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布屋さんに初来店のフィーリアは、安堵し、心配し、怒って帰る。

第20話 そんな事より身の安全です!!(1)

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 しかし謎はすぐに解ける。

「しかも、あんな泥溜めに突き落とすとか。お前の方が俺よりよっぽど鬼畜だわ」
「あそこまで全身くまなく泥だらけになれば、汚れてる場所とかもう気にならなくなるでしょ。温情だよ、温情。それにディーダだって、あれ見てちょっとスカッとしたでしょ?」

 扉が開き、カランカランとドアベルが鳴ったのと、二人の姿が見えたのが同時。そして私が思わず目を剥いたのも同時だった。

「それはまぁ――」
「どっ、どうしたんですかっ二人とも!」

 二人はビックリしたように私を見てくるけれど、私の方がビックリだ。
 二人は全身泥だらけだった。しかも、服が所々破れている。

 どうしてそんな事になったのかとか、どうして平然としているのかとか、そんな事はどうでも良かった。
 もしかしたら、ケガだってあるかもしれない。そう思い至ると同時にドクリと心臓が嫌な音を立てる。

 バイグルフさんは「おいコラ入るな、泥が上がる」と悠長な様子だったものの、それにさえ構っていられない。淑女としても振る舞いも忘れ、私は二人に大股で駆け寄る。

 彼の事だ、怪我をしていても申告しない可能性がある。言葉で聞くよりもこうして確認する方が確実だと、冷静さを残していた思考の一部が判断した。
 近かったディーダの両肩に手を置いて、それからペタペタと服の上から腕、お腹周りに足と順に触って怪我の有無を確認する。

「二人とも、痛いところは?!」
「は? って、ちょっ、止めろコノヤロ! そもそも別にこのくらい、いつもの事で――」
「ばい菌が入ったらどうするんですかっ!」
「いやいやお前、あんまり慌てるから俺らの泥が服に跳ねてるし――」
「そんな事より身の安全です!!」

 ひとしきり確認し、痛がる様子を見せないディーダにひとまず安心。
 しかし問題児は隣にもう一人居る。次はノインの怪我を、同じようにチェックし始める。

「ボクも別に怪我は無いし」

 ディーダのように声を荒げたりはしなかったが、ノインは呆れたような声を発した。しかし、彼にも騙されない。

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