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第一章:都市伝説

第10話 仕事人間から見た違和感

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 真剣な顔でそう言えば、近藤はもう一度その画面を一瞥した。
 しかしすぐに諦めたように視線を外し、半ば投げやり気味に言葉を吐き出す。

「他の所に書き込みされてるのを見つけられてないだけじゃね? つまりお前の思い違い」

 まぁこれだけの書き込み数があれば見つけられないのも仕方がないだろうけど。
 そんな言葉を付け足しながら、彼は頭の後ろで指組みしながら椅子の背にもたれ掛かる。


 彼が体重を預けると、キィッという音が鳴った。
 
 それは彼がの興味度合いと同じく、実に軽い音である。

(まぁコイツ、会話の間口は変に広いくせに、本当に興味のある事以外には『浅く広く』だからなぁ)

 逆に言えば、だからこそ会話の間口を広くしていられるのかもしれない。

 そんな近藤の事を俺は「凄い」と思っている。
 少なくとも『狭く深く』な自分としては、彼の真似など出来るはずも無い。
 
 人は持たないもの、出来ない事を羨むのだ。
 まぁ無い物ねだりなど、したところで何の意味も無いと分かっているから、俺はただチラリとそう思うだけで彼への仄かな嫉妬をサラリと流した。


 
 そして本題に立ち返る。

(思い違い……?)

 そんな事は。

「絶対にあり得ない」

 即答で彼の言葉を否定して、俺は彼の手から自分のスマホを少し乱暴に引ったくる。

「じゃぁ『その書き込みを管理者が削除した』とか?」

 俺が少しむくれて見せれば、近藤はそれを察して今度は少し真面目な答えを返してくれた。


 
 彼の言葉は、俺も一度は考えた事だった。
 しかしとある状況を見て、その可能性を俺は即座に捨てたのである。

 というのも。

「見てみろよ。管理者が削除した書き込み投稿欄には全て「管理者により削除されました」っていう文言が表示されてる。でもあの書き込みがあった場所には綺麗さっぱり何も無い」
「それはそういう仕様なんじゃねぇの?」
「ならこういうサイト作る時、お前はそんな仕様にするのか?」

 彼の仮説にそう言い返すと、彼は「まぁそれは……」と言い淀んだ。
 おそらく彼も、その点には少なからず違和感を覚えていたのだろう。



 投稿サイト。
 こういうものを作るのはITエンジニアの仕事、つまり俺達の領分だ。

 そしてそのみちのプロと言っても過言ではない俺達からすると、一つのコンテンツの削除方法を二種類用意する必要性を感じない。

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