
「それはちょっと笑えるかも」
「それともう一つ、団長から与えられた使命があるんだ」
フレデリクは声のトーンを一つ落とした。
聞いてはいけないことなのか?
だが、好奇心を抑えられない。
「極秘任務ですか?」
「うーん、まあ、そんなとこかな! ほら、オレって人の懐に入るのが上手でしょ? だからキミを無事送り届けたら、色んな国に行って色んな人から情報をかき集めるんだよ」
「何のために? ハンスが処刑されない方法を見つけるとか?」
「それはキミにも教えられない」
気になるし、俺も連れて行って欲しい。
スパイ活動みたいでカッコイイ!
「連れては行けないよ。団長から怒られるのはオレなんだから、ね?」
フレデリクに釘を刺されてしまった。
「うぅ……。分かりました」
戦力にならない俺が付いて回っても足でまといか。
「さあ、着いたよ。ラムハリから大量の馬を仕入れないといけないなあ」
馬がどれだけ進んでも、荒れ果てた土地であることに変わりなかった。
着いたと言われても、全く実感がない。
ここで一人ぼっちの自給自足生活が始まるのか?
「……ありがとうございます。ここが北の台地……」
「この先をまっすぐ歩けば、人が生活してる。彼らはキミと同じ流刑者だよ」
一人じゃないのか。
いや、逆に荒くれ者の中で生き延びるのは過酷じゃないか?
極秘任務を控えているフレデリクには申し訳ないが、あまりにも心細い。
「流刑者って、大罪人ってことですよね?」
「ここは昔から流刑地として定番だからねぇ。死罪まではいかずとも、結構悪いことをした人が集まるんじゃない?」
やっぱり……。
「でも、それはキミも同じだよ? 事情を知らない人は、ロマーリア王国の中枢を担う宰相を陥れようとした謀反人としてキミを見るだろうね」
この純粋無垢な俺が謀反人とはね。
「だから最初から決めつけずに、その人をちゃんと見れば、ここでの生活も悪くないと思うよ」
「フレディさん……!」
やっぱりフレデリクは悪い人じゃない。
「オレは容姿、世評、中身、全てが美しいから、どこから判断してくれても構わないけどね!」
「…………」
……そろそろ俺の新生活を始めるか。
食べ物の奪い合いくらいは覚悟しておこう!
「フレディさん、本当にありがとうございます。俺、いってきます」
歩き始めた俺をフレデリクが呼び止めた。
「そうそう、団長からの伝言。『必ず迎えに行く。待っていろ』って。幸運を祈るよ!」
「はい!!」
ここから先は未知の領域だ。
王宮の頃みたいに、贅沢な暮らしはできないだろう。
だが、1日でも長く生き延びてやろう。
――必ず迎えに行く。待っていろ――
顔、声、匂い、体温……。
俺が忘れないうちに、早く迎えに来いよな!
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