運命の人から命を狙われています⁉︎

月密

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十話

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「暇過ぎる」

 ミュラ家の屋敷で暮らすようになってから、兎に角やる事がない。
 最初の一ヶ月くらいは読書をしたりお茶をしたりと優雅な生活に浸っていたが、流石に三ヶ月も過ぎると手持ち無沙汰になる。
 本来ならば、王弟であり公爵のローデヴェイクの妻になるのだからそれなりの教育を受けなくてはならないのだが、変わり者の彼は「君は君のままでいい」と言って何もさせて貰えない。

「あのゲルトさん、ローデヴェイク様は……」
「本日も遅くなるので先にお休みになられますようにと言伝を申し付かっております」
「そう、なんですね……」

 まただ。最近彼とまともに顔を合わせていない。ローデヴェイクは、朝早く出掛けて行き夜遅く帰宅する。本当なら見送ったり出迎えたりとしたいのだが、彼がそれを良しとしない。必ず今日のようにゲルトや侍女に言伝を伝えている。
 
「お休みなさいませ」

 結局今日も彼と顔を合わせる事は出来ずに一日が終わってしまった。


 ーー翌日。
 
 フィオナは朝起きるとゲルトにあるお願いをした。始めはかなり渋られたが、何とか了承を貰う事が出来た。

「何かございましたらお付きの者に申して下さい。それと寄り道されず遅くなられませんように、お願い致します……」

 少し不安気なゲルトに見送られたフィオナは、用意された馬車に乗り込んだ。
 実はローデヴェイクからは、自分がいない時には外出はしないようにと言われている。だがフィオナはどうしても出掛けたい理由があったのでゲルトに頼み込んだのだった。


 街に到着したフィオナは、早速目当ての店に到着をした。

「流石、城下町は違うわ」

 馬車の窓から覗く洗礼された街並みに圧倒され興奮冷めやらぬ中、店内へと足を踏み入れた。ゲルトから教えて貰ったこの店も、内装から品揃え、正に圧巻といえる。

「凄い、全部揃っちゃった」

 田舎なら、名目毎に店を渡り歩かなくてはならなず、一つの店で事足りるなどあり得ない。便利過ぎると感動をする。
 あっという間に目的を果たし、侍従等が馬車に荷物を積み込む。後は屋敷へと帰るだけだ。フィオナは馬車に乗り込もうとするが、振り返り後ろ髪を引かれる。
 
「少しだけ……」

 フィオナは、馬車には乗らずに街中を歩いて行った。
 



◆◆◆

「一体どういう事だ」

 基本穏やかな性質のローデヴェイクだが、珍しく腹を立てている。
 今し方帰宅したばかりだが、ゲルトから信じがたい話を聞かされ思わず声を荒げた。彼はひたすら頭を下げている。
 今日はフィオナが寂しがっているからとゲルトから聞かされ、仕事を切り上げ何時もより早く帰宅したのに最悪の気分だ。

「どうして勝手な判断をしたんだ」
「申し訳ございません、全て私の責任です」
「……分かっているなら構わない。それ相応の責任は取って貰う」
「仰せのままに」
「それでフィオナは?」



 彼女の部屋の扉を何度か軽くノックするが応答はない。痺れを切らしたローデヴェイクは、許可もなく勝手に部屋へと入った。

「フィオナ」

 部屋の中は真っ暗で灯りはついていない。
 ローデヴェイクは手にしていた洋燈をテーブルに置き、ベッドに寝ている彼女の側に寄った。シーツを頭からすっぽりと被り、起きているかさえ分からない。

「フィオナ?」

 シーツの上から触れると、一瞬ピクリと動いたのが分かった。
 
「ゲルトから聞いたよ。昼間街へ出掛けたんだって?」
「……」
「それで怪我をしたと」

 黙り込んでいたフィオナは、静かにシーツから顔を覗かせた。

「脚を捻ったと聞いているけどーー頬が腫れているね。これはどうしたの?」
「……言いたくありません」

 珍しく反抗的なフィオナに、ローデヴェイクは眉を上げた。何故彼女が不貞腐れた顔をしているのか分からない。

「フィオナ」
「っ、嫌‼︎」

 嗜めるように、彼女の唇に自分の唇を重ねようとしたーーだが拒絶をされた。まさか彼女が嫌がるなど考えもしなく、一瞬にして頭が真っ白になった。それと同時に焦燥感に苛まれる。

「……そう、なら言いたくなるようにしてあげようか」
「えーー」

 シーツを掴み剥ぎ取る。すると彼女は寝着ではなくドレス姿のままだった。少し乱れており胸元がはだけている。

「こういうのも悪くないね」
 
 脱がせるのではなく破くーー実に野生的で淫らでいい。
 外出着から着替えずにそのまま彼女の部屋に来たので、懐には護身用のナイフがある。それを使い、フィオナを傷付けないように細心の注意を払いながらドレスを引き裂いていく。
 予想もしなかったのだろう。彼女は怯えた様子で瞳を揺らがせ微動だにしない。
 そんな彼女を見て自分の口角が上がっているのを感じるーー今自分は興奮している。初めて見る彼女の表情が愛おしくて仕方がない。
 
「さて、フィオナ。君には少しお仕置きが必要みたいだ」

 満面の笑みを浮かべながら、ローデヴェイクは今度こそフィオナの唇に自らのそれを重ねた。

 

 
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