私をもう愛していないなら。

水垣するめ

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7話

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「……」
「こんちには! 奇遇ねメアリーさん。あなたはパーティーに出ないだろう、って聞いてたけど」

 アイクは私の顔を見て気まずそうに黙り、逆にジェーンは勝ち誇った笑みを私に対して向け、皮肉を飛ばしてきた。
 何故私がパーティーに出ようとしなかったのかを理解しているのに聞いてくるのは、そういうことだ。

 アイクを奪い取ってジェーンは私に優越感を抱いているらしい。

 ハルトが私の前へと歩み出た。

「既婚者にはしたなく言い寄ったくせに随分と勝ち誇るんだな。君に恥という感情はないのかな?」
「なっ……!」

 ハルトの顔にジェーンは眦を吊り上げる。

「では失礼」

 ジェーンはハルトを怒鳴りつけようとしたが、その前に私の腕を掴み、くるりと振り返った。

「大丈夫か?」

 歩きながらハルトは気を遣って大丈夫かどうか聞いてくる。

「大丈夫。ハルトが庇ってくれたから」
「すまん。離婚して数日でまさかパーティーに来てるとは思わなかった。もっと気を配るべきだった」
「いいえ、ハルトは全く悪くないわ。それに言われたことも全く気にしてないから大丈夫」

 ジェーンとアイクともう会うことはなさそうな会場の端まで来ると、私たちは一息ついた。

 水を受け取り飲んでいると、隣のハルトが眉をひそめて誰を見ていることに気づいた。

 私もその方向を見て顔をしかめた。

 アイクがこちらを向いて立っていたのだ。
 隣にはジェーンを連れておらず、一人。
 アイクは私を見つけると歩いてくる。

「なんのつもりだ」

 ハルトは私の前に出て守るようにアイクを睨みつける。
 声音も低く、攻撃性を帯びていた。

「少しメアリーと話がしたいんだ」
「君に止める権利はないだろう? これは元夫婦同士の話なんだ」

 そしてアイクは近づいてくると、強引に私へ話を続ける。

「メアリー、僕ともう一度やり直してくれないか?」
「……はぁ?」
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