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布屋さんに初来店のフィーリアは、安堵し、心配し、怒って帰る。

第20話 そんな事より身の安全です!!(2)

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 いつもは呆れるに足る説得力を持っている彼だけれど、その呆れ顔の頬に泥を盛大に飛ばしているやんちゃぶりなのだから、やはり彼もディーダと同様に信用には値しないのである。

「っていうか、地味にくすぐったいから触らないで欲しいんだけど」
「そんな事より身の安全です!」

 抑揚の少ない彼の抗議も、真っ向からピシャリと突っぱねる。
 何なら彼を睨んでみせれば、勢いに驚いたのか、頑なさに呆れたのか。大人しくなってくれたので良し。
 ひとしきり触診し、とりあえず二人に異常が無さそうで一瞬だけホッとする。
 が、もちろん安心はできない。

「もしかしたら小さな傷から泥が入って、化膿するかもしれません! 店主さん!」
「お、おぉ」
「その品物、全て買います! お会計は、とりあえずこれで。足りなければ後で必ず清算しに来ますから」

 レジにつかつかと歩きながら、懐を探り革袋を取り出した。手についていた泥で服も革袋も汚れてしまったが、今はそれを気にする時間が惜しい。

 革袋を少し乱暴にカウンターへと置けば、ジャラリと大きな音が立った。
 バイグルフさんが慌てと戸惑いの表情で「お、おい」と言ってくる。何か言いたげだとは思ったが、もちろん聞いている暇なんて無い。一刻も早く家に帰って、彼らの泥を落とさなければならない。

「ではすみません、急ぎますので!」

 ちょうど購入した品物たちは、彼の手によって紙袋に詰められていた。
 布たちが汚れないように手をスカートの裾で拭いてから抱え、再び店内を、今度は出口に向かって歩き出す。

 この子達に、もし何かあったらどうしよう。
 思わず目に涙がにじむ。
 突如わいたまるで自身を脅かされているかのような不安を振り払うように、あっという間に二人の間を通り抜けて、扉を開けてから振り返った。

「行きますよ二人とも、ほら早く!」
「あ、あぁ……」
「ハ、ハイ……」

 私の言葉に、促されるままに返事をした二人は、困惑しながらも速足の私の後ろを黙ってついて来てくれた。
 両手は今、二人の着替えを作るための布や道具で埋まっている。素直について来てくれたのは、とてもありがたかった。

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