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二人と一緒に生活すると決めたフィーリアは、お供を連れて街にくり出す。

第11話 貧民街の朝とご近所事情(1)

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 習慣とは怖いものである。
 屋敷に居た時はいつも、ザイスドート様たちの起床時間よりも二時間早く起きる使用人同然の朝を過ごしていた。
 それがもう、すっかり体に染みついてしまっている。

 だから、屋敷から追い出されここに住まわせてもらい始めて一週間。
 朝、二人よりも少し早く目が覚めて、起こさないようにこっそりと家の外に出て顔を洗う生活も、最早習慣になりつつあった。


 あの屋敷とは違い、ここでの暮らしは穏やかだ。
 山の向こうから陽光が差し込み始めるこの時間帯に、起き出してくる者はまだ居ない。
 お陰で、寝起きから外で誰かに鉢合わせる事もない。後ろに急かされる事も無ければ、順番待ちをする必要もなく井戸水を使う事ができるというのは、存外楽で助かっている。

 ひんやりとした汲み上げ水で顔を洗い、完全に目が覚める。
 顔を拭きながら振り返れば、私たちが住処にしている家が見えた。

 私たちの家は、この井戸を中心にぐるりと立てられた家屋の内の一つである。
 寝泊まりし始めてから毎日少しずつ掃除を進め、今やもう室内どころか玄関前や家の周りまで、既に手入れが済んでいる。
 来た当初よりも小奇麗になった家は、草が生えっぱなし、壊れっぱなし、汚れっぱなしの他の家々と比べると、見た目の違いは明らかだ。

 まぁ掃除をする私を、二人は変なものでも見るような目で見ていたけれど。

 そう思い出して、私は小さく笑ってしまった。



「掃除なんてして、何が楽しいんだよ」

 何日目の事だったか。一日二食の食事の合間時間に、玄関の扉を雑巾でキュッキュと吹き上げていた私にディーダがそう言った。

 どうやら天気がいい日の昼間はノインと二人、どこかへフラッと遊びに行くか、寒さに耐えるために必要な薪をどこからか集めてくるか、そうでなければ家の外にある大きな丸太の上に腰を掛けてボーッとするのが日課のようだ。

 その日は最後のパターンだった。
 きっと暇なのだろう。
 ノインは今、近くに生えていた草を引き抜き、足元にやってきた猫をじゃらして遊んでいる。対するディーダが動物にあまり好かれない事は、数日見ていてもう知っていた。

「どうせ住むのなら、綺麗な場所の方がいいではないですか」
「俺にはせっかく満たした腹の中の燃料を浪費してるようにしか見えねぇ」
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