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動き出した第二王子
第4話 箍(たが)など最初から、存在なんてしないのだ(2)
しおりを挟むその言葉だけではなく正に第3王子が落ちる瞬間も、アリティーと第1王女は2人してしっかり見ていた。
否、見てしまった。
そんな2人を、第1王子は目ざとく見つけた。
そしてすっかり青ざめた残りの弟妹達に、彼は底冷えするような笑顔で耳打ちしてくる。
「余計な事を言ってみろ、お前達も同じ末路を辿る事になるからな」
それは、当時の彼らを萎縮させるには十分過ぎる恐怖だった。
その言葉を皮切りに他人をひどく恐れるようになった第1王女も、そしてこの件について一切口をつぐんだアリティーも。
周りからは「第3王子が亡くなる瞬間を直近で目撃してしまったのだから仕方がない」と思われ、誰一人として彼らの言動を怪しむ者は居なかった。
その後、第1王女はめったに部屋から出て来る事ができなくなった。
そしてアリティーは、自分の身を守るために、「凡人」になった。
アリティーが恐れたのは、第1王子の「相手を傷つける事が、実際に出来てしまう」ところだ。
普通は、例え殺意が芽生えたとしても本当に相手を手に掛けるまでには至らない。
彼は、何もは箍(タガ)が外れた訳ではない。
最初からそんなものなど存在しないのだ。
アリティーは、何よりもその事が怖かった。
彼の怒りが一体どこに用意されているのか、それが限りなく不明瞭だからだ。
それは、どこに埋まっているのか分からない地雷源の上を歩くことに等しい。
そしてもしもソレを踏み抜いてしまったら。
(同母弟に対してその仕打ちが出来てしまうのならば、異母弟の自分に対しては果たしてどうだろう)
そんな事は、火を見るよりも明らかだった。
だからアリティーは決めたのだ。
全てにおいて彼を立てれば、彼から反感を被ることはないだろう。
つまり、そうすれば殺されなくてすむ。
元々王位に興味は無いのだ。
そちら方面に意欲を燃やしている様子のお母様にはちょっと申し訳ないが、背に腹は代えられない。
諦めてもらう事にしよう。
こうしてアリティーは、覇者への道への意欲を完全に手放した。
そしてその考えは、十中八九第1王子よりも自分の方が優秀だと自覚した今でも変わらない。
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