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第四話*
しおりを挟む今から半年程前、十五回目の婚約破棄になった直後の事だ。
この時も変わらずブラッドが偶然クリスタの婚約者の浮気現場を目撃し教えてくれた。その後父に報告し裏付けを取り婚約破棄したーー
『はぁ……』
どうしてこんなにも上手くいかないのだろう。十五歳でブラッドととある理由から婚約解消となり、その半年後には新しい婚約者が出来た。だがその一ヶ月後には婚約者の浮気が発覚し二ヶ月もしないで婚約破棄になってしまった。
それから直ぐにまた婚約者が出来たが、今度は一ヶ月も持たなかった。原因はやはり相手の浮気だ。
だがめげる事なくその後も次々に婚約を繰り返し、気付けばクリスタは十八歳になっていた。同級生達は皆卒業後直ぐに結婚をしており、親しい友人の中で未だ結婚していないのはクリスタだけになった。
社交界では当然噂となり、相手の浮気による婚約破棄にも拘らずクリスタに問題があるのでは? とすら囁かれた。
そんな中で普通ならば次の相手を見つけるのは困難となるだろうが、そこはやはり侯爵家という事もあり通常より候補が少なくなる程度で済んでいる。それに父が躍起になって探しているので余計かも知れない。
『今回も残念だったね』
『ブラッド様』
中庭でお茶をしながら項垂れていると、不意にブラッドが現れた。手にはお土産を持っている。
『はい、今日はチョコレートだよ』
『ありがとうございます……』
ごく自然な動作で包みをテーブルに置くと、クリスタの前の椅子に座った。
どうやら今日の買収のお菓子はチョコレートらしい。嬉々としてチョコレートと頬張るテディの姿が目に浮かぶようだ。
チョコレートを一粒口に入れ、またため息が出た。
『何がいけないんでしょうか……』
婚約期間は短い時は一ヶ月もなく長くても二ヶ月くらいだ。その間顔を合わせるのも数回程度で、相手に嫌がられるような事をした記憶もない。ただここまでくると、社交界で噂されているように自分に何か原因があるのかも知れないとも思えてくる。
『そんなに落ち込まないで、クリスタ。君は悪くないだろう。向こうが不誠実で君の魅力に気付かないだけだ』
『でも……』
『大丈夫、君には他の令嬢にない魅力がある』
『本当、ですか?』
『うん、本当だよ。それは……』
『それは?』
『食いしん坊で抜けてて可愛い所かな』
『‼︎』
息を呑み期待して彼の次の言葉を待っていたが、冗談を言われムッとする。
『酷いです、ブラッド様……私は真剣に悩んでいるのに。茶化すのならもう結構です!』
『ごめんごめん。そんなに怒らないでよ。これでも君の事を心配しているんだよ』
『とてもそうは見えませんけど』
少し拗ねたように口を尖らせると、彼は優しく微笑んだ。
『僕はもう君の婚約者ではないけれど、幼馴染に違いはないだろう? まあ例えるなら妹を心配する兄心みたいな感じかな』
(妹……)
ブラッドは昔から三歳しか変わらないのに事あるごとに子供扱いしてくる。以前はまるで気にならなかったのに、最近は何故だがモヤモヤとしてしまう。
『クリスタ、僕は君にダメな所なんてないと思っているけど君の為に助言してあげる。そうだね~……強いて言えば色気が足らないのかも知れないな』
『色気、ですか?』
予想外の言葉に困惑をする。
色気と言われてもいまいちピンとこない。
『簡単に言うと、男性を惹きつける大人の女性の魅力とでも言えばいいかな』
『それはどうやったら身につくんですか?』
『う~ん、勉強が必要となるけど……』
難しい顔をするブラッドを見て、相当な努力が必要なのだと感じ喉を鳴らす。
『覚悟はあるかい』
『勿論です!』
『そう分かった。なら僕が直々に君に手解きをしてあげるよ』
ブラッドは立ち上がり、にっこりと微笑みながらクリスタへと手を差し伸べた。その手を少し躊躇いながらも取ると、彼はクリスタの手を引き馬車へと乗り込んだ。
『ここはラヴァン家の所有する屋敷の一つだよ。最近僕が譲り受けたんだ。だから思う存分レッスンが出来るよ』
クリスタは郊外の林道を抜けた先にある屋敷に連れて行かれた。
周囲は木に囲まれておりとても静かだ。屋敷内も静まり返っていて、少し不安になってくる。
『ブラッド様、あの』
『さあクリスタ、こちらへおいで』
恐らくベッドがあるので寝室だろう。
彼は先に部屋に入ると優しく手招きをする。躊躇いながらも近付くとソファへと座るように促された。
『え、あの、ブ、ブラッド様⁉︎』
『どうかした?』
『どうかしたではありません‼︎ 何をするんですか⁉︎』
ごく自然な動きでクリスタの肩に手を掛けるとドレスをずらそうとするので慌てふためく。
『何ってレッスンだよ?』
『で、でも!』
『大人の色香を身につけたいんだろう』
『はい……』
『じゃあ、僕の言う通りにして』
耳に熱い彼の息が掛かり思わず身体をピクリと震わせた。
ブラッドはそのまま耳朶を喰むと、まるで味わうように唇を伝わせていく。時折り熱い舌が触れ、本当に食べられてしまうのではないかと心配になってしまう。
『んっ……』
『可愛いね。クリスタは耳が弱いのかな?』
(弱いって、なに……?)
暫く堪能した彼はリップ音を鳴らし離れていった。
ようやく終わったかと胸を撫で下ろしたのも束の間、先程のようにまた肩に触れ今度こそドレスをずらされた。優しく逆手で背中を撫でながら、背中の紐を引っ張り緩める。すると最も簡単にクリスタの胸元が露わになった。
『きゃっ、やだ、見えちゃう』
慌てて胸元を隠そうとするが、彼に両腕を取られてしまう。
身動いだせいでドレスは腹部まで完全にずり落ち丸見えだ。
『ブラッド様っ、離して下さいっ』
羞恥心から一度は目を瞑るが、手を掴んだまま何の反応もない彼を不審に思い恐る恐る目を開けた。
するとブラッドは、クリスタを瞬きもせずに凝視していた。
『綺麗だ』
『え……』
『いや、何でもないよ。じゃあ始めようか』
『‼︎』
首筋にキスをするとそのままゆっくりと唇を伝わして露わになった膨らみに顔を埋める。
少しずつ中心部の蕾に近づいていくが唇が触れる事はなく離れていく。その度に彼の吐息が蕾を掠めた。
何度も同じ事を繰り返され、くすぐったいだけでなくもどかしさを感じてしまう。
恥ずかしい筈なのに早く触れて欲しい。
『んっ、はぁっ……ブラッド様っ、や』
『ごめんね、嫌だった? それならもうやめようか』
『え……』
その瞬間、ブラッドは呆気なくクリスタの腕を解放した。更にずり落ちていたドレスを直そうとする。
クリスタは無意識にその手を掴んでいた。
『クリスタ?』
(どうして、私……。でもやめて欲しくない)
だがそんな事は恥ずかしくて言えない。
『どうしたの?』
『ブラッド様、その……』
『うん、何? 思っている事を素直に言ってごらん』
『っ……やめないで、下さい』
囁くようにそう言うと、ブラッドは妖艶に笑んだ。その瞬間、心臓が大きく跳ねた。
こんなブラッドは初めて見た。彼なのに彼じゃないみたいだ。
知らない人みたいで、怖いと感じる一方で惹きつけられて目が離せなくなる。
『良い子だね』
クリスタの額にブラッドは自分の額を合わせながら頬を撫でる。彼の唇がクリスタの唇に触れる……そう思ったが、頬にキスが落とされた。
『あぁ、可哀想に……我慢させてしまったね』
『っ‼︎ あっン……』
再び膨らみに彼が触れる。
暫く中心部を避けながら指で触れられていたが、不意に蕾を摘まれた。その瞬間、無意識に身体はピクリと反応して自分の声とは思えないくらい甘い声が洩れた。
『ぁっ、あッ……んっ』
ブラッドは左の蕾に唇を寄せると口に含む。ちゅぷっちゅぷっと音を立て舐り吸ったり舌先で弄る。
その間隣の膨らみは手で揉みしだかれ、感じた事のない強い刺激に何故か下腹部の奥が熱くなる感覚を覚えた。
『ぁ……』
ブラッドが顔をあげると、蕾と彼の唇を透明な糸が繋ぎ切れた。それを拭うように舌舐めずりをする。その妖艶な光景に鼓動が高鳴る。
『クリスタ、今日のレッスンはこれで終わりだよ。お疲れ様、頑張ったね』
その日からブラッドとのレッスンが始まった。
但し、クリスタの婚約が決まるまでの期間限定だ。
『勉強だとしても、残念ながら不貞行為になってしまうから……。それとこれは誰にも言ってはいけないよ。二人だけの秘密だからね』
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