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第二話
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「婚約破棄、ですか」
マティスは黒髪をかきあげて答えた。
「ああ、俺は真実の愛を見つけたんだ」
「真実の、愛」
「そうだ。だからお前との婚約は破棄する」
「あの、まずお相手を教えてください」
私はもう半分答えが分かっていたが、敢えてマティスに尋ねた。
「もちろん彼女だ」
マティスはさっきから隣に立っていた女性を指した。マティスの隣に立っていた彼女は紹介されると、あきらかに慣れていない様子で貴族式の挨拶をした。
亜麻色の髪に、活発そうな瞳。顔はマティスが心を奪われるのが納得できるぐらいには整っている。
私は彼女の事を知っていた。
アンリエット・テラーズ。平民の娘だ。
最近学園で王子と親しくしていたことは知っていたが、まさかここまで仲良くなるなんて。
しょうがない。ちょっとお説教しないと。
「マティス様、まず婚約は家と家同士の契約です。私たち個人でどうこうできるものではありません」
「そんなもの、俺たちの愛の前では関係ない!」
「はぁ……、いえですから愛の有無は関係ありません。それに私はこの八年間、ずっと王妃教育を受けてきたんです。そんなぽっと出の庶民を王妃にできるわけが──」
「うるさい! お前の努力なんか知ったことか! お前が勝手にやったことだろう! 俺は彼女と結婚するんだ!」
私は一瞬王子が何を言ったのか分からなかった。
勝手にやったこと。
努力なんて無駄。
「そう、ですか……」
私の八年間が全て否定された気がした。
心のどこかで、マティスは本当はいつかしていることを理解してくれるんじゃないかと期待していた。そして、マティスも同じように努力してこの国を一緒により良いものにしていくのだと。
だけど今のマティスの言葉を聞いて、私はもうこの男性の隣に立ちたいとはもう思えなかった。
「分かりました。婚約を解消しましょう」
「ふん! 最初からそう言ってればよかったんだ!」
「では、お父様に報告して参ります」
私はマティスの酷い言い草にも反応することなく自室を後にした。
マティスは黒髪をかきあげて答えた。
「ああ、俺は真実の愛を見つけたんだ」
「真実の、愛」
「そうだ。だからお前との婚約は破棄する」
「あの、まずお相手を教えてください」
私はもう半分答えが分かっていたが、敢えてマティスに尋ねた。
「もちろん彼女だ」
マティスはさっきから隣に立っていた女性を指した。マティスの隣に立っていた彼女は紹介されると、あきらかに慣れていない様子で貴族式の挨拶をした。
亜麻色の髪に、活発そうな瞳。顔はマティスが心を奪われるのが納得できるぐらいには整っている。
私は彼女の事を知っていた。
アンリエット・テラーズ。平民の娘だ。
最近学園で王子と親しくしていたことは知っていたが、まさかここまで仲良くなるなんて。
しょうがない。ちょっとお説教しないと。
「マティス様、まず婚約は家と家同士の契約です。私たち個人でどうこうできるものではありません」
「そんなもの、俺たちの愛の前では関係ない!」
「はぁ……、いえですから愛の有無は関係ありません。それに私はこの八年間、ずっと王妃教育を受けてきたんです。そんなぽっと出の庶民を王妃にできるわけが──」
「うるさい! お前の努力なんか知ったことか! お前が勝手にやったことだろう! 俺は彼女と結婚するんだ!」
私は一瞬王子が何を言ったのか分からなかった。
勝手にやったこと。
努力なんて無駄。
「そう、ですか……」
私の八年間が全て否定された気がした。
心のどこかで、マティスは本当はいつかしていることを理解してくれるんじゃないかと期待していた。そして、マティスも同じように努力してこの国を一緒により良いものにしていくのだと。
だけど今のマティスの言葉を聞いて、私はもうこの男性の隣に立ちたいとはもう思えなかった。
「分かりました。婚約を解消しましょう」
「ふん! 最初からそう言ってればよかったんだ!」
「では、お父様に報告して参ります」
私はマティスの酷い言い草にも反応することなく自室を後にした。
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