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第十三話
しおりを挟む今から十九年前、クリスタは生まれた。そしてその瞬間、ブラッドの婚約者となったーー
クリスタの父ブノワとブラッドの父レイモン、ブラッドの母ナタリーの三人は同級生だ。
当時三人はとても仲が良く、特にブノワとレイモンは親友と呼べる程の仲だった。
レイモンとナタリーは婚約関係にあり学院を卒業後直ぐに結婚をした。
またブノワには五歳年下の婚約者のクリスタの母サロメがいたが、彼女の学院卒業を待った為、それから五年に結婚をした。
互いに結婚した事で、それからは家族ぐるみでの交流が始まり、時間が出来れば互いの屋敷を行き来する間柄となった。
そんな中、レイモンとナタリーは中々子供に恵まれなかったが、結婚七年目にしてようやく授かる事が出来た。その時ブノワは二人に赤子が生まれた事を自分の事のように喜んだ。
待望の子供を授かったレイモンとナタリー、また親友夫妻の子供の誕生に歓喜したブノワは気持ちが昂りある約束をした。
『ブノワ、もし君の子が生まれその子が娘だった時にはうち息子と結婚させないか?』
『それは名案だ。そうなれば益々私達の絆は強固のものとなるな』
二人の妻達も快諾し、口約束に留まらず正式な書類まで交わした。
そうしてブラッドが生まれたその三年後、クリスタが誕生しそれと共に婚約が成立をした。
物心ついた時には隣にはブラッドがいて、何時も彼と一緒だった。
互いの屋敷を行き来して、一緒に本を読みそのまま寝てしまったり、お茶を溢して心配されて、手を繋ぎ庭を散歩したり、躓いてしまった時には優しく抱き締めてくれた。
優しくてたまに意地悪で大好きな人。
側にいるのが当たり前過ぎて、彼がいない生活なんて想像もしなかった。ずっと一緒にいるものだと信じて疑わなかったのに……。
それは突然やって来た。
クリスタが十五歳になったばかりのある日、ロワリエ家の屋敷の中庭でラヴァン夫妻とブラッドを招き、何時ものようにお茶をしていた。
暫く談笑をしているとサロメが席を外した。その事にクリスタも他の誰も気にも留めずにいた。更に少ししてレイモンが閑所へ行くと言って席を立った。
その時クリスタはリュークやブラッドとの会話に夢中で、その直後にブノワがいなくなった事に気付いてすらいなかった。
『クリスタ、舞踏会に着て行くドレスが決まったら早めに教えてね』
『え、事前にお見せしないとダメですか? 当日まで内緒にしておきたかったのに』
『姉上、パートナーと服装を合わせる事は基本なんですよ』
舞踏会はまだ何ヶ月も先の話だが、今年社交界デビューするクリスタは既に準備を始めていた。
年上のブラッドが三年も前に社交界デビューを果たしている事もあり、子供染みてはいるが彼に対抗心のようなものが芽生え気合いが入る。
当日は普段の何倍も綺麗に着飾って、何時も揶揄ってくるブラッドにギャフンと言わせてやろうと考えていた。
三人の話題がドレスからダンスの話に移ったそんな時だった。
屋敷内からサロメの悲鳴が聞こえてきた。
『お母様⁉︎』
動揺し反射的に席を立つとブラッドがクリスタの肩に触れ落ち着かせるように笑みを浮かべると、彼はリュークに声を掛ける。
『僕が様子を見てくるからクリスタ達はここにいて。母さん、クリスタ達をお願いします』
そう言って彼は一人で屋敷の中へと入って行った。
それから暫くして使用人がナタリーを呼びに来たのだが、ブラッドは戻って来ない。そんな状況でクリスタとリュークは他の使用人達により強制的に自室へと連れて行かれた。
更に何が起きたのか分からないままその後暫く自室から出る事を禁止され、ようやく出れたのは十日後の事だった。
『あの女は屋敷から追い出した。母は死んだものと思いなさい』
執務室に入るなりクリスタとリュークにブノワは開口一番にそう告げた。
手元の書類に目を通しながらあの日何が起きたのかを淡々と説明する父からは静かな怒りを感じ怖かった。
簡潔に言えばクリスタの母サロメとブラッドの父レイモンは不倫をしていた。
本人達はその日が初めてだと言い張っていたが、ブノワ達が問い詰めると数年前から不倫していたと自白したそうだ。
常習化したその行為にバレる事がないだろうとの油断からか、白昼堂々とそういった行為をするようになっていったという。
あんなに仲が良かった両家は一瞬にして最悪な間柄となり、当然クリスタとブラッドの婚約は解消された。
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