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第一章:都市伝説
第2話 送り主の名
しおりを挟む届いたメールには件名も添付ファイルも何一つ無く、表示されているのは送り主と宛先、そして本文だけだった。
宛先はもちろんこの携帯、本文は意味不明。
となれば、必然的に送り主のアドレスから情報を得ようとするのが必定だ。
例に漏れず、俺もそんな世間一般的な行動に出た。
そしてやはり再度首を傾げる事になる。
送り主の所に書かれていたのは、見たこともないアドレスだった。
@以降に書かれたドメインは「gmail.com」。
そして@以前のアカウント名が。
「うしさん、ごきり……?」
これは「牛さんゴキリ」という事だろうか。
っていうか、何ゴキリって。
もしかして「ゴキブリ」の打ち損じとか?
たまに居るよね、打ち損じに気付かずアドレスにしちゃってる奴。
いやでも「牛さんゴキブリ」もそれはそれで意味不明だな。
っていうか、結局ろくな情報が無いじゃんか。
「gmail」は作り方さえ知ってれば誰でも無料で作れちゃうアドレスだから、大して参考にならないし、こんなメールを送ってくる人間に心当たりなんて無いし。
「貴方の番って俺、誰かとなんかそういう系の約束してたっけ? もしくは懸賞に応募とか? でもそれなら『貴方の番』じゃなくて『貴方は当選しました!』ってな感じで、分かりやすく書くだろうしなぁ……」
なんて思ったところで、大きなあくびが口から漏れた。
いかん、眠い。
まぁ今日も脳を酷使したからな。
っていうか明日も仕事だ。
まだシャワーも浴びてないけど、眠いから明日の朝でも良いか。
それに、この意味不明なメールについても。
「また明日考えよう」
そんなつぶやきを最後に、俺は深い眠りに誘われていった。
後で考えれば、ただのいたずらメールだとか変なリンクを押させようとする悪質なメールとか、そういうものの可能性も考えるべきだったのだろうと思う。
しかしこの時の俺は、何故かそういう方向には物事を考えなかった。
それは、眠くて頭が回らなかったからか。
本文の意味不明加減に心惹かれたからか。
それとも、何か野生の感的なもので自身を取り巻く危機を察知していたからなのか。
或いはその全てが原因だったのかもしれないが、そんな事はどうでもいい。
俺がここで言いたいのはただ一つ。
この日を機に、俺の周りにはちょっと気味の悪いアレコレが起きるようになったのだ。
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