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第一章:都市伝説
第9話 無い
しおりを挟む「で? チビッたっていう話?」
「チビッてねぇわ」
翌日の昼時、昨日の事を一通り近藤に話した俺は至極冷静なツッコミを彼へと返した。
実際、チビッてはいない。
まぁ正直怖くて、ちょっとの間あの場所を動けなかった訳だけど。
俺の即刻ツッコミに、近藤は「何だよノリ悪いなぁ」と一言歎いた。
そして。
「だったら一体何が言いたいわけ?」
という問いを投げかけてくる。
その言葉を受けて、俺は「あぁそうだった」と呟いた。
俺は、何も彼に自分の恐怖体験を語りたかった訳ではないのだ。
わざわざこの話を彼にしたのには、もちろんちゃんとした理由がある。
「お前さ、都市伝説の話をした時俺に掲示板サイトを見せただろ?」
「うん」
「それって、このページだよな?」
スイスイと携帯を操作して、俺は画面を近藤の目前に出した。
そこに表示されていたのは、黒背景に赤で『都市伝説掲示板』と書かれたサイト。
題名の血文字調演出がされているところまで、近藤から見せられたサイトそのままに見える。
「あぁ、うん。このサイトで合ってる合ってる」
俺の携帯画面をチラリと見ると、近藤は軽い口調でそう答えた。
そして「それが何?」と首を傾げる。
そんな彼に、俺は真顔でこう告げた。
「俺、あの時の都市伝説の書き込み、ちゃんと投稿日時もその前後の投稿内容も、ちゃんと全部覚えてるんだけど」
記憶力が良い、それは俺の数少ない特技である。
大抵俺は、一度見聞きした事は忘れない。
それは昔からずっと持っていたものであり、その記憶の正確さは今までの人生で何度も実証を重ねてきている。
つまり、自分の記憶力に自信がある。
しかし、だからこそ尚更気味が悪いのだ。
「例の投稿、どこにも載ってないんだけど」
そう、見当たらなかったのである。
記憶していた前後の投稿の間に、例の投稿が。
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