1 / 15
プロローグ
しおりを挟む薄暗い地下へと続く階段を降りて行く。
徐々に肌寒さを感じ身動ぐと、手にした洋燈の灯が揺れた。
「フィオナ」
重厚のある扉を開けると、彼が先に部屋の中へと入って行った。
靴の音が妙に耳に付き不安を煽る。
彼は慣れた様子で、順番に部屋に置かれた洋燈に火を灯していった。すると、薄暗かった視界は鮮明になっていく。
銀色の髪を揺らし振り返った彼の翡翠色の瞳は細められる。
「これは、私からの君への愛の証だよ。受け取って欲しい」
多分これはーープロポーズという意味だろう。そして彼の手が指し示している箱が、所謂婚約指輪……にしては明らかにサイズ感がおかしい。
フィオナは思わずごくりと喉を鳴らす。
「あの、ローデヴェイク様これは……」
「あぁ君にも分かるかい? 素晴らしい出来栄えだろう? 実はこれ、君の為に作らせた特注品なんだ。その所為で少々時間を要してしまって、君を迎えにくるのが遅くなってしまったんだけどね。さぁ、フィオナ、寝心地を確かめてみて。きっと気に入ってくれる筈だよ」
(寝心地をって……)
期待に満ちた表情を浮かべている……彼は本気だ。いや寧ろ冗談であって欲しい。
フィオナは異質な箱を見下ろしながら、顔を引き攣らせる。だが彼の笑顔に押し負けてしまい、渋々箱に入った。
「うん、想像通りだ。良く似合っているよ」
(それってどういう意味ですか⁉︎ っていうか、これ何処からどう見ても棺何ですけど⁉︎)
満足そうに頷く彼を、フィオナは棺の中で寝そべりながら白い目で見上げる。
陶器の様に白く端麗な顔立ちと、翡翠石と見まごう程に美しい瞳、知的で優しく穏やかな性質ーー肩書きなども含め、田舎貴族のしがない伯爵家の娘に過ぎない自分と彼では、本来なら住む世界が違い過ぎる。そんな彼からのプロポーズなのだから、もっと喜ぶべきだと自分に言い聞かせてみるが……今自分の置かれている状況を客観的に見て、どう考えてもおかしいとしか思えない。
フィオナは困惑しながら取り敢えず身体を起き上がらせた。
似合うと褒めて貰っても全く嬉しくない。それに何時迄もこんな棺の中で寝ていたくないーー普通に考えて縁起でもない。
「フィオナ」
するとローデヴェイクは、徐にフィオナの前に跪いた。その事に驚き身体は過剰反応し、後ろに仰反る。
(今度は何ですか⁉︎)
「私と一緒に、お墓に入ろう」
「……」
「君のキスで目覚めた瞬間、これは運命だと感じたんだ。あぁ君と一緒のお墓に入りたいと、私の心が叫んだ。こんな気持ちは、生まれて初めてなんだ」
(でしょうね⁉︎ というか、あの時そんな事考えていたんですか⁉︎)
「フィオナ、君と一緒に死にたい、結婚しよう」
(私の中では、死にたいと結婚するは共存しないんですけど!)
「これは君の棺と対になっているんだ」
彼はそう言いながら、自らフィオナの隣に置かれた棺に入った。
そうーー棺は二基あった。そしてまさかのペアだった……。
彼が笑顔で手を差し出してきたので、条件反射でその手を取ってしまった……。
「これは違っ」
「あぁ、フィオナ。嬉しいよ、私の求婚を受け入れてくれるんだね」
ローデヴェイクは、フィオナの手を握り締めたまま棺に寝そべると幸せそうに微笑んだ。思わず端麗な顔に見惚れてしまう。
(やっぱり、素敵……ーーじゃなくて! 怖過ぎる……)
19
あなたにおすすめの小説
【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)
かのん
恋愛
気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。
わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・
これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。
あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ!
本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。
完結しておりますので、安心してお読みください。
お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。
下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。
またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。
あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。
ご都合主義の多分ハッピーエンド?
小説家になろう様でも投稿しています。
転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました
桜あずみ
恋愛
異世界に転移して二年。
言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。
しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。
──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。
その一行が、彼の目に留まった。
「この文字を書いたのは、あなたですか?」
美しく、完璧で、どこか現実離れした男。
日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。
最初はただの好奇心だと思っていた。
けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。
彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。
【ご報告】
2月15日付で、誤字脱字の修正および一部表現の見直しを行いました。
ただし、記載内容の趣旨に大きな変更はございません。
引き続きよろしくお願いいたします。
【完結】僻地の修道院に入りたいので、断罪の場にしれーっと混ざってみました。
櫻野くるみ
恋愛
王太子による独裁で、貴族が息を潜めながら生きているある日。
夜会で王太子が勝手な言いがかりだけで3人の令嬢達に断罪を始めた。
ひっそりと空気になっていたテレサだったが、ふと気付く。
あれ?これって修道院に入れるチャンスなんじゃ?
子爵令嬢のテレサは、神父をしている初恋の相手の元へ行ける絶好の機会だととっさに考え、しれーっと断罪の列に加わり叫んだ。
「わたくしが代表して修道院へ参ります!」
野次馬から急に現れたテレサに、その場の全員が思った。
この娘、誰!?
王太子による恐怖政治の中、地味に生きてきた子爵令嬢のテレサが、初恋の元伯爵令息に会いたい一心で断罪劇に飛び込むお話。
主人公は猫を被っているだけでお転婆です。
完結しました。
小説家になろう様にも投稿しています。
完結【強引な略奪婚】冷徹な次期帝は、婚姻間近の姫を夜ごと甘く溶かす
小木楓
恋愛
完結しました✨
タグ&あらすじ変更しました。
略奪された皇后を待っていたのは、冷徹な次期帝による「狂愛」という名の支配でした。
「泣け、香子。お前をこれほど乱せるのは、世界で私だけだ」
「お前はまだ誰のものでもないな? ならば、私のものだ」
大納言家の姫・香子には、心通わせる穏やかな婚約者がいた。
しかし、そのささやかな幸福は、冷徹と噂される次期帝・彰仁(あきひと)に見初められたことで一変する。
強引な勅命により略奪され、後宮という名の檻に閉じ込められた香子。
夜ごとの契りで身体を繋がれ、元婚約者への想いすら「不義」として塗り潰されていく。
恐怖に震える香子だったが、閉ざされた寝所で待っていたのは、想像を絶するほど重く、激しい寵愛で……?
「痛くはしない。……お前が私のことしか考えられなくなるまで、何度でも教え込もう」
逃げ場のない愛に心が絡め取られていく中、彰仁は香子を守るため、「ある残酷な嘘」を用いて彼女を試す。
それは、愛するがゆえに彼女を嫉妬と絶望で壊し、「帝なしでは息もできない」状態へ作り変えるための、狂気じみた遊戯だった。
「一生、私の腕の中で溺れていろ」
守るために壊し、愛するために縛る。
冷酷な仮面の下に隠された、
一途で異常な執着を知った時、香子の心もまた甘い猛毒に溶かされていく――。
★最後は極上のハッピーエンドです。
※AI画像を使用しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる