健康で文化的な異世界生活

三郎吉央

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9.生活改善試行Ⅱ

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昨日、箸の代わりになるような棒の確保に失敗したので今日もメリアに一口ずつ肉をつまんで食べさせてもらっている。

別にメリアの手づかみのア~ンがイヤというわけではないのだけど、どうせなら自分の手で食べたいものだ。

と、3切れ目のお肉をメリアにア~ンしてもらって咀嚼しているとき、メリアの後ろでメイドが肉を切っている様子が見えた。

メイドが肉を切るとき、二本角のフォークで肉を押さえ、ペティナイフのような薄いナイフで肉を切っている。

二本串のフォークは、この前それを使って肉を食べようとして危ないと取り上げられたものだ。

しかし、危なかった理由はあのフォーク、柄と歯の部分が長いのでボクがハンドル部分を持って肉を口元に持って来ようとすると、切っ先が顔に突き刺さりそうになったからだ。

要はあのフォークの柄と歯が短いものがあれば良いのだ。

肉を切っていたメイドの顔をジッと見ていると、メリアが、
「どうしたの?」
と聞いてきた。

「それ、ちょうだい。」

ボクはメイドのフォークを指して言った。

メリアはメイドのフォークを一瞥すると、
「ダメです。」
と、拒否された。

前に自分の顔に突き刺しそうになったからなぁ。
ここまではボクが以前にやらかした危険行為から反対されるであろうと想定済みである。

でもここで折れてはボクの食生活は改善されない。

「ちょうだい?」

もう一度可愛いと思わしき顔でかわいくお願いしてみる。

「……ダメです。」

メリアの心がちょっと揺れているのが分かる。

「ちょ~だい?」

もう一度、かわいく言ってみる。

「……。」

メリアは今度は明確に拒否せず、ちょっと考えている。

少し考えた後メイドから二股のフォークを受け取ると、ボクの前に持ってきた。

ボクが受け取ろうとすると片手でボクの手を取りフォークを握らせると、フォークを握ったボクの手の上から自分の手を添えた。

おそらく危ない様子だったら即座に止めるためだろう。

でも、前回顔に刺さりそうになったし、懲りていたボクは同じことをするつもりはない。
以前はフォークの持ち手の木製の部分を持ったために、刃先が長くなりすぎて顔に刺さりそうになったのだ。

持ち手のハンドル部分を持つと刃先が長すぎるという事なら、もっと刃先寄りの金属の部分を持ち、刃先が短くなるように持てばよい。

ボクは左手でフォークをつかむと、ハンドルを持っている手をずらして刃先を短く持ち、そしてメイドが切り分けてくれた一口大の肉に二本刃のフォークを突き刺して口に運ぶ。

うん。これなら多少食べやすい。

その様子をメリアはキョトンと見ていた。

そんなメリアに、ボクはにっこりと笑って見せた。

それから後もメリアはフォークを持ったボクの手に手を添えたままだったけれど、特に危険なこともなく食事は終わった。

食事の後、ボクはメリアに、
「小さいコレ欲しい。」
と伝えた。

本当は食べやすい大きさの小さいフォークと言いたかったのだが、言葉が不自由なので仕方ない。

とりあえずメリアはウーンと考えていたが、意図は伝わったんじゃないだろうか。

2日後、メリアは刃の部分が小さくて短い2本刃のフォークを持ってきてくれた。

刃の部分はとてもとても短くて1センチもないくらい。

これではパスタは食べられそうもないなぁ。

まあ、これまでパスタが出てきたことがないし今はこれでも十分かな。

ボクはニカっと笑ってフォークを受け取ると、メイドが小さく切ってくれた一口大の肉にフォークを突き刺した。

そして、その肉をメリアの目の前に持って行って、
「ア~ン。」
と言った。

肉を向けられたメリアはキョトンとしていたが、もう一度、
「ア~ン。」
と言うと、少し恥ずかしそうにボクのフォークから肉を食べてくれた。

いつもボクに食べさせてくれるだけで、自分は食べていなかったのが気になっていたんだ。

それに、大好きな人がア~ンって食べてくれたらすごくうれしいものだ。

ボクはご満悦で昼食をとることができた。

出来上がったフォークは考えていたよりもかなり小さめだったけれど、ボクは一人で食事ができるようになったのだ。

生活改善が一つ達成できたぞ。
これからも、もっと生活改善を目指して頑張っていこう。

そう決意してフォークを強く握りしめるのだった。
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