私をもう愛していないなら。


 その衝撃的な場面を見たのは、何気ない日の夕方だった。
 空は赤く染まって、街の建物を照らしていた。

 私は実家の伯爵家からの呼び出しを受けて、その帰路についている時だった。

 街中を、私の夫であるアイクが歩いていた。
 見知った女性と一緒に。
 私の友人である、男爵家ジェーン・バーカーと。

「え?」

 思わず私は声をあげた。
 なぜ二人が一緒に歩いているのだろう。
 二人に接点は無いはずだ。

 会ったのだって、私がジェーンをお茶会で家に呼んだ時に、一度顔を合わせただけだ。

 それが、何故?

 ジェーンと歩くアイクは、どこかいつもよりも楽しげな表情を浮かべてながら、ジェーンと言葉を交わしていた。

 結婚してから一年経って、次第に見なくなった顔だ。

 私の胸の内に不安が湧いてくる。

(駄目よ。簡単に夫を疑うなんて。きっと二人はいつの間にか友人になっただけ──)

 その瞬間。
 二人は手を繋いで。
 キスをした。

「──」

 言葉にならない声が漏れた。

 胸の中の不安は確かな形となって、目の前に現れた。

 ──アイクは浮気していた。
24h.ポイント 1,185pt
688
小説 1,106 位 / 191,523件 恋愛 636 位 / 57,711件

あなたにおすすめの小説

【完結】貴方の望み通りに・・・

kana
恋愛
どんなに貴方を望んでも どんなに貴方を見つめても どんなに貴方を思っても だから、 もう貴方を望まない もう貴方を見つめない もう貴方のことは忘れる さようなら

ある男の後悔

初瀬 叶
恋愛
私には愛する婚約者が居た。リリーローズ。美しく、気高く、そして優しい。その名の通り、芳しい花のような。愛しい婚約者。 彼女が亡くなってもうすぐ1年。 あの日から、私はずっと暗闇の中だ。 彼女が居なくなった世界を、ただ、ただ生きている。 もう私が笑顔になる日は来ない。 ※ 暗い話を初めて書いてみたかったのですが…なかなか上手くいかないものです ※相変わらずの設定ゆるふわです ※後味はあまり良くないかもしれないです ※温かい目でご覧ください

(完)私を裏切る夫は親友と心中する

青空一夏
恋愛
前編・中編・後編の3話 私を裏切って長年浮気をし子供まで作っていた夫。懲らしめようとした私は・・・・・・ 異世界中世ヨーロッパ風。R15大人向き。内容はにやりとくるざまぁで復讐もの。ゆるふわ設定ご都合主義。 ※携帯電話・テレビのある異世界中世ヨーロッパ風。当然、携帯にカメラも録音機能もありです。

結婚式で王子を溺愛する幼馴染が泣き叫んで婚約破棄「妊娠した。慰謝料を払え!」花嫁は王子の返答に衝撃を受けた。

window
恋愛
公爵令嬢と王太子殿下の結婚式に幼馴染が泣き叫んでかけ寄って来た。 式の大事な場面で何が起こったのか? 二人を祝福していた参列者たちは突然の出来事に会場は大きくどよめいた。 王子は公爵令嬢と幼馴染と二股交際をしていた。 「あなたの子供を妊娠してる。私を捨てて自分だけ幸せになるなんて許せない。慰謝料を払え!」 幼馴染は王子に詰め寄って主張すると王子は信じられない事を言って花嫁と参列者全員を驚かせた。

【完結】私の婚約者は、親友の婚約者に恋してる。

山葵
恋愛
私の婚約者のグリード様には好きな人がいる。 その方は、グリード様の親友、ギルス様の婚約者のナリーシャ様。 2人を見詰め辛そうな顔をするグリード様を私は見ていた。

わたしの旦那様は幼なじみと結婚したいそうです。

和泉 凪紗
恋愛
 伯爵夫人のリディアは伯爵家に嫁いできて一年半、子供に恵まれず悩んでいた。ある日、リディアは夫のエリオットに子作りの中断を告げられる。離婚を切り出されたのかとショックを受けるリディアだったが、エリオットは三ヶ月中断するだけで離婚するつもりではないと言う。エリオットの仕事の都合上と悩んでいるリディアの体を休め、英気を養うためらしい。  三ヶ月後、リディアはエリオットとエリオットの幼なじみ夫婦であるヴィレム、エレインと別荘に訪れる。  久しぶりに夫とゆっくり過ごせると楽しみにしていたリディアはエリオットとエリオットの幼なじみ、エレインとの関係を知ってしまう。

【完結】騙された侯爵令嬢は、政略結婚でも愛し愛されたかったのです

山葵
恋愛
政略結婚で結ばれた私達だったが、いつか愛し合う事が出来ると信じていた。 それなのに、彼には、ずっと好きな人が居たのだ。 私にはプレゼントさえ下さらなかったのに、その方には自分の瞳の宝石を贈っていたなんて…。

【完結】離縁されたので実家には戻らずに自由にさせて貰います!

山葵
恋愛
「キリア、俺と離縁してくれ。ライラの御腹には俺の子が居る。産まれてくる子を庶子としたくない。お前に子供が授からなかったのも悪いのだ。慰謝料は払うから、離婚届にサインをして出て行ってくれ!」 夫のカイロは、自分の横にライラさんを座らせ、向かいに座る私に離婚届を差し出した。