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第一章:都市伝説

第4話 心当たりっていうと

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 俺が「はぁ」と深いため息を吐くと、流石にそれなりに本気で気味悪がっているという事に気付いたのか。
 近藤がちょっと眉をハの字にした。

 そして「うーん、じゃぁ」と言ってくる。

「お前、何か心当たりとか無いの?」
「心当たり?」
「例えば誰かに何かしたとか、そういう何かキッカケになりそうなやつ」

 そう言われ、俺は「うーん」と低く唸った。


 そんな事を言われたって、俺にだって心当たりなんて何一つ無い。
 っていうか、無いからこそ気味悪いんだし。

 そう思った時だった。

「……あ」

 一つだけ、思い当たる節がふと思考の表層に浮上してくる。


 俺のその反応を、近藤は目敏く掬い上げた。

「何? 何かあったのか?」

 そう尋ねてくる彼に、俺はポケットから携帯を探り出す。

「えぇーっと、確かこの辺に……あ、あった」

 呼び出したのは、メール受信画面。
 そう、先日深夜に送られてきたあのメールだ。


 実はあの日の翌日、朝寝坊をしてメールの事を考える余裕は皆無だった。
 そしてそれ以降も何だかんだで忙しく、思わず忘れてしまっていたのだ。

 あんなにも、意味不明で気になるメールだったのに。


 メール画面を呼び出した状態で、俺は近藤にその携帯を手渡した。
 説明するよりも直接見てもらった方が早いと思ったのだ。

 俺の携帯をちょっと怪訝な顔で受け取った近藤は、画面を確認して一層怪訝な顔になった。

「何じゃこりゃ」
「だろ?」

 意味わかんないよな。
 そんな風に同調し、俺は「でも」と言葉を続ける。

「最近あった変なことなんて、そのくらいしか心当たり無いんだよな。誰かの興味や恨みを買うって言ったって、人畜無害で評判な俺の事だし」
「そりゃ一体どこの評判なんだよ」

 っていうか自分で言うな。
 そんな軽口を返されたが、それでも俺は自分の言葉が間違っているとは思わない。

 だって俺は、良くも悪くも事なかれ主義なのだ。
 ちょっとくらいイラッと来ても後の面倒を考えて笑顔で流すし、ポーカーフェイスも得意である。
 『口は災いの元』という言葉があるが、俺は元々口数が至極少なく、例えばこの近藤とかくらいとしか普段から雑談をしない。

 だから「無口」「何かとっつき難い」「地味」「暗い」。
 そんな風に言われる事はあっても、誰かに付き纏われるほどの大きな感情を抱かれる事などあり得ない……と思う。
 多分。

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